フィリップ・パカレの叔父に当たる、筋金入りのビオディナミスト、マルセル・ラピエールです。彼がモルゴンで造る「キュヴェ・マルセル・ラピエール」のような、風格や大きさを求めるものでは無く、チャーミングで伸びやか、素直な味わいが特徴です。
「おお、凄い!」
・・・みたいな大仰なワインでは有りませんが、ワイン本来の「楽しさ」「美味しさ」を感じていただけるもの・・・と思います。フィリップ・パカレのヌーヴォーとの比較も、きっと楽しいと思います。Noisy wine は、テラヴェールさんが輸入するトラディショナル・キュヴェと、野村ユニソンさん輸入の早くから美味しいタイプの両方を扱わせていただきます。なお数は余り無いのでお早めにお手当てくださいね。
■エージェント情報
◆2020年の生育状況(マリー・ラピエール)

「過去最高のヌーヴォー」
春先に季節外れの湿気が各地を襲い、ベト病に苦しめられる地域が多く見られたフランスですが、ヌーヴォーを届けてくれるボジョレー地区の多くは、その被害を最小限にとどめることができ、その後の暑い夏に恵まれて、しっかりと熟したブドウがたっぷり得られそうな優良な年になりそうです!
モリース シネ氏のデザインのエチケットでお馴染みのラピエール&シャヌデのボジョレー ヌーヴォーですが、7月から8月と続く夏日の影響で、病害も見られず、完璧な状態で生育が進んでいます。
ラピエール&シャヌデのボジョレー ヌーヴォーは、マリー ラピエールがオーナーを務めるシャトー カンボンの畑のブドウから造られます。シャトー カンボンの畑は、モルゴン村の南東、ベルヴィルの街にほど近い平坦なエリアに位置しています。モルゴンよりも肥沃な土壌を備えた畑からは、いきいきとした果実味と凝縮感のあるガメイが得られます。
今年は、冬から春先にかけて雨に恵まれた影響で、地下に水分がしっかりとたくわえられており、その後の高温で乾燥した気候のなかでもブドウがすくすくと育っています。質的にも上質なものが期待できますが、収穫量的にも久しぶりの豊作となりそうで、造り手たちも思わずにっこり。
収穫の時期も例年よりやや早めのタイミングとなりそうで、太陽のエネルギーがぎっしり詰まった密度のあるボジョレー ヌーヴォーをお届けできそうです。
「ここ数年難しいヴィンテージが続きました。今年は稀に見るポジティブな状態でブドウが成長し、最後の成熟期に入っています。今年は皆さんに喜んでもらえるヌーヴォーが造れると確信しております!あまり難しいことを考えずに、飲んだ瞬間に美味しい!と言って頂けるヌーヴォーが造れそうです。ぜひご期待ください。」
マリー ラピエール
■ ■モルゴンにある代々続くラピエール家の畑とシャトー・カンボンの違いがよく解らないとのご指摘を多く頂いています。ご参照ください。

■シャトー・カンボンと英仏戦争
元々ラピエール家はモルゴンで代々続く生産者。蔵の近くの石碑にはマルセルの祖父の名前が刻まれているほど。マルセルは代々続く畑で仕事をしていましたが、縁があってシャトー・カンボンを購入する事になりました。マルセルが購入する前は様々なオーナーが所有していましたがそのポテンシャルの高さを知る度に「もっと良いぶどうそしてワインが出来る」との思いが強くなってきたそう。
シャトー・カンボンの歴史は古く、歴史は英仏戦争時まで遡ります。当時、フランスを代表してイギリスとの和平交渉を担当する外交官であったジュール・カンボン(1845-1935)は「外交とは交渉であり交渉とは少なくとも相当分、取引である」という名言を残し、フランスの至る地方に「Rue de Cambon(カンボン通)」があるくらいフランスを支えた人物であった。このカンボン氏が最初のオーナー。その後数人のオーナーの手に渡り、1995年マルセルの元に。シャトー・カンボンにはシャトーのトレード・マークである方位磁針のマークがある。これは外交官のカンボン氏が東西南北世界中どこにでも情報受発信をするという意味で残したものであって外交官ならではの意味合いを持つ。

■「最初の一回以外ずっとタダ働きよ」/マリー・ラピエ-ル
シャトー・カンボンの社長はマルセルの奥さんマリー・ラピエール。マリーはフランス北東部Metz出身。その昔、アルバイトでぶどうの収穫にマルセルの畑にやって来たのだそう。これが知合うきっかけ。
「初めての収穫の時だけバイト代を貰ったのに、マルセルと一緒のなってからはタダ働きよ!」
と笑うマリー。
栽培、醸造はマルセルが行う。シャトー・カンボンは全部で14ha。生産量の60%がヌーヴォーになる。マルセル・ラピエールの名前で生産されるヌーヴォーは全てこのシャトー・カンボンの畑から生産される。収穫時期は朝7時30分から12時30まで、昼食後13時:30から17:30まで収穫が続く。何週間も朝、昼、晩一緒に過ごしていると毎年、マルセルとマリーの様にカップルが何組も出来上がるそう。
■プロ中のプロ軍団『ポベット』
毎年4チームの収穫グループで構成され、その中でも1チーム『ポベット』と呼ばれるプロ集団が存在する。普通の収穫人が1人300kg/日収穫するところを800kg/日のスピードで、しかも確実に良い葡萄だけを選果しながら行ってしまう。ポベット以外は学生や若者が中心。

