
■ 北欧のインポーター達が注目するヴィトリ・ル・フランソワの新鋭グローワー!
◇ ロレーヌ地方に隣接するシャンパーニュの飛び地に誕生
シャンパーニュには、コート・デ・ブランの南東、ロレーヌ地方に隣接する飛び地があります。エペルネーから67キロも離れたマルヌ河上流に位置するVitryat ヴィトゥリア地区です。フィロキセラ禍で衰退しましたが、1971 年にAOC シャンパーニュに復帰しました。コート・デ・ブランやモングーと同じ白亜の土壌で、素晴らしいシャルドネが生まれますが、協同組合の力が大きく、これまでシャンパーニュ愛好家には顧みられることはありませんでした。しかし、この地区にも新世代の有望なグローワーが現れました。アントワーヌ・シュヴァリエです。
◇ デビューからミレジメのリューディ・キュヴェを醸造
アントワーヌはアヴィーズの醸造学校を卒業した後、10 年以上世界中でブドウ栽培とワイン造りを学びました。2014年に家業に参画し、引退した父から継承した畑を全面的にビオロジック&ビオディナミに転換しました。リューディの表現にこだわるアントワーヌは、祖父が植樹した樹齢40年を超えるシャルドネが栽培されるコートに位置するリューディから2016ヴィンテージで初めて醸造したミレジメのキュヴェを2021年にリリース。アンテナの早い北欧やイタリアのインポーターが直ぐに輸入を始め、注目を浴びています。
◇ Vitryat ヴィトゥリア地区について

シャンパーニュ地方には、エペルネーから67キロも離れた南東に飛び地があります。Vitryat(ヴィトゥリア)地区と呼ばれる地区です。ちょうどコート・ド・セザンヌの東で、ロレーヌ地方との境界に位置している場所です。今から約2 千万年前に起こったパリ盆地の隆起によって、シャンパーニュ地方に次
のような大きな3 つの段丘ができたと言われています。
・Cote d'Ile-de-France コート・ディル・ド・フランス(モンターニュ・ド・ランス、コート・デ・ブラン、セザンヌ)
・Cote de Champagne コート・ド・シャンパーニュ(ヴィトリア・ル・フランソワとモングー)
・Cote des Bars コート・デ・バール(バール・セカネとバール・シュール・オーボワ)
16世紀の文献によれば、ヴィトゥリア地区には、25の村に約3000ヘクタールのブドウ畑があった記述されています。特にマルヌ河を利用した水上交通の要衝であったVitry-en-Perthois ヴィトリ・アン・ペルトワの村には600ヘクタールのブドウ畑が存在していました。しかし、フィロキセラ禍で全て荒廃してしまいました。
1910年から何人かの栽培家によってブドウ畑が復興し、現在、この地区には450ヘクタールのブドウ畑が広がっています。ヴィトゥリア地区の地質は、モングーと同じ白亜紀上部(チューロン階中期から後期)にかけて形成された白亜の土壌であるため、98%の畑でシャルドネが栽培されています。ヴィトゥリア地区には大きな共同組合があるため、この地区で栽培されたブドウ100%による純粋なシャンパーニュは、殆ど国際市場には出回っていませんが、ヴェルチュに本拠を置くグローワーのパスカル・ドケは、このヴィトゥリア地区に小さな区画を所有しており、そこで栽培されたシャルドネのみで Horizon Blanc de Blancs というエントリー・キュヴェを造っています。これまではこれが国際市場で知られていた唯一のヴィトゥリア地区産のシャンパーニュでした。しかし、この地区にも新しい世代の有望なグローワーが現れました。
◇ ドメーヌについて

