
昔と違ってバックヴィンテージものが簡単に手に入るような環境では無くなってしまいましたが、その性もあるのでしょうか、ワインファンの皆さんも熟成したワインを楽しむ機会が大幅に減って来ていると感じます。
ワインは酸化熟成と還元熟成のバランスです。そこに温度が加わって来ます。noisy 的には「積算温度感」なんて勝手に名前を付けちゃってますが、温かい地方・・緯度が低い地域のワインと緯度が高い地域のワインでは当然ながら酸のバランスも変わって来ます。そして流通においてもその温度感は加わって来ますから、あまり良くない環境に置かれた場合は、その温度感が限度を越して感じられる訳ですね。
また当然ながら、そこには人の関与が有ります。ワイン屋ももちろん、倉庫業の方もインポーターの方も関わって来ます。最終的に飲み手の方が、
「どのように飲むか」
が非常に重要です。
ですが、どのように飲むか・・が結構に意識されていないようにも感じます。酷い場合は、四半世紀も生き延びて来た素晴らしいワインを、届いたその場で「飲みたかったから」と言うことで開けてしまって、
「澱だらけでとても飲めません!」
と、さも詐欺にでも合ったかのように強い口調で言って来られる方も・・いらっしゃいました。
そこまで行かなくとも、ちゃんと飲んであげさえすれば美味しく飲めるはずのワインも、
「どのように飲むか」
と言う部分の意識の欠如で若いワインと同様に飲んでしまい、結果として良い印象を持たずに飲まれてしまったワインは相当な割合で存在すると思うんですね。その意味では、若いワインはさほど・・そんな危険は少ない訳で、それに慣れてしまうと、そのワインのことを深く考えずに「開けてしまう」ことに繋がって来ます。

このラパーチェは、ウッチェリエラのブルネッロにも使用されるサンジョヴェーゼ・グロッソを主体にフランス品種のメルロとカベルネ・ソーヴィニヨンを少量セパージュした高級ワインです。そもそもはチャッチ・ピッコロミーニを構成する造り手さんだったようで、
「・・違うんだけどなぁ・・」
みたいな点が有ったのでしょうか・・抜けて独立しています。
サンジョヴェーゼの優しくほのぼのとしたフレーヴァーを生かしつつ、カベルネが芯の辺りに、メルロが外郭を受け持っているようなイメージです。
赤と紫、茶、そして少しの黒の果実、有機物を感じます。良く澱を落とした場合のテクスチュアはとても滑らかで、ふんわりと柔らかな土を感じます。熟成によってアロマは複雑性を増し、単なる「綺麗な土」に加えて腐葉土やキノコ・・チェリーはやや退場気味ですがベリーやチェリー・・皮革とワイルドさが出て来ています。
まだ芯の辺りで骨格を支えているような感じのカベルネが、もう少しアロマを放ってくるようになるとこのワインの完成形でしょうか。
で・・写真を撮ったはずが見当たらなくてすみません。澱の部分を混ぜて飲んでみたんですね・・。そうしますと・・
「優しく膨らみの有る滑らかなテクスチュアが・・台無し!」
になってしまい、ちょっとギスギスした上に雑味も感じ、
「この状態では・・流石になぁ・・」
と思ってしまったんですね。
でもヨクヨク考えてみると、その状態で飲まれていらっしゃる方は相当多いんだろう・・と想像出来てしまい、このコラムの出だしに書かせていただいた、ボヤキにも聞こえるフレーズになってしまった訳でして・・なので・・
「夏季の販売を止めて秋まで待って・・」
ご紹介することにしました。なので、テイスティングはまだ暑い盛りに行っています・・(^^;;
お客様のところに届きますと、もう完全にボトルがシェイクされた状況になりますから、
「適度な期間、必ず立てておいて休ませ、透明度を確認してから楽しむ」
ことをお勧めします。
そんなことを言いますと、
「適度な期間って・・どのくらいですか?」
と聞かれることが有るんですが、環境により、扱いにより異なりますよね・・。
なので立てて置き、時折光源にボトルを透かしてみて、
「光がきれいに抜けてくるようならOK」
です。
乱反射して見えるようでしたらまだ清澄期間が不足・・と思ってください。中々に細かい澱が出ている場合が多いと思います。
そのようにして美味しく飲めるようでしたら・・大成功!・・熟したワイン、美味しいですよ。是非飲んでみてください。

こういうワインは好みです・・・。どこか冷ややかさを持っていて、エキスがきっちり!黒味が弱く、紫や赤が主体・・・そして酸味がきっちりあり、取ってつけたような過剰な果実味を拒絶している感じ・・・。
若い頃の自分は、とても濃くて、全ての要素が強く、大きく、派手な味わいを好んでいたような気がします。事実、そう言ったワインは高級で、価格も高く、一口すすっただけでパワフルさを理解するものでしたから、圧倒されていた、とも言えるでしょう。
でも、そう言ったデコレーションの多い、饒舌で大きそうに見えるワインが、たったの4~5年でヘタってしまうのを見るにつけ、
「良いワイン、美味しいワインとはなんだろう・・」
というような疑問を持つようになったんだと思います。
このラパーチェは、サンジョヴェーゼ、メルロ、カベルネのブレンドで、基本的にブルネッロのカンティーナが、イタリアの国際規格品を目指してリリースしている(と思われる)ものです。さすがブルネッロを仕込むだけあって、陥りがちな「生のままの過剰な果実味主体」のゴージャスワインにはせず、冷涼さを保ったまま、絶妙なエキス化に成功しています。
ですから、おそらく開くのに時間を少々要することは有っても、いつ飲んでも美味しいはずだし、2~3年で「終わっちゃった感」が出てくることも無いでしょう。そして、保存さえしっかりしていれば、枯れる最後の最後まで、良い風情を楽しませてくれるはずです。
自分の好みはしっかり持っていて良いんですよ。美味しいことが一番です。昔、大受けしていたサンテミリオンタイプのこってり味だって、美味しいには違いないんです。理由が無いのに敢えて避ける必要も有りません。noisyだって昔はそんなタイプのワインが素晴らしいと信じ込んでいた頃だってある訳です。
でも、これだけは言っておきたいと思います。良いコンディションを保ったまま、日本に輸入されるようになったことがとても大きいのです。質感の崩れやすい、デリケートでエレガントなエキスタイプのワインは、輸入時のストレスでかなりのダメージを受けていたんです。むしろ、若干のダメージを受けても一時的なショックを大きく見せないタイプのゴージャスな味わいのワインが美味しい、と思われていた側面も有ります。
安価なデイリーワインのゾーンでも、品質管理がキッチリ出来ているとピュアさや自然さがそのままに出てきて、美味しいと思えるはずなんです。ましてや、このラパーチェクラスのワインであれば、どれだけその美しさをアピールしてくるのか、容易に理解されるでしょう。
期待が大きいために裏切られやすく、がっかりしやすいプライスゾーンではありますが、コンディションも良く、味わいも素晴らしいです。是非とも飲んでみてください。お奨めします!