収穫したぶどうは小分けのコンテナに収め、冷蔵車で醸造所に運び込まれる。温度が高い年は一晩2~3℃の冷蔵庫でぶどうを12~15℃まで冷やす事によって雑菌の活動を抑える。発酵はシャトー・カンボン購入当初は以前のオーナーが所有していたコンクリートタンクを使用していたが、タンク内の雑菌によりワインが悪い影響を受けた。それ以来ポリカーボタンクで発酵を行っている。

■マルセル・ラピエール
ワインは他のどんな酒とも違い、その土地に育った葡萄そのものが原材料になっている。精製された水を加えることも、別産地の小麦を加えることもない。恐らく古来のワインは葡萄100%であってタンニンや酸、発酵時に糖分を足したり、培養酵母が使われたりすることなど無かったはずである。
『その土地で、その 土地の自然環境を壊すことなく育てた葡萄を、その土地に息づく自然酵母によって発酵させ、余計なものを加えたり、余計と判断したものを引いたりすることな くボトルに詰め込む』
そういう酒こそがワインなのだろう。近年の自然派ワインの盛り上がりはマルセル・ラピエールなくしてはありえなかった。アンリ・フレ デリック・ロック、フレデリック・コサール、マルク・アンジェリ、フィリップ・パカレ・・・。ボジョレー地区だけでなく多くの造り手達がマルセルの考え方 に賛同したし、その人柄に魅せられたと言う。マルセルはジュール・ショヴェ氏の最も近くにいた人物であり、最も多くを吸収したと言われる。
『ワインに対す るあらゆる化学を熟知することで、あらゆる化学から守る』
と言ったジュール・ショヴェ氏の教えに従い1981年より畑では科学的薬剤は一切排除され、必要
に応じて極僅かの植物由来の堆肥を撒くだけ。火山由来の花崗岩が堆積してできているカンボンの土壌は黒く拳大の岩が散らばっている。
下草はある程度まで伸ばされ、刈り取られると土に帰される。樹齢も上がり、より一層葡萄果実はピュアさを増している。区画ごとに収穫された葡萄は木製の発酵槽に投入される。低い温度を確保されたセラー内ではコールド・マセレーションに近い状態に置かれ果実本来の繊細なアロマが抽出される。発酵は自然酵母のみでゆっくりと始ま
る。ここでは発酵による炭酸ガスを利用したセミ・マセラシオン・カルボニックが採用され、嫌気的環境下で人為的介入なく健全にワインへと変化していく。ラ
ピエールのワインは醸造過程での最適な判断によってしっかりとした"濃さ"と"フレッシュでスムースな飲み口"を両立させていると言える。これは長年醸造を繰り返してきた経験によるものなのだろう。明らかに近年のマルセル・ラピエールは更に純度が増してきている。
ノンフィルターでできる限り少ないSO2添 加でボトリングされる。現在ではマルセルと息子マチューの2人で畑仕事から醸造までをこなしている。『自然派ワインの父』と称されるマルセル・ラピエール。飲めば皆が感じるであろうが彼等のワインには無理がない。作為がない。そして誰にとっても難しくない。単純な美味しさ、華やかさが鼻腔から口中からストレートに感じられる。果実の詰まったような"濃厚さ"を感じさせながらも、どこか"水"のように溶け込んでいってしまう"楽さ"がある。そして飲み終え た後にはこのワインでしか感じ得ない満足感で満たされることとなる。カンボンに育つ葡萄、ストレスのない醸造、そしてこの地に育ったヴィニュロン、全てが 揃ってテロワールなのかもしれない。
◇自然派ヌーヴォーの特色◇
★自然(環境)酵母だけで発酵させるので、様々な酵母が複雑な香りを醸し出します。しかし香りを調整するための酵母などを添加していないので、決して派手な香りではありません。
★自然(環境)酵母を発酵が終わるまで活かすため、発酵中は亜硫酸の添加をしません。
★亜硫酸を使わないので、空気に出来るだけ触れさせずに瓶詰めします。この為、発酵時に出た炭酸ガスがわずかにビン内に残っていますので、舌にピリピリ感じたり、液漏れしやすい状況になることがあります。
★フィルターを使っておりませんので、酒石や酵母などのオリが見られることがあります。(色も少し濁っている場合があります)
★飲めば飲むほど身体の中に旨味が広がり、スイスイ飲めてしまう自然な味わいです。