
何と、ボルドーとローヌを混ぜちゃいました~!・・と言う、ちょっと安易に軽いノリとも思えるようなワインのご紹介です。
ただ、そうは言っても・・3級格付けのシャトーとポール・ジャブレのジョイントですから、「安易」と一気にやっつけて遠ざけるのもどうかな・・と。きっと同じお気持ちの方も多いでしょうし、日本人は「改革」と称して伝来のものと古来のものを良い感じに合わせて新しいものを作り上げてしまう気質も有りますから、
「ボルドー左岸とローヌのシラーか~・・」
と、すでに頭の中で想像を始めちゃってるんじゃないかと思うんですね。
ラーメンなどは、中国から伝来したもの・・とされていますが、今ではもう・・完全な日本食。しかも地方で色々なアレンジをされて、地方色も豊かですし、今もまだ進化中とも言えるかと思います。
偉大なる農業国であるフランスはやはり伝統を重んじる部分が多く、ワインもまた、
「知ってて当然」
とばかりに、エチケット(ラベル)にさえ、詳細なことを記載しません。
まぁ・・・日本でも業界でトップレベルのお店でも、看板さえ無いとか、例え有っても名前だけ・・のようなことは散見されますが、シャトー・ラフィットを知ってて当たり前で有り、シャンベルタンを知ってて当たり前なんですね。そういう建前なんです。だから、
「Chambertin」
と書いてあっても「Pinot Noirで造りました」とか「ブルゴーニュのワインです」などとは書いて無いんです。
シャトー・ラフィットも、その名前しか書いてません・・格付けのトップです・・などとも絶対に書かないし、ただアペラシオンだけは規定されてますから、そこだけを書いてあるんですね。
そんな封建的とさえ思えるような事態にあるフレンチワインの世界にあって、著名なメーカーが、こんなワインを造っちゃったわけです。
さらには、
「昔はこっそりと・・ボルドーのシャトーワインにローヌのキュヴェを混ぜることがあった」
みたいなことが言われています。天候が悪くて良い葡萄が少ない時、シャトーのオーナーたちが挙ってローヌのワインを買い求めたと言うのは伝説になっています。
なので、言ってしまえばまるっきり見当違いの出来事と言う訳でもないのかもしれません。
このエヴィデンスですが、非常にしっかりした紫の強い色調です。ミネラリティもしっかり存在し、香りのスピードも速い、自然派的なニュアンスも在ります。濃い色調から想像されるとおり、比較濃密な味わいですが、ダレてしまわないのは自然派的なアプローチをした葡萄も使っているからでしょう。その辺りはポール・ジャブレが影響していると思います。
で、印象がですね・・
「なんだよ~・・そのまんまじゃん!」
と言われてしまいそうですが、
「ボルドー左岸のニュアンスをアロマティックに香らせ、やや細くタイトになりがちなボルドー左岸的ボディをローヌのシラーで美しく膨らませている感じ」
に仕上がってるんですね~・・。当たり前っちゃ当たり前ですね・・。
西洋杉のニュアンスがトップノーズに感じられます。土っぽく無く、スパイスも脳髄に「ズギュン!」と鋭角に来るようなものでは無く、穏やかながら、やや丸みを感じさせるものです。良い年の左岸のワインに右岸のメルロを足したような感じに近いです。
中域はそれでもやや締まり気味で、ローヌのワインの「膨らめるだけ膨らんだ」感じのボディ感では有りませんで、とても良い感じです。
フルーツは密集していて、紫、濃い赤、やや黒い果実がたっぷりです。余韻もそんな果実感を伴いつつ、太さを感じさせつつ、徐々にエキシーなものになり消えて行きます。タンニンもしっかり有り、大柄で外交的な味わいです。
これからの季節、やや低めの温度で飲んでも行けますので、焼肉とかステーキとか、油の大目な赤い肉系にはピッタリでしょう。質感も高めですから、ダラっとすぐに拡散してしまう安いローヌワインを飲んでいるような結果にはならないです。
価格も・・調べてもらえば判りますが、かなりリーズナブルです。季節的にも重宝な、アヴァンギャルドなブレンドをしたフレンチワイン・・是非ご検討くださいませ。
P.S.このような複合産地のワインを扱う予定が無かったので、コラムトップ・グラフィック内には「ボルドー」と記載していますが、「ボルドーとローヌのブレンド」になります。ご了承くださいませ。