以下は年初にかなりのご支持をいただきましたロッソ・ディ・モンタルチーノ2011のレヴューです。
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【質感のブルゴーニュ的な素晴らしさ!滅茶苦茶旨いです!】
こういうワインに出会うと嬉しくなってしまいます。・・だってね・・良く尋ねられるんですよ。
「美味しいワイン、ください!」
と・・。
美味しいワインったって、noisy が美味しいと思うのとあなたがそう思うのは必ずしも一緒にならないでしょ?・・などと思う訳ですが、何しろこのロッソ・ディ・モンタルチーノはブルネッロのセカンド的・・いや、熟成させないタイプですから、
「ブルゴーニュ的でも在り、ピュアで、適度な濃度も有り、グリップ有り、ポテンシャル高く・・・」
と言い所尽くめなんです。
しかしながら価格が高かったりするんですよね・・。でもこのウッチェリエラさんちのロッソ・ディ・モンタルチーノ2011年を、このようなプライスでご案内できることになったんですね~!
樽が強いことも無く、葡萄のナチュラルなポテンシャルをそのままワインにしたような味わいで、チェリー、ベリー、プラムなどの果実がめちゃんこ沢山存在しているのに、ちっともクドク無く・・・さらりとしつつ、伸びの有る終盤を感じさせてくれます。
造り手の余計な仕事を感じずに、本来のポテンシャルのみを味わえる・・それに加え、ブルネッロにしてしまうことで失われるピュアな果実の美味しさを、たっぷりと感じさせてくれるんですね。
この色合いを見てください・・・良い感じでしょう?決して濃くなく、薄く無く、しかし充分以上なカルシウム的ミネラリティの存在を見て取れるかのような透明な層・・・。
なので、こんなワインは誰ににお奨めしても・・
「とても美味しかった!」
と言っていただけるワインなんです。
モンテセコンドのキャンティ・クラシコも、物凄い量がそろそろ完売です。そちらも安いしとても美味しいです。しかしながら、サンジョヴェーゼ・グロッソのこのロッソ・ディ・モンタルチーノのエレガンスには適わないかな~・・と思います。
ブルゴーニュ好きにも是非とも飲んで欲しい・・かならずファンになってしまうと思います。ピュアなブルネッロと思っていただいて結構!超お奨めです!
ROSSO DI MONTALCINO D.O.C.
The grapes are selected from the youngest Brunello di Montalcino vineyards、or those in cooler areas
VARIETY 100% Sangiovese selected from Montalcino
PRODUCTION AREA Vineyards in Castelnuovo dell'Abate、 at elevations of 150-350 metres onwell-exposed hillslopes south-east of Montalcino
ORGANOLEPTIC CHARACTERISTICS Velvety and well?balanced medium-bodied crisp and fruity and long-lingering
AGEING Maturation in Slavonian and French oak barrels for a minimum of 8 months
AFFINAGE Bottle ageing for a minimum of 3 months before released for sale
SERVING SUGGESTIONS Hors d'oeuvres first courses vegetables fine poultry and red meat
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■■oisyテイスティングコメント |
 | 2011 Rosso di Montalcino Uccelliera
イタリアワインファンでもあるOisyとしてはロッソ・ディ・モンタルチーノは実は非常に狙い目であると思っています。 この価格帯では一番好きなワインかも知れません。ワインを本能で好き、嫌いで選らんでいる時代からおいしいな―と思っています。 (結構粗野な造り手も散見しましたが。。。) 今飲んでみても良い造り手はブルゴーニュバランスの所も多いし、非常にエキス的なワインです。 もうちょっと盛り上がってほしいな、とこっそり願っています。
そんな私としましてもウッチェリエラのロッソ・ディ・モンタルチーノを飲んだときはぶっ飛びました。 とにかく「ウマイ」。 チェリッシュでピュアで、、、そして何よりもエキスの凝縮度。 若干ネットリと感じるほど濃密に詰まっています。 非常に集中力のある味つきで、中心に一本筋の入った伸びやか&なめらかなワインです。 単純にブルゴーニュの良い村名レベルのワインだと思います。(でも価格は平均的なロッソの値段!) 今飲むならぜひ2日はかけて飲んでいただきたい。 常温で置いておいても味わいの方もブルゴーニュのように痛みは大きくなく、香りは抜群に開いてきます。
一押しです!!品性に欠ける言葉で申し訳ないですが個人的には「激アツ」です。ぜひ!!
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