シャトー・カズボンヌ
シャトー・カズボンヌ
フランス Chateau Cazebonne ボルドー
● あら、noisy がボルドーやってる!・・と苦笑交じりに言われるのは判ってはいるんですが、

「美味しいものはちゃんとやる」
のが主義ですから・・はい。
で、何と・・グラーヴですからガロンヌ川の南ですね。シャトー・カズボンヌのご紹介です。
ですが・・ただのボルドーワインのご紹介ではありません。以降を読んでいただけましたらお判りになられると思いますが、
「オルタナティブ・ボルドー」
「ボルドーの古代品種復活」
「原点回帰」
が名題です。
そして栽培はビオです。でも味わいはとんでもなくピュアです!そして、
「ブルゴーニュそっくりなエキス系の味わい!」
でも有ります。
まぁ・・濃い色彩に見えるメルロ100%とカベルネ100%、そしてシャトー・カズボンヌ・ル・グラン・ヴァンは、その品種構成から・・
「ボルドーでしょ!」
とおっしゃる方もおられるかもしれませんが・・。
で、彼らのワインはとんでもなく・・
「密度が高い!」
です。
その上で、
「めちゃリーズナブル!」
なんですね。
なので・・飲まずにはいられないと・・思います。ぜひとも飲んでみてください。久々の激推しの新規造り手さんです!

Cazebonne(カズボンヌ)はガロンヌ川上流域、Saint-Pierre-de-mons(サン=ピエール・ド・モン)のコミューンで最も古い歴史を持っています。1700年、この土地は国王の顧問でありランゴン市長でもあったPierre de Castelneau(ピエール・ド・カステルノー)卿が所有していました。4代目の子孫であるJoanès de Castelneau(ジョアネス・ド・カステルノー)が1840年にサン=ピエール・ド・モンの市長となり、カズボンヌに住んでいました。今日では40ヘクタール以上を所有しており、全ての畑で有機農法を行っています。
私たちの畑はフィネスをもたらす砂とシルト、複雑さをもたらす深い砂利、粘土石灰。多様なテロワールによって様々な特徴を持つワインを提供することが出来ます。
カズボンヌは2016年、Jean-Baptiste Duquesne(ジャン=バティスト・デュケイン)が購入しました。このプロジェクトはClos de Mounissens(クロ・ド・ムニサン)の醸造家であるDavid Poutays(ダヴィド・プーティ)氏との出会いによって生まれました。テロワールと葡萄に敬意を払い、ビオディナミへの再転換を主導しています。
ビオディナミの定義はそれほど簡単ではありません。生態系、土壌、植物、ひいては惑星を含む天体の観点から生物への影響によって畑を導くというものです。2020年ヴィンテージからはワインにDemeterとBIOが表示されます。
ビオディナミ農法にならぶ当主のパッションは、"忘れ去られたボルドー品種の再発見"です。
ボルドーの品種といえば、ほとんどの人が赤はカベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルローにマルベック、プティ・ヴェルドー、白はソーヴィニョン・ブラン、セミヨン、ミュスカデルを想起しますが、ジャン=バティスト自身が、ボルドーに残る古い文献を読み漁った結果、1700-1900年にかけて、ボルドーには、品種の非常な多様性があったことを発見しました。(その後、この調査の結果をまとめた自著Bordeaux - une histoire de cépages -を上梓するに至っています。)文献によると、赤白あわせて優に100を超える品種がボルドー地方全体で用いられてたにもかかわらず、1900年代に、現在我々の知る数種へと激減してしまったのです。
現代の品種選択に、とりわけ大きな影響を与えた出来事として、彼は、1956年に一ヶ月間続いた冷害を指摘します。この前代未聞の冷害により、当時のボルドー地方全体の約9割にあたる10万ヘクタール以上が新たな樹への植え替えを余儀なくされます。
そして、この時点でボルドーには、AOCならびに1953年に追加された法によって、地域ごとに"推奨"される品種(つまり現在の主要品種)が定められていました。これらの法に基づいて一斉に植樹が行われた結果、ボルドーの画一的な品種選択が完成したと彼は主張しています。
ジャン=バティストによると、この選択は、戦後の経済的要因、タンニンが多い長熟スタイルへの市場の要求が大きく関わっており、現在の自然環境や、ニーズに沿ったワイン造りに必ずしも合致するものではないと考えています。
現在、彼自身が"ラボ"と呼ぶ区画では、サン・マケール、キャステ、メリーユといった過去のボルドーの品種約60品種が栽培されており、それぞれの品種の持つ個性や環境への適応性が試されています。
シャトーは植樹に対しても強いこだわりを持っており、フィロキセラへの耐性のあるヴィティス・ラブルスカ種を台木としてヴィティス・ヴィニフェラ種を接木するに際して、通常接木済みの苗を購入、植樹するところ、シャトーでは台木を直植えし、1年ほど根を張らせたのち接木を行います。
もちろん、時間も費用もかかる方法ですが、これは台木が根を地中深くに張るエネルギーと、栄養を実に行き渡らせるエネルギーを両立させるために不可欠な作業であると考えています。
● N.V.(2021) Qui est Yin Qui est Yan ? V.d.F.
キ・エ・イン・キ・エ・ヤン? V.d.F.
【こりゃぁ・・素晴らしい!・・「オルタナ・ボルドーの鏡!」とも言うべき、赤白共に栽培できる「グラーヴの粋」を感じさせる、美しいエキスの伸びやかなワインです!】

