
シノンです。シノンと言えばロワール川中流のトゥーレーヌ地区に有る「最高の赤ワイン」と評判の高いアペラシオンですね。基本的にはカベルネ・フラン種で、僅かな量のカベルネ・ソーヴィニヨンをセパージュすることが可能です。トゥーレーヌ地区と言えば、やはり最高の白ワインの名も高い「ヴーヴレ」と双璧をなすアペラシオンですが、日本ではさほど大きく取り上げられることは少ないと言えます。
まぁ・・カベルネ・フランですから・・
「・・だって・・青いでしょ?・・キャベツかキュウリみたいだし・・」
などと言われてしまいそうですよね。
でもね・・良く良く考えてみてください。あのサンテミリオンのシャトー・シュヴァル・ブランは、メルロよりも多いセパージュでフランを使用しています。ほぼ50%以上の場合が多いようです。それにシャトー・ラフルールは、樹齢の高いフランを半分以上使うことによって、ペトリュスに対抗出来得る凄いワインになっていますし、そもそもペトリュスでさえ、作付面積の5%はフランなんですね・・。「青臭い・・」なんて言ってる場合じゃ無いんですね。
確かに成熟不足のカベルネ・フランは「どうしようもなく青臭く」なる場合が有ります。
「・・わしゃピーマン飲んどるんか!」
と言いたくなる気持ちも判ります・・でもね、
「良いカベルネ・フランは、決してそんな単純なアロマにはならないし、良く熟していれば複雑性の高いスパイシーなアロマを発する」
んですね・・。
まぁ、そりゃぁ・・ワインを飲み始めますと、そんなに高価なワインばかりを最初からは飲みませんから、安価なワインの中には「キャベジン」みたいな香りの中域の出ない薄っぺらな味わいしかしないものに当たる確率は高いでしょうし、
「だって・・嫌いなものは嫌いだし・・」
などと言われるのも判らなくは無いんですね。

フランに苦手意識を持つ前に美味しいフランを飲んでいれば良かったんですけどね。そうすれば、リーズナブルなのに高貴さの有る美味しいフランの良さに気付いたはずなんです。まぁ、対岸のブルグイユやサン=ニコラ・ド・ブルグイユはシノンよりも「硬い性質」なので、そんなアロマは出やすいと言えますが、シノンは比較するとソフトですから・・お好みに合う可能性は大きくなるかと思うんですね。
で、今回はこのシノン・ルージュ3アイテムは非常に・・美味しいですし、とても面白い対比の出来るワインになってます。
一番上、一つ目の写真は「レ・ブラン・マントー」です。これはま~・・ブルゴーニュ・ピノ・ノワールがお好きな方ならピッタリと言えるピュアなエキスたっぷり、石灰系ミネラリティも膨大、
「ピーマン香なんて・・全くしないじゃない?」
と、反対にマイナス面と思わしきアロマを長時間探しに行ってしまうような美しく伸びやかなアロマが特徴です。
色合いは濃いめに見えると思うんですが、むしろ皆さんが好みとおっしゃるピノ・ノワール的な濃度で止まってまして、しかもとても涼やかですから、暑苦しく無く、キレや収束も似たニュアンスを持っていただけると思うんですね。まぁ・・薄くは無いですが、決して濃いとは思わないでしょう。
そしてタンニンが目立ちませんので・・、そして何よりも石灰系のミネラリティが豊富ですから、テクスチュアも滑らかで美しさ中心に飲める素晴らしいバランスをしています。なので、この「レ・ブラン・マントー」が一推しです。
二番目の写真は「レ・シヤン・シヤン」です。これがまた面白い存在でして、三番目の写真にご紹介する「ピエール・ド・テュフ」が・・・
「シノンらしいシノン!・・ふくよかなボディ、膨らむスパイシーアロマが素晴らしい本物感バッチリのシノン」
なものでして、非常に美味しいんですね~・・でも、先の、
「ベジタブルなアロマを探しに行って自分から不幸になってしまう自滅タイプ」
のアンチ・フラン派の方には、シュヴァル・ブラン風なぶっといスパイスアロマでさえもネガティヴに感じてしまうでしょうから、最高に旨い三番目の「ピエール・ド・テュフ」はそのような方々にはお勧めしにくい・・と言えるんです。
そんなところに・・ですね、ちょうど一番目と三番目の中間位に値するアロマとボディの豊かさを見せるのが、「レ・シヤン・シヤン」なんですね~。
なので、石灰系ミネラリティがごっちょり存在し、果実の表情がみやびな「レ・ブラン・マントー」には無い複雑性とゴージャスさが特徴なんです。バランスが良いんですよ。色合いはむしろ「レ・ブラン・マントー」の方が濃いですし、果実そのものの表情が強いんですが、こちらは果実に加えスミレの花とか、植生そのものを含む複雑な表情が有り、豊かな気持ちにさせてくれます。
こちらもとてもエキシーでピュア、1番目との対比も実は面白いです。結構な違いが有るんですね~。

で、この写真が三番目ですね、「ピエール・ド・テュフ」です。
こちらはもう本格的な「高級シノン」そのもので、かなりの旨さです。価格もちょっと高めですよね。
おそらくですが、この「ピエール・ド・テュフ」の土壌は粘土質が強いのかな?・・と思わせるものが有って、やや粘っこく、アロマもド太く強烈です。スミレの花を「これでもか!」と言う位のブーケにして、そこに鼻を突っ込んだような・・(^^ まぁ、そんなことはしたことは無いですが、芳醇な素晴らしいアロマです。こちらになると、タンニンの存在に気付くかと思うんですが、その質も非常に良く、ふわふわっとして柔らかで甘いです。味わいはドライだけれどタンニンの質の良さからの甘味が感じられると思います。
ボディも非常に豊かですがドライでエキスがきっちり感じられます。余韻もスパイシーで香りが戻ってくるようなイメージ、プライス的にはとてもリーズナブルで、カリテ・プリさも高レベルです。
まぁ・・ただし、上記に書かせていただいたような「自滅型」の飲み方をされる方には向かないかなぁ・・などと思っています。
「絶対にそのような香りには取れないはず!」
などとは言えないですからね・・。
三種三様の美味しさを感じられる素晴らしいシノンでした。レ・ブラン・マントーは砂地が主体かな?・・レ・シヤン・シヤンには粘土が混じり、ピエール・ド・テュフは粘土主体・・みたいなイメージがします。旨いし安いし・・冷え目でもボディが縮こまらない懐の深さも有りますし、暑苦しくないので、暑い時期にも美味しくいただけると思います。是非飲んでみてください!お勧めします!