
消費税関係の雑務で謀殺される中、それでもテイスティングは毎日続けてはいても、タイミングと言うものは本当に重なるものでして、
「未テイスティングワインが滅茶苦茶沢山あることに切迫感を感じる」
状況でして、他のワインと同様、ついさっき店で開けたこの2014年のモレ1級クロ・デ・ゾルムのレヴュー書きをしています。
そんなものですから、いつもとは異なる写真になっています。ご了承ください。
しっかし、「淡いですね~!」・・滅茶淡い色合いです。ジョルジュがやっていた頃の2001年と(角度は違いますが)比較してみてください。全然違いますよね。
味わいは「超絶に繊細」と言える見事なエキスの味わいです。この2014年、クロ=サン=ドニ・グラン・クリュはティム・アトキン氏によって95ポイントと言う凄い評価をされています。同じ年の2014年のクロ・デ・ゾルムですから、期待は大きくなるでしょう?
で、ドメーヌ・ジョルジュ・リニエの造りは、かのアンリ・ジャイエさんが発明したとされる「発効前の低温での漬け込み」を数日行っています。なので、アンリ・ジャイエ系の味わいなのかと思いきや・・
「全然違う」
んですよね~。どちらかと言えばD.R.C.やジョルジュ=ミュヌレ=ジブールと同様のエキス系です。低温浸漬後の本発酵時の温度経過が違うのでしょう。
しかし、エキスの味わいは・・
「滅茶苦茶強い!」
んですね~・・。
そして、口にした瞬間に、
「(滅茶繊細!・・そして結構饒舌!)」
と思われるに違い在りません。こんなに淡い色合いをしていながらね~・・この子は!
まぁ、素晴らしい1級です。惜しむらくは・・まだ全開には至らない・・と言うことかと思いますが、PKさん曰く「秀作年に造れば特級の水準に至ることも少なくない」のがこのクロ・デ・ゾルムなんですね。それもクロ・ド・ラ・ロシュの真下に接してますから。
皆さんも知りたいでしょうから、発禁本・・いや、絶版本の明日香出版社版、「ブルゴーニュ」ロバート・M・パーカー著から引用させていただきましょうか。
「モレ=サン=ドニの1級畑のなかで、クロ・デ・ゾルムは最上クラスにはいる。村の北にある畑だが、格別に芳醇でフルなワインになる。ジョルジュ・ルーミエ級の飛びきりの名手が、しかも1985年のような秀作年につくれば、特級の水準にいたることも少なくない。ニュイ=サン=ジョルジュのメゾン・フェヴレが、購入したぶどうをもとに生産するクロ・デ・ゾルムも素晴らしかった。」
ね?・・どうでしょう。・・しかも、3.1ヘクタールのクロ・デ・ゾルムの畑のうち、1.9ヘクタールを所有しているのがこのジョルル・リニエさんで、しかもその生産量の半分をネゴシアンに販売してきた事実から言うと、
「そのPKさんが素晴らしかったと言うメゾン・フェヴレのクロ・デ・ゾルムは・・一体誰が育てた葡萄だったのでしょう?」
と言う問いの答えに違い無い・・とも思えますよね~。
そして、2014年はグレートイヤーですし、ティム・アトキン氏もクロ=サン=ドニに95ポイント付けていることと考え併せれば、
「6千円代で買える・・凄いワインってことかも!」
とお判りいただけるでしょう。
もしどうしても早めに飲まれるのでしたら、低めの温度では無く、セラーから早めに出して少し暖かめで飲み始めてください。かなりのポテンシャルで有ることは簡単に判ると思います。これは仕入れておくべき、貴重な1級です。お勧めします!
以下は以前のレヴューです。
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【とにかく最低1本は仕入れておきましょう!!半端無くドライな味わいは熟成で官能的な甘さを手に入れています!】
昨年、今年春とご案内させていただいた2001年モレ=サン=ドニ1級はクロ・デ・ゾルムです。
ちょうど良い熟が入ってきていて、何とも形容しがたいブルゴーニュ・ピノ・ノワールならではの「官能的な甘さ」が出てきています。
またグラン・クリュ・クロ・ド・ラ・ロシュ直下の畑ですので、とても似たニュアンスを持っていますから、石や岩の鉱物的要素が官能さに複雑性をもたらしています。岩、大きな石のようなミネラリティにナトリウム系のすこしグラのあるミネラリティが混じるようなニュアンスです。プティ・クロ・ド・ラ・ロシュと言って良いような味わいですが、クロ・デ・ゾルムは、より赤い土のニュアンスが感じられるかなと思います。クロ・ド・ラ・ロシュの方がもう少し乾いた感じでしょう。
ジョルジュ・リニエさんのワインは非常に綺麗なんですが、リリース直後はやや硬く、まったく「甘み」を感じさせないようなハードな味わいなので、どうもとっつきにくい・・んですね。
ところが、年を追うごとに旨みを増し、成分が重合したり分離したり・・を繰り返し、硬い殻が壊れ始めると・・
「うわ~・・こりゃ~旨い!」
と。。なってしまうんですね。
そりゃぁそうです・・このクロ・デ・ゾルムは2001年。収穫から14年目です。
ブルゴーニュ・ピノ・ノワールのひとつの目安は安易に言ってしまえば15年ほど・・と考えています。ここがようやく美味しく飲めるようになるという分岐点かな・・と。勿論、ヴィンテージの要素や畑で変わってきますが、例えばシャンボール=ミュジニーのワインなどは基本的にもっと熟成年数が必要です。北隣のモレ=サン=ドニになりますと、シャンボールに比べて解れ始めが早いので、結構早目から美味しく飲めちゃうんですね。
このクロ・デ・ゾルムはクロ・ド・ラ・ロシュに接していますんで、それでもやや時間が掛かるんですよ。・・で、ようやっと「花が咲きつつある」状況になってきたんですね。半端無いドライな赤ワインだったのが、熟成によってほんのり甘くて複雑でエロい・・しかも・・
「6千円・・って・・今時1級畑でそんなの有りか?」
と思えるほどですよね!