なんと・・ボルドーはグラーヴのビオのカベルネ・フランを60%、ソーヴィニヨン・ブラン40%セパージュした、
「半端無いオルタナティブ・ボルドーワイン!」
の誕生です!
どこから話し始めたら良いか迷ってますが、とにかくこれは・・
「めっちゃ安くてエキスの美味しさをしっかり感じさせる、かなり高質で・・めちゃ旨い!」
と申し上げておきましょう。
黒葡萄と白葡萄をブレンドしていますが、ロゼにならず・・赤ワインそのものの味わいですので、Noisy wine では「赤ワイン」として区分させていただきました。お客様も、
「白葡萄・・入ってるんでしょ?・・その分、薄く無いの?」
とは・・
「飲んだら絶対に言わない」
と申し上げておきます。
オルタナティブと言う言葉・・音楽の世界でもありますよね。本来の意味は「代替の」「二者択一の」・・みたいな感じです。noisy 的な感覚では、
「もう一つの選択肢」
とか、もう少し進んで・・
「(本来と比較して)のんびり・・ゆったり・・」
みたいなニュアンスを持って感じていました。「抑揚を抑え気味で・・」みたいな感覚も有ります。
しかしながらよくよくテクニカルを読んでみると・・さらにそこから進んで、
「(原点回帰のための)もう一つの道」
みたいな感じなのかな・・と。特にこのジャン=バティスト・デュケインさんの場合は・・ぐるっと回って一周する感じで、原点回帰を目指しているように思います。

