● リアルワインガイドコーディネーション!元四恩醸造の小林剛士さんが始められた室伏ワイナリーの限定キュヴェのご案内です!
数在る日本ワインの醸造者に有って、確固たる信念をお持ちの小林さんとリアルワインガイドのコラボでリリースされた限定キュヴェのご案内です。
やはりワインを造ると言うことはスキルの積み上げが重要なんでしょう。最初はどんな人でも初心者ですから、やってみて・・これはいかんな・・これはいいなと試行錯誤の連続。テイスティングするとそんな「つよぽん」さんがどうやってここまで来たかが伝わってくるような出来です。
ワインは様々な品種を混ぜた、外見からは「ロゼ」の色彩ですが、飲めば一筋縄では行かないですよ。酸の複雑さを積み上げ、ミネラリティでコートした旨いロゼです。
「値上げしたくない!」
と、価格もめちゃリーズナブルなんですね。
今後も白や赤をリリース予定だそうで、今のところはこの「外見はロゼ」を是非飲んでみていただきたい見事な味わいです!
◆◆ リアルワインガイドより
●ついにREAL WINE GUIDE流通システムに登場!室伏ワイナリー(共栄堂、元四恩醸造)!!
小林剛士さん(通称つよぽん)が赤字覚悟で、この流通システム専用のオリジナルワインを造ってくれました
●クオリティはそのままに、他のキュヴェのワイナリー直販価格と同じ価格での販売が実現しました。
「どうしても販売価格は上げたくない。けれど今後の日本ワイン界にこの流通システムは必要不可欠」
という小林さんの信念と心意気から生まれたのです。
●それは日本ワイン界の重要人物の一人が醸す、ゆるうま~エキス系ワイン。その記念すべき流通システム限定ワイン第一弾となるのは、2023年のロゼワイン。ウマ旨ロゼです。SO2ゼロです。
他では販売していません!そしてこれは第二弾(白が出来ました!)、第三弾……と続いていきます。今後どんなワインが登場するかは、待ってのお楽しみ!乞うご期待です!!このシステムを通してのみ販売されるワインを、優良インポーター2社(株式会社いろはわいん、株式会社エイ・エム・ズィー)が完璧な品質管理のもとみなさまにお届けします。
文:リアルワインガイド副編集長 斉藤真理
◆ ワイナリー情報 ◆
室伏ワイナリー(山梨県・山梨市)
室伏(むろふし)ワイナリーは日本ワインの品質を向上させた重要人物の一人である小林剛士さん(通称つよぽん)が2021年に山梨市牧丘町室伏に立ち上げた、最大生産規模15万本のキャパシティを持つ中規模ワイナリー。小林さんは四恩醸造時代の2007年頃に衝撃のゆるうま~ワインを恐らく日本で初めて造り、日本ワインの新たな魅力を大いに広めた方。そういった点で間違いなく先駆者のひとりである。
そんなカリスマ的人気を博してきた小林さんが、日本ワイン界を活性化し、さらに発展させるために新たな挑戦の場として選んだのが、高品質なワインを造る中規模ワイナリーを興すこと。
日本ワインを健全に広めるには「誰もが簡単に入手できて、しかも美味しい」というワインの存在が重要だが、現状ではあまりに少ない。優良生産者のワインは高品質だが生産本数が少なく、常に入手困難。一方で入手しやすい中規模生産者のワインは、一概には言えないもののイマイチ(以前から品質に全く進歩がない)なものも多く、そのうえ温度管理がされていない卸問屋経由で町の酒屋さんで扱われていたりする。そういうワインを愛好家は買わないし、一般の方が飲んでも美味しいワケがない。
その一方で、つよぽん印の美味しいワインがいつでも簡単に手に入るということは、希少性がなくなるということでもある。しかし彼に迷いは一切ない。日本ワインを健全に広めるために自分がやるべきことを果たすのみ、と覚悟を決めているのだ。
◆ ワイナリーのコンセプト ◆
小林さんが目指すのは究極のテーブルワイン。若い人やワイン入門編として飲んでもらうことが大切なので、飲み心地が柔らかくスッ~と飲めてしまう、いわゆる飲みやすいもの。そして、これはワインを飲み慣れた愛好家が求めるものでもある。価格の安さに徹底的にこだわるのも若い人たちに気軽に飲んで欲しいからで、このご時世でも高いもので税込み2.420円というお値段。そしてこの信念はワイン造りをスタートさせた時から全く変わっていない。
