
例えばテロワール論争が有ります。
「本当にテロワールは有るか?」
と言うものです。
また、それに加えてワインにミネラルが有るか?と、それ自体に疑問を持たれる方もいらっしゃいます。
「ワインにミネラルは存在しない!」
と断言している専門家もいます。
本当のところはどうでしょうか?
テロワールが存在するか?・・は後に回すとして、「ワインにミネラルは存在するか?」と聞かれれば、noisy なら即答します。
「当たり前に存在します。」
と言うでしょう。
そりゃぁそうです。世の中には「水」が存在します。自然な水ならば、そのすべてが、
「ミネラル・ウォーター」
です。何かしらのミネラル分を含んだ水だからです。
もし、ミネラルを含まない水が有るとしたら、
「それは人為的に加工された純水・・もしくは、人間が暮らせる環境では無いところに存在するかもしれない水」
でしょう。
もし地球内部で核融合が起こっているとするならば、その近くに純水が存在するかもしれません。しかしながら、もしその純水が地表に出てくるようなことがあるのなら、地殻を通った時にミネラル・ウォーターに変質してしまいます。
そのミネラル・ウォーターを植物は根から吸収しています。吸収されたミネラリティは植物の組織に回りますから、当然ながら葡萄の実にも含まれます。
その葡萄の実を使用して、何も足さず、澱だけ引いてワインが造られます。なので、
「ミネラル分は全て澱に含まれ、ワインには移行しない」
のであれば、ワインにはミネラリティは無い・・と言うことになりますが、とてもじゃないですが、そんな論理は誰が見ても聞いても間違いで有ると理解できるでしょう。
テロワールは無いか?・・と問うには、ワインの歴史も関与してきます。テロワールの定義が曖昧なままではその問いには答えられもしません。
テロワールとは、地域の気候や風土、土壌の組成も含まれますが、そこに関与する人も大きな意味では含まれます。
もしかするとテロワールを定義する上で一番の影響が有るのは「人」であることは間違い無いでしょう。「人」以外の定義部分も、人が変えることさえできるんですから。
しかし、ジュヴレ=シャンベルタンは誰がどうやっても、他のアペラシオンに似た部分が有ったとしてもジュヴレでしょう。それが共通認識で有り、その共通認識こそがテロワールと言う言葉を生んだ一因だとも言えます。そうでなければ、コンティ王子とポンパドール夫人のロマネ=コンティ争奪闘争は起こらなかった訳ですから・・。テロワールは「ワインの、もしくはそれを生み出す畑を理解すべき共通認識である」のかもしれません。
で、本題のこのダニエル・ピッチニンのピノ・ネーロです。ロマネ=コンティとは全く共通項が見当たらない・・と言うか、
「本当に同じ品種なのか?」
とさえ思ってしまうような味わいです。
もしテロワールが無いので有れば、少なくとも似通った何かを見つけられなければ、正しくない理解かなと言わざるを得ません。
むしろ、
「赤味が多く白い石灰分の多い、とてもエレガントなヴァルポリチェッラ」
と思っていただくのが、noisy 的にも非常に都合が良く、お客様にも理解していただきやすいんですね。
ですので、とても美味しいです。ヴァルポリチェッラよりも僅かに冷涼な酸味が有るかもしれず、それがピノ・ネーロの特徴が出た部分でしょう。
そして、テロワールとしてのヴェネトの畑が持つヴァルポリチェッラ的要素が非常に良く出ているワインであり、しかも素晴らしく上質なんですね。非常に・・ふくよかで滑らか、マッチョには全くならず、エレガントさも持つヴァルポリチェッラで有る・・と考えていただくのが、まだこのワインを飲んだことの無い方への説明として判りやすいと思います。
美味しいピノ・ネーロでした。人気があるのも判ります・・テロワールが有るかどうかは別においても・・です。ぜひ共通言語、共通認識でお話ししましょう!お勧めします!