このグラーヴ地区のの最も南に位置する「サン=ピエール=ド=モン」は、白葡萄も黒葡萄も収穫されます。フランを60%、ソーヴィニヨンを40%にすることで、
「白ワインのニュアンスは消される」
と思ってください。白葡萄の割合が有る程度多い方が上手く行くそうです。実際、noisy もテクニカルを読む前は、白葡萄の存在には気付きませんでした。
「・・だって・・しっかり色が付いてるし・・ただ、品種が良く判らない・・」
と言う気持ちでした。
しかしながら、
「・・あれ?・・これ、安いはずなのに・・めちゃしっかりしてるじゃん・・」
と・・。そして、
「・・うちの担当のM君、なんとなく余り noisy には渡したくない感じに思えたけど・・」
と感じていたので、
「・・そうか・・このキ・エ・イン・キ・エ・ヤン?の出来が良いだけに、上のクラスを仕入れてくれないかもと・・危惧していたのかな?」
と・・気付いちゃいました。
まぁ・・ボルドーワインですから・・・しかも Noisy wine ですから・・インポーターさんも、お客様も、
「 noisy がボルドー?」
と・・思っちゃいますよね。
でも・・
「安心してください。シャトー・カズボンヌのワインはどれもブルゴーニュのエキス系ワインと同列同型の出来!しかも相当旨い!」
ですから。
で、フランも青くなく、美しく熟しています。タンニンがビシバシ感じることは全く無く、むしろ美しく溶け込んでしまっていて、タンニンがどうこうと言えるようなワインではありません。
その上で、非常に絶妙な感じで熟度が有り、濃過ぎず薄過ぎず、まるでブルゴーニュの村名ワインを飲んでいるような、
「チェリーやプラムのナチュラルな果実に、粘土や石灰の織りなすスピード感あるアロマが素晴らしい!」
です。
流石に、同じグラ―ヴのブティックワイン、リベル・パテルと同じようなことをしながらも・・
「リベル・パテルは1本が3万ユーロ、約500万円!」
では有りますが、このシャトー・カズボンヌのトップ・キュヴェは数千円です・・このキ・エ・イン・キ・エ・ヤン?に至っては、
「げげっ!・・こんなに安いのに・・しかもブルゴーニュと同じような味わいで・・気に入った!」
と、きっと思っていただけるでしょう。
とんでもなくお薦めです!是非飲んでみてください!
● 2020 Le Grand Vin Graves Rouge
ル・グラン・ヴァン・グレーヴ・ルージュ
【グラーヴのオルタナボルドーながら、「こんなにリーズナブルで・・大丈夫?」と心配したくなるほど超本格派!・・しかもビオでアンフォラと樽の両刀使い!・・素晴らしい出来です!】

おそらくですが、このワインが今のシャトー・カズボンヌのシャトー・カズボンヌなのでしょう。
グラ―ヴのシャトーですから、地区名のワインになる訳ですね。格から言いますと・・村名の下・・です。
ですが・・
「そんなヒエラルキー、忘れてしまえ!」
と言っているようなワインに仕上がっちゃってる訳ですよ。
その昔、5級以内のワインでも千円台で・・と言うか、1500円とかでセカンドが購入出来ましたし、3~4千円でその看板が購入できた訳ですが、
「実のところ、余り美味しくなかった」
んです。
まぁ・・輸入の仕方も有ったでしょうし、コンディションを余り気にしない外国の関係者の方々もいらしたでしょう。それこそ今は
「リーファーコンテナで」
輸入されるのが普通ですが、リーファーと言う言葉も使えなかった・・ある方が商標登録されていたはずで、仕方が無いので「冷蔵コンテナ使用」とNoisy wine も表記していました。解放してくれましたけど。
さらにはリーファーコンテナ自体は元々日本で生まれた日本製です。沢山作って、世界中に広まった訳ですね。・・あ、すみません、長くなってしまうのでそこはちょっと飛ばします。

で、もし・・このミネラリティに溢れ、ブルゴーニュ的なエキスの味わいに仕上がり、しかも、
「ビオで、飲み口が良く、外向性高く、濃度も潤沢で、飲み心地も最高!・・で価格もめちゃリーズナブル」
と言うグラーヴのワインをメドックの方々が飲まれたら、きっとビックリされることでしょう。noisy だって驚いたくらいですから。
そして、ノーズも味わいも・・
「まったくの3D」
です。下手すれば2D プラスアルファ的なボルドーワインが多いのに・・です。
造形がしっかり深く、構造もしっかり深く、表情はミネラリティに磨きを掛けられた「オルタナティブ・ボルドー」です。もし、もう少し南にでも外れたところにこのシャトー・カズボンヌが有ったとしたら、オルタナティブ・ボルドーには成れなかったかもしれません。グラーヴだからこそ出来た・・のでしょう。
今飲んでも美味しいですが、あと2~3年寝かせる事で相当開いてくると思います。ボルドーワインですが、ブルゴーニュワインと同様に、
「村名以上のポテンシャルが有る!」
とお考え下さい。カベルネの快活な赤さ、メルロの少し暗い赤さをたっぷり楽しめます。超お薦めです!
● 2022 les Parcellaires les Galets Terrois de Caebonne Grave A.C.Rouge
レ・パルセレール・レ・ガレ・テロワール・ド・カズボンヌ・グラーヴA.C.ルージュ
【「赤を何層にも積層させたら・・カベルネがこんなになっちゃいました!」的なノーズと味わい!!カベルネ嫌いも思わず唸るに違い無い・・素晴らしいワインです!・・でもこんな価格で良いんだろうか・・】

