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「生きたワインこそが全て」 ロッシュ ヌーヴ | ||
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偉大なワイン生産者と呼ばれる人は多くいます。もちろん評価する私達には個々に嗜好がありますし、世間で評価されている生産者が必ずしも自分の好きな味わいのワインを生み出してくれるわけではありません。しかし、やはり多くの人に評価される領域まで到達するには並々ならない努力がなされており、その賞賛の声の後ろには確固とした理由があるのです。ドメ ーヌデ ロッシュヌーヴのティエリー ジェルマンは、現在こそロワール最高峰の造り手として現地フランスのワイン専門誌で評価され、タイユヴァンのようなクラシックなグランメゾンの多くが毎年の割当てをしっかりと確保し、オンリストするという誰もが羨む地位にまで登り詰めました。 | ||
しかし、ボルドー出身でありながら23歳という若さでロワール地 方のソミュール地区に畑を取得し、この地で一からワイン造りをはじめたという彼のバックグラウンドを考えれば、このサクセスストーリーが並大抵のものでは実現できるものではないのだとご想像いただけるのではないでしょうか。 なぜ彼はここまでの成功と名声を得ることができたのか…?その「人」に向き合うと答えが見えてきます。 ひとたびティエリー ジェルマン氏に出会うと、長身の身体からは並々ならぬエネルギーと迫力のあるオーラが発せられているのを感じます。眼光鋭く、訪問客への質問も鋭い。彼との会話は常に緊張感に満ちています。どんな質問を投げかけても自らの哲学をよどみなくスピード感を持って語りはじめます。動きも機敏で、一挙手一投足まで無駄がありません。 | ||
気難しい一面があるという噂もありますが、その噂を耳にしていなかったとしても会話も試飲も集中力を切 らすことができません。それほどまでに「鋭い」印象を受ける人柄です。もっとも、会話が進み彼の本質が少し理解できるようになると、気難しいというよりも 芯をしっかりと持った気骨ある人物という事がわかります。彼のこのような人柄が、飲み手に隙を感じさせないようなワインの味わいにもダイレクトにあらわれ ているように感じるのです。 ワイン造りの基礎となるのは、やはり畑での栽培だと言います。ティエリー ジェルマン氏は、実際の栽培においてビオディナミの考え方・手法を多く踏襲しています。一方で、ビオディナミ農法が持つ哲学的・宗教的な側面に興味は無いと言い切ります。 | ||
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「ビオディナミはこうすれば上手く行くというレシピではない、ましてや信じれば救われるという信仰でもない。これは自然との向き合い方であって、自然を理解し、尊敬し、制約することなくその力を導き出すことだ。」 彼にとってビオディナミは、健全な土壌、力に満ちたブドウを得るためのアプローチであって、信仰ではないのです。実際、彼ほどビオディナミに関して理知的に語ることのできる生産者は珍しく、その姿はさながら教鞭をとる学者のような雰囲気です。個々の考え方や手法の科学的な洞察を忘れることなく、テロワールの表現を最も意識して取り組むティエリージェルマン氏には、多くの国や地域から講演の依頼が来るのだと言います。 「ブドウが活力に満ちた生き方を送れるよう、できるだけ傷つけないように、ストレスをかけないように育てる事が大切だ。そうすれば後は、父なる”空”と母となる”大地”からエネルギーを与えられ、生き生きと成長することができる。」 さらにロッシュ ヌーヴのワインの味わいを特徴付けるポイントに収穫のタイミングがあります。 | ||
ティエリー ジェルマン氏は、過熟したブドウではなく、果皮などで果肉や果汁が守られているタイミングでの収穫にこだわります。ブドウが熟していく過程においてアルコールとなる糖度は上がり続けますが、糖度以外の味わいを形作る要素が失われていくタイミングがあるのです。それ以上収穫を待ったとしてもアルコール感と風味とのバランスが崩れしまうため、全ての要素の調和がとれたタイミングでの収穫が重要だと考えています。手摘みで収穫されたブドウは、簡素ながら清潔で充実した設備を備えた醸造所に運ばれ、果皮などの付着した自然酵母のみで発酵させます。ベーシックなクラスのキュヴェを除き、木製の発酵槽を用い、木樽で熟成されます。熟成用のセラーは醸造所の地下にあり、さながら迷宮のような洞窟は温度 湿度ともにワインにとっては完璧といえる環境です。この奥深い地下セラーで、ゆっくりとワインは成熟し、風格と繊細さ、品の良さを兼ね備えたロッシュヌーヴならではのワインとなります。 |