
巷では随分と騒がれているようで、でも余りにもテイスティングコメントが無く、イメージでしか判らないし、決して高くは無いけれど、安くは無いゾーンの値付けなので、
「ど~・・しようか・・」
と悩みつつ、まぁ、一度飲んでみるしかないかと、ここはやはり noisy の出番でしょ・・とばかりに仕入れてみました。
地元では変人扱い、パリや海外の自然派ファンで大受け・・と言うダニエル・サージュのワインは非常に少なくて、今回4アイテムで12本しか割り当てが来ないと言う悲惨な状況です。でも飲まなきゃ判らないので、その中でも比較的多めの「ルー・リーブル・No.18」を飲んでみました。
栓を抜いたそばからもう・・アロマが飛び出してきました。ナチュラル系です。何とガメと言うことでして、ローヌでガメを育てちゃってるんですね。
非常にナチュラルです・・・。やわらかいですね・・そしてローヌですが、全く暑苦しさが無いです。ロワールと勘違いしそうです。
非常に官能的なアロマティックさが有ります。ですが、かなりピュアです。揮発酸も出ていなくは無いのですが、全くの問題無いレベルで、わずかに存在している要素がこのワインを高級感、ナチュラル感、複雑性を高めているという、良い方向に向かっています。
ここが重要でして・・この部分をクリアできないと、
「・・自然派だからな!」
と言う不満になってしまいます。クリアできると、
「自然派だからこれほどまでにナチュラルなんだよ!」
と言う賞賛の声に変わるんですね。非常に大事です。
そうですね・・何が似ているか・・と言うと、フレデリック・コサール、ド・シャソルネイでしょうか。コサールのワインをより自由に、より大らかに、でも絶対失敗しないよ・・と言っているように思います。コサールも以前、揮発酸で失敗していますから・・ね。
この思いっきり自由に感じるけれど、造りにおいて全てを自由なままにしていたら、絶対にこのようなバランスにはならないと言えます。
ある意味、付きっきりでキュヴェを観察し、チェックし、対応する・・ボラティル値が限界を超えそうなら早めに何等かの対処をし、それがナチュラルで自由な味わいを生んでいるのでしょう。
他のキュヴェは飲んではいませんが、おそらくそんな自由な味わいかと想像しています。味わい的にはコサールに近いですが、もっと自由です。
そして、なぜか非常に・・ブルゴーニュチックな味わいです。アルコール分も低く12%台と言うのもそう感じる根拠かもしれません。ベリー系のしなやかな果実感が心地良く、しかし
「エナジーを強く感じる味わい」です。
ブリュノ・デュシェンも自然派で素晴らしい造り手ですが、ここまでは突っ込め無いでしょう。一歩以上、ナチュラリストの方向に進んでいて、その才能を開花させていると思いました。まぁ、自然派ファンたちが大いに持ち上げるのも理解できる素晴らしい味わいでした。凄い目をしていると思います(錬金術師的??)。お勧めします。ご検討くださいませ。
■エージェント情報
クールでミステリアス、でも意外に寂しがり屋な一面もあるダニエル サージュ!待望の2013年リリース ジェローム・ジュレ、ジル・アゾーニ、エルヴェ・スオーなど数多くのスター生産者がひしめきあうアルデッシュ地区。そのアルデッシュに彗星のごとく現れ、ワインシーンの話題をまたたく間にさらった造り手、ダニエル・サージュ。
一見クールでミステリアスな印象を受ける人物ですが、ゆっくりと時間をかけて会話を重ねると、彼のワインへの情熱と芸術や音楽といった美しいものへの愛情、そして、少し寂しがりやな一面を垣間見ることができます。
今年の8月に彼のカーヴを訪れた際、当初は淡々と試飲が進んでいくのですが、それぞれがワインへの想いを語り合うにつれ、段々と会話に熱が帯びるようになり、そのクールな表情の端々に嬉しさをかみころしたような笑みを小さく見せるようになりました。