いや・・頭が下がります。世の中のワインファンは喜んでくれるに違い無いですから・・。
そもそもカベルネ嫌いの noisy ・・いや、嫌いなわけじゃなくて、若いうちは硬くてバッキバキで・・美味しい状態で販売出来ないのが嫌で、ついつい・・仕入れない・・と言う流れになっちゃうわけですよ。
ですんで、イタリアワインのカベルネ主体やカベルネ100%の少し古いものが見つかると・・
「やった~!」
とばかりに仕入れる訳ですが、その割にはさらにずっと余り売れず・・15年ものみたいになった頃に・・
「・・あらま・・ようやっと完売かぁ・・安く出していたのになぁ・・」
と、ちっとも利益にならずに落ち込む訳です。
「・・ん?・・全部なくなったんなら利益になってるんじゃないの?」
と、きっとツッコミが入ると思いますが・・とんでもない。
どうしても熟成具合が気になって・・2~3年置きにテイスティングしちゃうものですから・・全部販売できても・・真っ赤なんですね。残念・・
で、何と・・このグラーヴのカベルネ100%のビオワインを飲ませていただいたんですが、
「げげっ!・・旨いじゃん・・!」
と、相当驚きました。メルロも旨いですが、このカベルネって・・

非常にミネラリティが豊かです。そもそもボルドーで石灰が物凄く感じられるアイテムって・・少ないと感じていますが、このシャトー・カズボンヌのアイテムはどれも・・
「とてもブルゴーニュ的で、石灰なミネラリティがコートした要素のエキスを楽しむスタイル」
なんですね。
ですから、ミネラリティでコーティングされたお花畑、もしくはブーケの近くにいるような感じで、ストレートにフラワリーでは無く、冷涼感とドライな果実も含んだ味わいを、
「劇的に滑らかに」
楽しめるんですね。
そもそもカベルネの若いワインはボディが出辛いので、ちょっと甘くしてしまうところが多い・・特にリーズナブルなワインには・・と思っていますが、
「それを避け、密度を滅茶高める事でこの見事な味わいを造り出した!」
と言えます。
この見事な味わいを生む畑仕事も相当大変だと・・感じます。
「これ・・3千円台なの?・・」
と・・noisy が驚いています。
「・・どう考えてもポテンシャル、気品と釣り合わないよなぁ・・」
是非飲んでみていただいて、ご反論いただきたいと思います。
「あ、・・noisy がカベルネを薦めてる!・・マジ?」
でも結構。どうぞよろしくお願いします。
● 2022 les Parcellaires Asteries Terroir de Darche Grave A.C.Rouge
レ・パルセレール・アステリエ・テロワール・ド・ダルシュ・グラーヴA.C.ルージュ
【何と・・グラーヴの地でメルロ100%!・・しかも、右岸のサンテミリオンやポムロル的な深い粘土と言うよりも、よりキュッと引き締まった石灰が多く、しかも冷涼な味わい!・・これはめちゃポイント高いです!】

面白いですね~・・。そもそも早くから美味しく飲めない・・と言う観点から、少々なりとも扱いは続けているものの、今一つ・・素直に手が出なかったボルドーワインです。
その昔は・・ポテンシャルは高いワインでも、
「テクスチュアはガッサガサ」
「濃いがパレットがイガグリ」
「時に焦げ臭く苦い」
リーズナブルなクラスでは、
「薄くて・・何か匂う」
「余り味わいも香りも無い」
と言う感覚でした。
いや・・でも結構、ボルドーのプリムールもやってましたよ。「よ~い、ドン」でスタートなので、ほとんど価格だけのアピールしか出来ませんでした。ミレニアムの頃まででしたでしょうか。
で、このメルロを飲んだところ・・濃密だし、メルロの雰囲気はバリバリに有るもののテクスチュアはまるで「ブルゴーニュワイン」ですし、この・・果実味を重視してはいないだろう?・・と思えるようなミネラリティに富んだ非常にドライなエキスの味わいには、
「・・この価格でこの味わいだと・・ブルゴーニュよりも・・こっちを選ぶ方は多くなるんじゃないか?」
とさえ・・感じました。

