ドメーヌ・デ・ランブレイ
デ・ランブレイ
フランス Domaine des Lambrays ブルゴーニュ
● はっきり言って、日本でインターネットが実質始まった1996年~1998年頃、クロ・デ・ランブレイなどどこを探しても見当たらない状況でした。ラシーヌの塚原さん、合田さんが訳されたPKさんのバーガンディで、
「昔は良かったが今は失望・・・」
みたいなコメントが、やはり大きく響いていたのかもしれません。
それでも noisy は、このランブレイが好きでした。どこか無骨で、ちょっと足りない感は常に有るんだけれど、ヴォーヌ=ロマネの偉大なグラン・クリュに通じる芳香と、モレ・サン=ドニ村の紋章にもある「狼(だと思うんだけど・・)」そのもののイメージが、心にしっくり来ていたからです。
1992年ものはどうだったか忘れましたが、1994年もののクロ・デ・ランブレイは結構販売していたと記憶しています。円形を乱すエッジはあるものの、それなりに大きく、なによりもブケ、アロマの偉大さは、まさにグラン・クリュの名に恥じず、偉大だったと言われる数十年前を感じさせてくれるのに不足は有りませんでした。
昨今はいつの間にか評価も上がり、ル・クラスメンではトップの三ツ星を取った年も有ることなどから、急激に価格も上昇しています。
今回はまずまず・・リーズナブルなプライスで購入出来ましたのでご案内いたします。モレ=サン=ドニのグラン・クリュ、クロ・デ・ランブレイです。
●2011 Clos des Lambrays Grand Cru
クロ・デ・ランブレイ・グラン・クリュ
【クロ・デ・ランブレイも完全復活??ワイルドなニュアンスを大きな構成で柔らかく見せてくれるグラン・クリュです。】
冒頭にも書きましたが、1990年代はまだ、このようなクロ・デ・ランブレイとかクロ・ド・タール、まだ1級だったラ・グランド・リュとかが非常にリーズナブルで、
「あ~でもない、ここがだめ、いや意外と好きだな・・」
とかね・・。自由闊達に自分の感想を言いつつ、少ない情報の中で、ワイン自体から伝わる情報を自分の感覚で分析などしつつ・・いや、楽しい時代だったなぁ・・と思い返しています。
DRCだって1万円台から買えたし、クロ・デ・ランブレイなどは5千円ほど、クロ・ド・タールは1万円したかな?・・ラ・グランド・リュは数千円じゃ無きゃ買わなかったけど、そんなワインを簡単に開けられたんですね。
インポーターさんによってはコンディションが悪いものが有る・・なんてのも、そんなことをやっていたからこそ自然と判ったし、
「リーズナブルなのに非常に旨いのはどうしてだ?」
なんてね・・今なら逆で、
「高いのに・・何て・・xxなんだ?」
ってことになっちゃうんでしょう。
クロ・デ・ランブレイは、ほぼモノポール(単独所有畑)ですが、それでもほんの少しドメーヌで所有していないためにそれを名乗っていないのはご存知でしょう。またほんのちょっとだけですが、グラン・クリュとして認定されていない村名区画が有りました。まぁ・・今もそうなのかは判りません。
現在はかなりの評価をいただいていて、あの「ル・クラスメン」では三ツ星を取った年も有りますし、この2011年はスペクテイター誌が93 Points、ジェームス・サックリン氏が94ポイント、ラ・ルヴェ・デュ・ヴァン・ド・フランス誌が18/20Points と、大昔なら平気で80点台だった頃とは大きく変化しています。
それでもついこの間までは1万5千円ほどで販売出来たんですが、
「・・安くならないかなぁ・・」
などと欲をかいていたら、どんどん上がってしまいまして・・まぁ、今となっては2万円を切るのはかなり困難な状況です。
