
シャトー・カロン=セギュールの有るサンテステフ村から直線距離で15キロほど北西に向かったジロンド川添いのヴァレイラック村のシャトーです。一応クリュ・ブルジョワにランクされているシャトーですね。もう大西洋まで・・つまりジロンドの河口までは直線距離で20キロメートルほどです。
ブルゴーニュの「丘のワイン」と違って、まぁ・・確かにボルドーも「丘」かもしれませんが、大河添いに存在していますので、「石灰のニュアンスに長けた味わい」になることの少ないのがボルドーです。なので、熟成の仕方もかなり違っているというのがnoisy 的な認識です。
いや・・もちろんですが、石灰系ミネラリティが無い・・と言ってるのではなくて、ブルゴーニュのような海底隆起による基岩層を持たない・・と言うことなんですね。川ですから・・上流からの堆積が畑の基礎になる訳です。
なので下流では、大河のカーブの内側が粘土層になり、外側がより大きな粒子の砂になるんですね・・。川の曲がりの内側と外側ではスピードが違うので、堆積する成分が違う・・と言うことになります。
なので、左から右にカーブしているボルドーでは、右岸が粘土が基本、砂岩が砂、石が基本になります。もっとも、古い年代からずっと同じ曲がりだったとは言えないので、あくまで一般的な話しにはなりますが、これで結構・・色んな謎が解けちゃう訳ですね・・。フランスにはボルドーの3つの川、ロワール川、ローヌ川など、ワインに関係している川が結構ありますんで、そんな目で見てみると面白いと思いますよ。
実は今回、このシャトー・ル・タンプルのテイスティングは、2010年、2009年、2002年と3ヴィンテージを行っています。で、まだ暑い季節に飲んでも美味しいのが2010年!・・と言う判断をしました・・・と言うか、2009年、2002年も良いんですが、「ある意味で・・」後回しとさせていただいてます。その意味は・・後のお楽しみと言うことで・・。
まだ若さの消えないタイミングの左岸系ボルドーです。この若さが消えない・・と言うのも、ジロンド下流のブルジョワ級には結構重要でして、前述のようにブルゴーニュバランスでは有りませんので、
「石灰系ミネラリティを根底に強く持っている訳では無いので、その代役をする存在が必要」
なんですね・・。それが「タンニン」です。
下手な輸入や扱いのエージェントさんだと、熱による劣化でタンニンが壊れてしまうんですね。なので「不味いボルドー」が巷に氾濫している訳です。今回のこのシャトー・ル・テンプルはフィネスさんが入れてますんで、その辺は結構安心出来ます・・と言うか、確認済ですんで大丈夫です。壊れてないどころか、かなり美しい、しなやかで目の詰まった、甘味さえ感じるタンニンです。
この渋いはずのタンニンがむしろ甘味に変わっちゃうのが面白いところ・・渋柿を焼酎で拭いてしばらくおくと何故か滅茶甘くなっちゃう・・みたいなものでしょうか・・違うか?・・
で、その美味しいタンニンが有るかどうか・・が安目のボルドーワインを見るときに必要だったりするんです。
酸の構成も非常に良いです。2010年・・かなり良かったようで、真ん丸とは言いませんが、それに近いようなパレットを描けます。勿論、残糖分に頼っておらず、非常にドライです。しかし旨みをしっかり構成出来ているので、美味しい果実感も有り、ワインのダイナミックさもできてるんですね。紫の果実が実に良い感じです。
おまけにこのまだ暑さの残る季節に、
「このボルドーは必ず18度で飲んでください!」
などと言ったとすると、皆さんに、
「noisy!・・気が振れたか?・・それとも老いさらばえたか?」
などと言われかねません。
そう・・低めの温度・・・そうですね、14度位から飲み始めても非常に旨いんですよ。しなやかなタンニンがすぐに甘味に変えてくれちゃいますので、滑らかで旨いです。
勿論ですが、酸の構成は「丸に近い」と言っても、ブルゴーニュのように「強く低域から高域までしっかりした酸」では有りません。ボルドーですからね・・そこまで強くは無い訳です。なのでむしろ、
「・・酸っぱく無くて美味しい!」
などとおっしゃる方も多いんじゃないかと思います。
皆さんもnoisyにも・・意外にも・・美味しいと言っていただけるブルジョワ級のボルドーです。是非飲んでみてください。お勧めします!・・あ、コンディションの悪いお店で購入して、
「このワイン、前に飲んで不味かったはずなのに・・何でお勧めなの?」
「・・同じワイン・・千円台で売ってるけど・・?」
とは言わないでくださいね。同じワインでも輸入者、販売者が変わると別物です。まぁ・・飲み手も変わると判断も変わりますけど!・・どうぞよろしくお願いいたします。