右岸のサンテミリオンG.C.C.のように、時に甘さを感じるようなものではありませんし、深~~~い粘土を感じさせるものでもありませんし、一時流行った・・
「まるでショコラ!」
みたいな・・ミシェル ロラン風なものでもありません。
非常にドライで、「赤さ」をしっかり内包した「やや黒みがかった果実」。粘性はしっかりありますが、その周りを石灰系ミネラリティがしっかりと囲っているかのようなテクスチュアです。
ある意味、そのミネラリティの包囲網が壊れてくると・・さらに異なる姿を見せてくれるはずですが、
「この、今の状態でも滅茶美味しい!」
と感じていただけること、受け合います。
そして何より、エキスがほんと素晴らしい!です。雑味無く、滑らかで非常に美しいメルロです。
「そんなメルロ、飲んだことある?」
と言いたいくらいです。普通なら、カベルネ・ソーヴィニョン入ってるんでしょ?・・と言ってるはずです。で、これこそが、
「ダルシュのテロワールだ!」
とジャン=バティスト・デュケインさんは言いたいのでしょう。
そして、醸造家の方のダヴィド・プーティさんについて調べてみましたら・・なんと・・
「ブルゴーニュスタイルでボルドーワインを造っている方」
と出て来ました!・・納得です。
ポテンシャルも相当高いし、ナチュラル感ばっちり、飲み心地最高の「シャトー・カズボンヌ A.O.C.グラーヴ」です。まぁ・・地区名のワインになります。ぜひ飲んで驚いてください。超お薦めです!
● 2022 les Parcellaires la Maceration V.d.F.Blanc
レ・パルセレール・ラ・マセラシオン・V.d.F.ブラン
【凄い完成度!・・マセラシオンしていますが、もはやオレンジがどうだとかマセラシオンが・・などと言ってる場合じゃない!・・果皮の美味しさをどれだけ白ワインに昇華出来たか・・だ!・・と、納得できる出来です!】

いや~・・驚くべき完成度です!
今やビオ系、自然派系では・・
「当然のごとく果皮浸漬する(マセラシオン)」
のが白ワイン造りの常とう手段になった感が有ります。
しかし・・noisy的には、
「え~・・・?・・本当に・・これで良いと思ってるの?」
と、造り手さんにも飲み手の方にもインポーターさんにも・・お尋ねしてみたいと常々思っていた訳ですよ。
だって・・
「余り・・美味しいと思わないから・・」
まぁ・・オレンジワインだからって果皮浸漬、果皮から抽出をしたからオレンジ色になるとは、限らない訳です。だから、そんなワインはオレンジワインだとは言わなかったりもします。で、オレンジ色になったからって・・だから何?・・
でも、オレンジワインでも、オレンジでは無いマセラシオンした白ワインでも、
「なんだか・・果実の風味は風前の灯火・・」
だし、
「So2を使わないのは良いけれど、酸っぱすぎるし余韻が何を飲んでもサワー」
だし、ウーロン茶と番茶にアルコール足したような味わいのものも散見される訳です。・・あぁ・・こんなこと書いてしまうと、後で何を言われるか判りませんが。