栽培は、馬による耕作を行っていましたので、自然派に通じるものが有りますが、ここは敢えて・・自然派には分類しませんでした。噂によると急勾配の畑での事故が絶えず、馬による耕作を止めた・・そうです。ロケーションは非常に素晴らしいんですよ。モレは北から、
「クロ・ド・ラ・ロシュ」
「クロ・サン=ドニ」
「クロ・デ・ランブレイ」
「クロ・ド・タール」
「ボンヌ=マール」
と続くんですから・・。クロ・デ・ランブレイだけはヴォーヌ=ロマネっぽさが感じられるなぁ・・と言うのが個人的感想です。
味筋は、ランブレイならではのワイルド系スパイス・・動物的なニュアンスと、黒や赤の果実が混じり、多分に有る石灰系ミネラリティを抑え込んでるようなスタイルです。・・いや、でした。最近は高くて、また、仕入れられるルートが見当たらず、少し扱いが遠のいていました。
まぁ、言ってしまえば、「クロ・ド・ラ・ロシュ」の要素を基礎に持ち、「クロ・サン=ドニ」の赤味、「クロ・ド・タール」の黒味の構成要素を前面に併せ持っている・・みたいな感じでしょうか。
今回は正規ものでは無くブローカーものですが、コンディションも良いと見ています。この先はどうやら他のグラン・クリュのようになってしまうと思われますので、4~5万を目指した値動きになるんじゃないかと思います。
因みに、グレートなヴィンテージになった2014年ものは、ワイン・アンスージャストが96ポイント、ティム・アトキン氏が94ポイント、ラ・ルヴェ・デュ・ヴァン・ド・フランス誌が19/20Points と、
「・・本当に~?」
と思ってしまうほどの非常に高い評価になっています。2015年ものはほぼ3万はするようです。今回は2011年ものですが、やはり高評価により連られて上昇して行くでしょう。
ある意味、ヴォーヌ=ロマネのワインをさらに尖鋭に、ワイルドにしたようなワインです。この機会に是非、ご検討くださいませ。
以下は以前書いたクロ・デ・ランブレイのレヴューです。ヴィンテージは異なります。
━━━━━
【バッド・ボーイのバッド・ヴィンテージ2アイテム。ゆっくり休めてあげてから、そっとお飲みください。】
92年、94年と言えば、一般に言うバッド・ヴィンテージなのでしょう。92年のブル・ピノは確かに色合い薄めですし、早めに熟すヴィンテージです。94年も収穫期の雨が、グレート・イヤーの望みを打ち砕きました。それでもどちらのヴィンテージもとても美味しいワインは有るもので、アンリ・ジャイエの92クロ・パラとか、アルマン・ルソーの94シャンベルタンなどは、他のグレート・イヤーと言われるヴィンテージのものよりも美味しいんじゃないの?という感想を持ったものです。
この、モレ・サン=ドニにあるグラン・クリュ、クロ・デ・ランブレイは、最初からグラン・クリュだった訳では有りません。クロ・ド・ラ・ロシュ、クロ・サン=ドニ、クロ・デ・ランブレイ、クロ・ド・タール、ボンヌ=マールとほぼ同高度で連なるモレの偉大なグラン・クリュ群ではありますが、昔から偉大なテロワールの畑と呼ばれたのはクロ・デ・ランブレイとクロ・ド・タールで有ったのに、ランブレイだけ1級とされたんですね。その当たりの経緯は、今となっては伝わってはいないようですが、フィロキセラ渦頃のこの畑のワインが、今ひとつ評判が芳しくなかったのかもしれません。1級や村名畑よりも特級畑の占める面積が広い特異な村であるモレ・サン=ドニで有り、細分化された特級畑が多いニュイにあって、ほぼ全てを持っているドメーヌ・デ・ランブレイの歴史は、ここでは割愛させていただきますが、調べてみると結構面白いものですよ。