話題は、ワインに関してのみにとどまらず、地域のこと、地元の人々のこと、日本のこと、世界のこと、とどんどんと広がっていき、試飲を終えて食事を一緒にとりながらも会話は尽きることがありませんでした。
そんな会話の中で、彼らしくもあり、それでいて少し意外でもあったのが、彼が求める人々とのつながりでした。
今や世界中の国や都市でカルト的な人気を勝ち得たダニエル・サージュですから、彼のカーヴには、本国フランスはもちろん、北欧、アメリカと行った国々から多くのインポーターやワインショップのオーナーなどがやって来ます。
「もちろん、自分自身のワインがこうして世界中を旅していくのは本当に嬉しいんだけど…」
と前置きしながら、
「この辺鄙な村にこうして皆が来てくれる一方で、地元の人たちは僕がここで何をしているのか、どんなワインを造っているのか、ほとんど知っている人や理解している人はいないんだ。」
「それでもいつか、君たちとのように、地元の人たちともこうしてワインを飲みながら語り合えたらなと思っているんだ。」
そう言われて思い出したのが、彼の下をはじめて訪問した時のことでした。季節は冬だったこともあり、醸造所は寒いからと樽熟成中のサンプルを小瓶に詰めて、地元のビストロに持ち込みして試飲をしたことがありました。
ちょうど2012年のサンプルを試飲するタイミングで、土壌違いとマセラシオンや圧搾の違いでかなりの数のキュヴェがあった時で、ふと興味を持ったのか、そのビストロのマダムが
「私にも飲ませて」
と声をかけてきました。
そして、一口含んだ後…
「!??????」
と怪訝な表情。
なんとか絞り出した質問は、「品種は何?」というものでしたが、それに対して表情を変えずに淡々と「ガメイだよ」と応えるダニエル。
そして、そのマダムは
「アルデッシュでガメイ!?」
とひどく困惑した様子を見せました。
この他にもいくつか試飲をしましたが、
「こんな淡い色でシラー?」
「甘さの残ったシラーのペティアン?」
と何度か不可解なリアクションを繰り返した後、
「まあ好きにしたら」
といった風情でテーブルを離れて行きました。
その地域にある当たり前のスタイルのワインを当たり前に飲んでいる人にとっては、当然のリアクションだったと言えますが、少し寂しそうな表情を見せたダニエル。
その頃から3年たった今でもあまり状況はかわらないのであれば、ダニエルが寂しがるのもしょうがないのかなとも思えました。
そんなダニエルの地域への愛着を意外なところで垣間見ることになったのは、パリでもほとんど見かけることのない彼の特別なワインが、南仏のとある山間の村にぽつんとあるようなビストロで見かけた時でした。地元と呼ぶには少し距離がありましたが、それでもダニエル自身が足を運べて、時間を共有できる場所に自分のワインがあってほしい、できることなら一緒にワインを感じたい、と彼自身が強く望んでいるんだなと感じ取れました。
いつもクールでミステリアスなダニエル・サージュの寂しがりやで人間味ある一面。そんな彼と時間を過ごして、あらためて彼のワインと向き合ってみると、ワインからもどこか親しみやすくて、どこまでも純粋な彼の人柄がよりいっそう感じられるような気がします。
ということで、久しぶりのダニエル・サージュのワインのリリースです。残念ながら数はそれほど多くありませんので、前回同様セットでの販売とさせて頂きます。ご不便をおかけしますが何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
入荷からも随分と休ませてからのリリースとなりますが、それでもまだシャイな一面もあり、またダニエル・サージュらしい「ゆらぎ」も各ワインにあると予想しております。1本1本がタイミングによって異なる表情を見せてくれると思います。彼のワインを手にされた皆様には、ぜひダニエル・サージュとのワインを通じての対話をじっくりと楽しんで頂ければ幸いです。