ところがです。グラーヴの地のソーヴィニヨンとセミヨンです。
すぐ近くはソーテルヌとバルザック、貴腐ワインの名産地です。
セミヨンは果皮が薄いので、川からの水分で貴腐が付きやすいと言う特徴が有ります。ソーヴィニヨンはセミヨンほど薄く無いですから、果皮の味わいも・・しっかり貴腐されるんですね。
このラ・マセラスィヨンは・・
「マセラシオンしているキュヴェであることを意識しないで良い!」
です。
その上で・・
「果皮の素晴らしい成分を活き活きと表情に表している素晴らしいノーズと味わいを楽しめる!」
んですね。
ほんのりとエキセントリックな金木犀的ノーズは、もしかしたら・・ほんのりと貴腐のニュアンスが入ったものかもしれませんが、そうとは確定できないほど・・自然でリアルなノーズです。
果皮が持つ、ちょっと煙なニュアンス・・素晴らしいですね~・・。そしてちょっと濃度を感じオイリーなノーズ・・これもポイント高い。
しかもボディがブ厚いです!・・タンニンをタンニンとしては認識できないほどに一体化していて・・きっとそれをボディとして感じているのでしょう。余韻も厚みが有り、ほんのりとあるビターな味わいが最後を引き締めてくれます。
いや・・これは評価高いです!・・飲んでください・・こんなの、
「・・そうは簡単に見つけられないタイプ!」
です。果皮の美味しさをたっぷり抽出した美しくも太い味わい!超お薦めです!
● 2022 Cepages d’Aantan Comme en 1900 V.d.F.Blanc
セパージュ・ダンタン・コム・オン・1900 V.d.F.ブラン
【なんと・・ラミーの半端無い密度感にも共通するような、ありとあらゆる要素を一粒の氷の中に閉じ込めたような・・圧巻の古代品種の白です!!】

悠久の時の流れ自体を味わっているかのような・・まるで物凄いエナジーと向き合っているのに気付いているのに、ただその周りの空間の一部に成り下がっている自分自身と向き合わされているんじゃないかと・・そんなことを思い浮かべた半端無いワインでした。
たしかに、物凄い・・例えようのない密度感があるのに、それはワイン=エナジーの一部なんだと理解させられるポテンシャルです。
noisy自身、ユベール・ラミーのワインに気付かされた時のように、そこには「密度」と言う・・その半端無いポテンシャルを図るべき尺度を自身は持っていなかったことに気付かされた訳ですが、それは・・
「超密植」
と言う、限りないヴィニュロンの努力の賜物で有ったと思います。
今、ジャン=バティスト・デュケインは、ボルドーの古代品種を復活させることで、
「プレ・フィロキセラ以前の時代のボルドーワインへの回帰」
を願っていると想像しています。
そして化学肥料が無かった時代、馬でしか耕作が出来なかった時代、現代の推奨品種以外の品種を普通にセパージュ出来た時代へと、向かい合う者をその時代に連れて行ってくれるのでしょう。

濃い黄色の、まるでゆったりとオルタナティブに揺れるかのような、粘土と石灰が連れて来る、このグラーヴの地のミネラリティこそが、グラスの中の液体をゆったりと粘っこく揺らして教えてくれます。
膨大な情報が詰め込まれている・・そう感じるしか無い・・その感覚を得られると言うことが、このワインのポテンシャルを証明する・・ただ一つの知見です。
もちろん、オイリーだとか、ミネラリティが半端無いとか、柑橘の表情が素晴らしいとか多くの有機物の表情は半端無い・・言うならば・・何でも言い出せると思いますが、この、古代品種を多く含む「ソーヴィニヨン・グリ」のワインには、そんなご紹介の言葉はきっと不足でしかありません。
ましてや、「このワインはオレンジワインである」とご紹介されているショップさんもあるようですが、
ワイン屋的に言うならば、もう少し寝かせた方がより良いだろうと・・言うべきでしょう。
しかし、この途方もない・・液体の分子に抱かれた古代品種たちのエキスを口に頬張れば、その途方も無いマンモスな要素の、今持っているシンプルな振る舞いだけで、ワインファンをたっぷり楽しませてくれるはずです。
ワインとは何なのか・・そうも考えますが、きっと葡萄の記憶としての遺伝子の導きと、ヴィニュロン、エノロジストの意識と絶え間ない努力こそが・・そして飲み手が持つ・・そのエナジーを受容しよう、受容したいと感じる心が生むほんの短い時のシーンのことなんだろうと・・感じました。
素晴らしいワインです。ぜひ多くの方に飲んでいただきたいと願っています。超お薦めです!
● 2022 Feldspath Terroir de Peyron Grave Blanc
フェルドシュパート・テロワール・ド・ペイロン・グラーヴ・ブラン
【セミヨンと並び賞されるグラーヴのソーヴィニヨンで、樽を使わずアンフォラ仕込みでサン=ピエール・ド・モンの南のペロンのテロワールを表現したワイン。激旨です!】