それに、近年こそ見直され始めてはいますが、クロ・ド・タールとともに、その特級格に相応しくない、と散々言われてきました。まあ、そんなクロ・デ・ランブレイが、シャンベルタンやミュジニーと言った珠玉の特級畑のワインと同等な価格で流通しているとすれば誰も相手にもしてくれませんが、ワインの世界は面白いもので、プレミアの付くようなものは別としても、きっちり品質とプライスが均衡してくるものです。このクロ・デ・ランブレイの、やや弱いヴィンテージものも同様のことが言え、価格なり以上のポテンシャルを感じることが出来ます。そして、このワインが奏でる表現は、やはりグラン・クリュでしか表すことが不可能な、高尚・精緻なものであり、
「弱い年でもさすがグラン・クリュ!」
と思わせる力を持っています。
もっともその力に満足するかしないかは、やはり人の感性により違ったものになります。それでも noisy的には、
1.全体的な味わいバランス
2.官能的なブケ
3.熟成の魅力
を充分に味わうことが出来ると思っています。
●1992 クロ・デ・ランブレイ
ややオレンジ掛かった薄めのルビー。滑らかになったスパイス、金属、腐葉土、キノコ、獣、ドライフルーツ。良く熟していて柔和。ボディはしっかりしているが、ややスレンダー。甘くしっとりとした優しい余韻。
ピークは過ぎているのかもしれませんが、それを感じさせない全体のバランスがあります。「これでグラン・クリュか・・」と言う感覚と、「さすがグラン・クリュ!まだまだ持ちそう」という気持ちが交差します。グラン・クリュだからこそ弱い年でも、15年もの月日の流れさえさらさらとたやすく流すものではない、と教えてくれるあたりは、やっぱりランブレイの底力なのでしょう。ピノの熟成、良い畑の力を教えてくれます。トロトロに熟成していますから引っかかりは少なく、とても優しい味わいです。
●1994 クロ・デ・ランブレイ
まだ紫が頑張っている。92年より明らかにしっかりした色合いでより強さを持つ。ブケも強く、トリュフ、獣香、黒系スパイス、腐葉土、鉄、紅茶、ドライフルーツ。エキスの甘みと中くらいのボディ。チリチリと味雷を刺激しながらの余韻。
滑らかさは劣るものの92年よりも力強く、生き生きとしています。ヴォーヌ=ロマネの良い畑を思わせるようなレザーの香りや、ジュヴレを思わせる力強い鉄っぽさときれいな粘土がポテンシャルを唄います。やや細身のボディと、収束時にやや暴れる感じは昔から相も変わらず・・・でも嫌な感じでは無く、モレっぽくランブレイの特徴とも言えます。
どちらのワインも、noisy にとってはとても美味しく感じられます。グラン・クリュとしてはどうか?と聞かれれば、その要素は充分に感じられると答えるでしょうし、グラン・クリュに相応しいか?との問いには、人により是非は違うかもしれない、と答えるでしょう。それでも、ニュイのグラン・クリュで、10年以上も熟成を続け、まだまだしっかりしているとすれば、納得の味わいではないでしょうか。
79年にコッソン家から買収したサイエ家が80年頃から少しずつ改植していますので、これからのランブレイは樹齢が上がるにつれてポテンシャルも上がるでしょう。今世紀前半にグレートワインを連発したと言われるクロ・デ・ランブレイでは有りますが、通常ローテーションで改植しなければならないところを全くせず、古木にはなって素晴らしいワインを生んだが、最後はボロボロになってしまったとも言われています。
何かな・・・、出来の悪い子ほど可愛い・・・などと言われますが、そんな親心的な部分も有るにせよ、クロ・デ・ランブレイを飲むと、
「ブルゴーニュワインって懐が深くって美味しいよな・・・」
と思うんですね。
noisy はとても美味しいと思います。プライスもちゃんと反映されていると思う。でも、飲まれる方の評価はどうなのか、是非、聞いてみたいなと思っています。出来ればしっかり休めて、揺らさぬように注いで・・・ブルゴーニュの魂の声をお楽しみくださいね。
Copyright(C) 1998-2023 Noisy Wine [ Noisy's Wine Selects ] Reserved