ドメーヌの起源は、アントワーヌの祖父のGuy ギィが、Vitry-en-Perthois ヴィトリ・アン・ペルトワ村の二つのリューディにシャルドネを植樹してブドウ栽培を始めた1973~75年に遡ります。この村の村⾧も務めたギイは、ヴィトゥリア地区のAOC シャンパーニュへの復帰に尽力し、1971年にヴィトゥリア地区はAOC への復帰を果たしました。
また、ギィは1973年の地元初の協同組合の設立にも大きく貢献しました。ギイの後を継いだアントワーヌの父ドミニックは、ヴィトリ・アン・ペルトワ村と隣村の Couvrot クヴロ、Val-de-Viere ヴァル・ド・ヴィエ-ルの中で、コートにある有望なリューディを選別して購入していきました。こうして、1973 年に0.5ヘクタールにも満たなかったドメーヌの所有畑は、2010年には4 ヘクタールにまで広がりました。
ドミニックの息子で現当主のアントワーヌは1983年生まれ。アヴィーズの醸造学校を卒業した後、2000年から2013年まで、ブルゴーニュやローヌ、アルデッシュ、ラングドック、シャンパーニュなどのフランス各地と、ニュージーランド、ドイツ、ベルギー、スペイン、ポルトガル、南アなどで、10年以上に渡りブドウ栽培とワイン造りを学びました。2014年に実家に戻って家業に参画したアントワーヌは、父の引退に伴って兄との分割で継承した2.5ヘクタールの畑を全面的にビオロジックに転換。
また、同時にビオディナミも導入して、エマニュエル・ブロシェなどが加盟する「アソシャション・デ・シャンパーニュ・ビオロジック」にも加盟しました。2020年のブドウからはABの認証を取得。2021年の収穫ブドウからはデメテールの認証も取得しました。ドメーヌの現在の栽培面積は2.5ヘクタールで、10の区画に分かれていますが、アントワーヌは単一年のリューディの表現をするために、ミレジメのリューディ・キュヴェしか醸造していません。それ以外のブドウは全て地元の協同組合を通じてメゾンに売却しています。

2016ヴィンテージで初めて醸造したミレジメのキュヴェは、祖父が植樹した樹齢40年を超えるシャルドネが栽培されるコートに位置するリューディから造られ、2021年にリリースされました。アンテナの早い北欧のデンマークやオランダ、スウェーデン、そしてイタリア、アメリカ、英国のインポーターが直ぐに輸入を始め、アントワーヌのシャンパーニュは一躍脚光を浴び、表舞台に登場しました。
◇ ドメーヌのリューディについて
ドメーヌはVitry-en-Perthois ヴィトリ・アン・ペルトワ村と隣村のCouvrot クヴロ、Valde-Vière ヴァル・ド・ヴィエ-ルの3 つの村に点在するリューディに10 の区画を所有しています。主要なリューディは以下の通りです。
・ le Bas du Mont de Fourche ル・バ・デュ・モン・フルシュ
・ le Jardin de Meunier ル・ジャルダン・ド・ムニエ
・ les Renardes レ・ルナルド
・ les Crochots レ・クロショ
◇セラミックのタンクについて
近年、イタリアのClayver クレイバー社製のセラミック容器を醸造に使う造り手が増えています。その筆頭格は、醸造を全てクレイバー社製のセラミック容器に切り替えたブルゴーニュのシャルル・ラショーです。セラミック容器の利点は以下のような点であると言われています。
・ 素材が土と水。天然素材だけなので自然。化学物質は皆無で洗浄も容易。
・ 木の香りがせず、純粋で、樽と違って品質が均等になる。
・ ステンレスタンクと違い、微細孔構造により自然に微量な酸素を供給してくれる。
・ 酸素の透過率は樽よりも30%低く、樽のようにワインを吸収しないため、補酒も少なくてすむ。

アントワーヌ・シュヴァリエでは、様々な容器の中で、何かドメーヌのワインの個性に適しているかを知るために、初ヴィンテージの時から実験的に少量のヴァン・クレールを、セラミック容器で醸造しています。その結果は、素晴らしいもので、繊細で深みのあるバランスの取れたワインが出来上がっているそうです。
しかし、セラミックタンクは非常に高額なため、ドメーヌでは、まだ2 基しか購入できていないそうです。また、容量が小さい割に設置に大きなスペースが必要になるというデメリットもあるそうです。いずれにしても、木樽は依然としてワインにとって適切な品格のある容器であると考えているため、今後は、完全に密閉されていて、シュール・リーの熟成にあまり適さないステンレスタンクを、徐々にセラミックのタンクに切り替えていく計画だそうです。将来的には、木樽70%、セラミック30%の醸造比率が理想的であると考えているそうです。