ブルゴーニュと違ってボルドーは河の下流の、比較的に傍に畑が有りますから・・川から流れて来た堆積物によって、かなり地質が異なります。
良く言うのは、川は仮に真っすぐ流れていたとしても、自然に任せているといずれその流れは大きく蛇行する・・訳ですね。で、蛇行した内側のコーナーと外側のコーナーでは流れるスピードが異なる・・外側の方が早いので、堆積物も内側はゆっくりな分、粒子の細かなものが溜まり、外側はそれよりも大きなものが溜まる・・と言うものです。
また、上流と下流でも・・異なります。上流はその粒はさらに大きく、下流になるほど小さくなる・・まぁ、三角州は砂とか粘土とかの合体したものが多いです。それが長い年月をかけて平野になったり・・するのでしょう。
このワインはシャトー・カズボンヌのレ・パルセレールと言うシリーズのものになります。要は、
「区画・畑」
と言うことですから、ブルゴーニュに見立ててクリマと思っていただけば良いかと思います。
品種はソーヴィニヨン・ブランです。このサン=ピエール・ド・モンはもちろん、ガロンヌ川の・・下流に向かって左側に有ります。ソーテルヌと同じ左岸ですが、サン=ピエール・ド・モンを過ぎるとガロンヌ川は北西に大きく向きを変え、バルザックやソーテルヌに向かいます。
土壌は砂が多いはずですよね。そして粘土も少々。おそらくその辺も有って、
「砂岩で作ったアンフォラ」
を使用しているのでしょう。左岸だけに・・・

静けさ・・と言いますか、瑞々しさと言いますか・・こちらも「1900」ほどでは有りませんが、素晴らしい密度を持ち、瑞々しさが半端無いです。
時にソーヴィニヨンがみせる「猫のお小水」的なネガティヴなアロマが一切無く、日照を良く浴びた葡萄が持つ黄色いニュアンスが冷涼感を湛えている感覚で受け取れます。
砂質・・が多く、粘土はそこまで多く無いと言うテロワール・・いや、パルセルかな?・・なのは良く伝わって来ます・・・その上で、
「グラーヴだからこそ、充実した密度を得た葡萄になる!」
と言うのも判ります。
このグラーヴの対岸ですとか、もう少し下流に行ったボルドー市の対岸辺りは、アントル・ドゥー・メールと呼ばれる地域ですが・・ここは水が多い地域なので、どうしても出来るワインの果実感は緩く淡いものになり、密度も低くなってしまいます。
このガロンヌ川沿いの最高峰のひとつはもちろん、ボルドー市南西のシャトー・オー=ブリオンでしょう。赤も白も凄いですが、オー=ブリオン・ブラン・・凄いですよね。このサン=ピエール・ド・モンのペイロン(ペロン)からは50kmほど離れています。昔はグラ―ヴでひとくくりだったと思いますが、いつの間にか「ペサック=レオニャン」になってしまいました。
そしてもちろん、白の最高峰のもう一つはイケムですね。イケムは内陸なのでサン=ピエール・ド・モンからは真西に7~8km。結構近いです。
そんな土地柄もあってか、このソーヴィニヨンもポテンシャル高いです。グラーヴのソーヴィニヨンとしては、非常に高く評価出来ます。そして何より、
「ナチュールだが、ナチュールナチュールしていない!」
「普通の白ワインとして滅茶美味しく飲める!」
「しかも・・良くあるタイプの・・立体感が余り無いボルドーとは大違いで・・造形が深い!」
「その割に押しつけがましく無く、しっとりとして、身体に馴染むように入って来る!」
のが素晴らしいと思うポイントです。
特に砂で出来たアンフォラ使用が良いのでしょう。アンフォラで発酵、熟成までやっているようです。ちょっと目から鱗のボルドーのソーヴィニヨンです。リーズナブルでも有ります。飲んでみてください。超お薦めです!
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