今回は前回よりは余裕は有りますが、そうは言っても追加できる状況では有りません。是非この機会に今飲んでも充分に旨さの判る1級クロ・デ・ゾルムを入手してください!超お奨めです!

■■oisyテイスティングコメント(注:このコメントは2001年の村名のものです。)
2001 Morey-Saint-Denis Georges Lignier 「ワインの醍醐味」について考えてみたいと思います。ごく一般的な給与所得のワインラヴァーは、多くても大体週に1、2本、1500円から3000円くらいのワインを選ぶかもしれません。大雑把に月4週だったとして6本くらいでしょうか。そうすると月に平均して14000円くらいの出費になります。これだとちょっと高い携帯代くらいですね。そうなるともう一本くらい熟成用、記念日用等に使っても良いかな、となるかもしれません。
5~6000円くらいなら、なかなかのポテンシャルのワインが買えるかもしれない。10000円くらいなら良い1級、物によってはグラン・クリュクラスのワインが手に入るかもしれない。この計画通りなら月3万くらいあれば充実したワインライフが送れそうです。(実際はなかなかこんな風に上手くはいかないと思いますが。。。)
しかしやはりデイリーの価格帯で、美味しいワインは確かにあるけれど「チョチョぎれる程の感動」を与えてくれる程のものは中々見つかりません。そうなってくるとやっぱり5000円から10000円のレンジにかける期待はかなり高くなってくると思います。
しかしリリースしたてのワインを飲むのは幼児虐待だという声もあるように、複雑怪奇なワインの姿の片鱗にしか触れることができません。そうなってくるとセラーの奥底にしまい込まざるを得ない。そして年月が経ちそのワインを忘れに忘れ去ったある日、ふと目につく。
(あれ、このワインそろそろ良いんじゃないか?)
あなたはきっとものすごく迷う。本当に今開けて良いものかこれだけ楽しみだったワインがブショネだったらどうしよう。。。と。
そこには誰もアドバイスをくれるものはいない。いるのはご相伴にあやかろうとするワインという名の赤い血に飢えたハイエナ達だけだ。彼らは「ハッ、ハッ」と鼻息を荒し、今か今かと人が苦労して手に入れ、大事な育てたワインの前に群がっている。。。
あなたは覚悟を決めなければならない。自分の分身である我が子を彼らに差し出すと。あなたの汗と涙の結晶で育て上げた彼らを生贄に。。。
と、まあこれは良くも悪くもワイン会で良く見る光景ですが。(Oisyもハイエナの群れのうちの一匹ですが)しかし、
自分が目星をかけたワイン達が熟成を経て妖艶な姿を纏い始めた時に飲む、これが最も「ワインの醍醐味」という意見に異論は少ないと思います。そこに至るまでの苦労たるや想像に難くありません。
でもやっぱり人間はできる事なら楽をしたい。できれば熟成の期間はショートカットしたいというところが本音でもあります。去年の2000年ルモワスネのブルゴーニュ・ルージュ・キュヴェ・スペスィヤルが爆発大ヒットしたのもそのような側面もあったのでしょう。
やっと本題に入りますが、このジョルジュ・リニエのモレ・サン・ドニ、かなり熟しています。熟れ熟れのムンムンです。文句のつけようなく美味しいです。かのルモワスネ2000年は格落ちの可能性がありました。村名レベルの2000、2001年は今かなり良い時期に入って来ていると言えると思います。もちろんリニエのモレの方はこれからさらに開く方向に向かって行くでしょう。
しかも熟成ショートカット付きでこのお値段です。昨今ではありえないバーゲンセールのような価格であります。確実に「買いに走るべき」ワインです。飢えたブルゴーニュファンの喉を癒すのは間違いありません。
ぜひ!120%おススメのワインです!!ウマーイ!!