
以前にご案内させていただいた1990年ものは、非常にバランス良く、まだまだ持ちそうなニュアンスを漂わせていました。2018年の今頃にご案内させていただき、評判をいただきました。その時は、1983、1985、1988,1990のブティーユとマグナムをご紹介させていただきました。
今回は1995年もの・・と言うことで、1990年ものを8年前にテイスティングしてご案内・・と言うことは、1995年ものを1990年ものより3年ほど遅れてのご案内・・となります。
色彩は濃い目で熟成度はレンガ色が全体に出て来ています。左岸のワインに出易い・・「スー・ボワ」・・森の下草・・のブケにスパイスとワイルド・チェリー、タンニンはまだ完全には溶け込む前かと思われ、味わいの幅と深みが大きい・・スケールの大きな味わいです。
完熟までにはもう少し掛かるかと思いますが、バランスは現状でも悪く無く、ただブルゴーニュワインよりも1度、品温を上げて飲むべきだろうと感じました。
昔は・・ボルドー赤は17~18度、ブルゴーニュ赤は16度と・・言われていたように思いますが、今、ブルゴーニュの赤は・・
「飲み出し13~14度・・時間経過のシャンブレで楽しむ・・」
みたいな傾向が強いように思います。
これには電気式のワインセラーの普及も一役買っているかと思われ、日本でも多くのワインファンが所有し、13.0度~14.0度の間で安定するような設定の方が多いことも有ります。

反対に言えば、これだけブルゴーニュワインが世界で持てはやされるのにもその辺りの品温設定が寄与していて、
「低い温度で開けても自然と温まり、しかも急激に酸素を取り込んで繊細多彩な表情を還してくれる」
のがブルゴーニュワインだった・・と言うのも有るかもしれません。
そこに割って入ったのが自然派ワインで、人的関与を減らした醸造を基本に、有機農法、農薬不使用、自然酵母使用と言った手法で、ナチュラルな表情を早い段階から還してくれるのが良かったかと思う訳です。
この、ボルドー左岸のサン=ジュリアンとマルゴーの間に挟まれ、やや内陸に寄った位置にあるムーリと言う村に有るシャトーワインですから、クラスとしますと5級以内には入って来ないワインですが、それでもやはり、
「手前、生国は、ボルドーでござんす。ボルドーといってもいささか広うござんす・・」
と仁義を切りながら、
「左岸の内陸よりだ・・」
と言いながら・・楽しませてくれるんですね・・。
表情の中にちょっと「蒸れたような・・むわっとしたような・・」温かみのあるニュアンスが前に来ていると、左岸内陸かな・・などと言っているように思うかもしれませんし、場所にもよりますがメルロのニュアンスが強かったり、終盤がネットリしつつもさらりと抜けて行くようだと・・川沿いかな・・などと言っているように思うかもしれません。
いずれにしましても、
「これから10年以上、楽しめるワイン」
です。
もちろん、飲み方で味わいはかなり異なりますので、しっかり休めて・・澱を落としてからお楽しみください。
なお、Noisy wine に届くまでの保存の問題で、
「ボトルのショルダー辺りに澱の膜がベッタリついてしまう」
状況ですが、飲まれる前までに立てて置き、揺らさないようにグラスに注げば・・全く問題ありません。ぜひ飲んでみてください。お薦めします。
以下は以前ご案内させていただいた1990年もののレヴューです。
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【完熟の左岸ボルドーはいかがでしょう!?】
noisy には珍しい、クリュ・ブルジョワ・クラスのワインをご紹介します。しかも今回は熟成バージョンです。
もうワインショップとして生きていこうと思った頃から、余りに美味しく無いものが多いボルドーの安ワインはほぼ眼中に無く、2000円位までのボルドーワインは、
「これは行けるな・・」
と思ったもの以外は扱いませんでした。
何よりも酸が伸び伸びとしておらず、フレーヴァーも有るのか無いのか・・特にこのブルジョワ級以下はまともに思えるものが非常に少なかったです。
最もその頃のワインの輸入の状態は今ほど整備されておらず、赤道を超えるにも関わらず冷蔵コンテナを使うことは稀だったと思われますし、冷蔵コンテナ使用と言いつつも、実際は使用されていないか、一部使用に留まるか、使用していても使用していないのと同じ状態になってしまう運用でしか無かったとも言えます。
そんな中でも、ブルジョワ級やエクセプショネル級の中に光を放つものも有りまして、その一つが今回のベレール・ラ・グラーヴです。今回は「シャトー蔵出し」で届いておりまして、古酒ながらもピッカピカです。テイスティングしたのは1990年もの、28年もの古酒です。
まずは色合いを見て行きましょう。レンガ色が入ってきていますが、28年も経過したようには見えませんよね。フレーヴァーもしっかり生気が有り、ピュア感が結構に有ります。若いなぁ・・と言う感じはしませんが、まだまだ熟成する可能性も秘めていると言うニュアンスです。
ジロンド川の傍に有る格付けシャトーほどの深みは無いにせよ、良い感じに熟していることが伺われます。遅熟なカベルネ・ソーヴィニョンが多いですから、これが完全に熟すのにはもう少し時間が必要かな・・と言う印象で、花が咲いたようなフレーヴァーが出てくると完熟でしょう。まだそれに至っていないと言うのは少し驚きです。むしろ今回同時にご紹介のブティーユ、1985年ものは完熟してるんじゃないかと思われます。
艶めかしい熟したニュアンスと、とても健全な味わいが良かったです。5千円くらいなら合格でしょう。
因みにセラートラッカーの評価ですが、
1983年 90Points (Av.88.5Points) 12/25/2017(90Points)
1985年 83~90Points (Av.88.3Points)
1986年 84~94Points (Av.88.3Points) 12/24/2016(94Points)
1988年 91Points (only 1user)
1990年 85~92Points (Av.88.1Points) 3/18/2018(92Points)
と、中々のものになっていました。特に、1990年ものは今年の3月18日にレヴューされたもので92ポイント、
「シャトー・カントナック・ブラウンに似ている・・」
とコメントが有り、
「ん・・まぁ、そんな感じかな」
と同意できるものでした。92点は付け過ぎかも・・と思いますが、何せ30年近く経過していますと、
「個体差はそれなりに激しいはず・・」
ですので、批判されるものではありません。
また今回はマグナムの古酒も有ります。こちらはより「安全」ですので、古いボルドーを飲んでみたい方や、記念のヴィンテージが有る方には面白い存在かと思います。
なお、
「蔵出し古酒で外観も綺麗ですが、澱は有ります。」
ので、決して急いて飲まないようにお願いいたします。必ず澱下げを行い、注ぐ時も澱が立たないようにご注意くださいませ。ご検討ください。