室伏ワイナリーは自社畑のブドウと栽培農家からの買いブドウを全て混ぜて使う。それはどちらのブドウも同等に高品質なので分ける必要がないから。どの品種をどのようにブレンドして目指す味わいを引き出すかは小林さんの腕の見せどころであり、これぞセンスが光るところ。
そして、ブドウの買い取り価格も相場より高く設定している。それは少しでも長く栽培農家を続けてもらうためでもあり、ワイナリーと栽培農家は全くの同等という考えから来るもの。小林さんはその年に出来たワインを栽培農家の方へ真っ先に送る。彼らに美味しいと納得してもらえない限り、良いブドウが育つはずがないからだ。
彼の考えの根本にあるのは「自分は農夫である」ということ。これは盟友でもある小山田幸紀さん(ドメーヌ オヤマダ)と全く同じ考えで、彼らはともにペイザナ農業法人の理事であり、ブドウだけではなく米や野菜、果樹、養鶏なども手掛けている。
ちなみに現在ワイナリーは、つよぽんを旗頭に小林さんの実兄である小林順さん、廣瀬信之さんの少数精鋭で営まれている。感性と理論をバランス良く持ち合わせ、とことん深く考え抜く。そこに実行力も伴うから彼の言葉や行動には重みがあり、力が宿る。しかしワインには小難しさなど一切なく、ただただ飲んで美味しいもの。そんな彼のワインをRWG流通システムにて取り扱えることは、私たちにとっても思いっきりワクワクすることなのです。
実は小林さんはこの流通システムの企画段階からこの仕組みの重要性を思いっきり理解し、共感・賛同してくれていたが、どうしても販売価格が上がってしまうため参加を見送っていた。その問題をどうにかクリアすべく、数年かけて小林さんとRWGで何回も意見交換・打ち合わせを重ねた結果、この流通システム専用のキュヴェをクオリティはそのままに採算度外視で造っていただくことに決着。
「どうしても販売価格は上げたくないが、今後の日本ワイン界にこの流通システムは必要不可欠」
という小林さんの信念と心意気に改めて敬意を表したい。
◆ 小林剛士 ◆
1976年生まれ。山梨大学を卒業後、勝沼の老舗ワイナリーに入社し栽培を担当。その後、横浜市にある四恩学園が2007年に山梨市牧丘町にワイナリーを立ち上げる際に強く乞われ栽培・醸造長に就任。小林さんがワイナリーのあらゆる企画を立ててオープンさせ、ほぼ一人で切り盛りしていた。ちなみにその当時から新しい発想、柔軟な発想を持ち、良い意味で過去のものをぶち壊すことを厭わないという考えの持ち主。
とはいえ人柄は至って温厚で、良い人オーラを振りまいている。そんな彼が生み出したのが「ゆるうま~」という恐らく日本で初めてのワインのスタイル。四恩醸造初期にすでにその味わいを完成させ、一躍大人気生産者のひとりとして知られる存在に。四恩醸造退社後の2016年には共栄堂を立ち上げ、委託醸造にてワイン造りを続けてきた。
そしてついに機は熟した!とばかりに2021年に室伏ワイナリーをスタートさせ、現在に至る。
◆◆ AMZさんより
[MUROFUSHI WINERY]室伏ワイナリー (山梨県山梨市牧丘町室伏725)
2024年12月16日(月) 13:00 訪問
■室伏ワイナリーを訪ねて

山梨県の勝沼で高速道路を下り、フルーツラインと名付けられた道を北上する。やがて、牧丘町室伏という山際の開けた緑の中に、ぽつんと建つモダンな建物が目に飛び込んでくる。それが室伏ワイナリーだ。外観はシンプルで洗練されており、初めて訪れる者にはとてもワイナリーには見えないだろう。
ワイナリーは丘の上に位置しており、山梨の街並みを一望できる。一帯は街灯もないので夜景や星空は素晴らしいに違いない。その奥には、富士山が堂々と姿を見せる。この日は冬の訪れを感じさせる冷たく澄んだ空気と、どこまでも続く真っ青な空で、はっきりとその雄姿を見る事ができた。この景色を見ながら仕事が出来る事は日本人なら誰もがうらやましく思える事なのかもしれない。ワイナリーの前に広がる場所には遮るもののない太陽の光が、穏やかに大地を照らしている。その心地よさに、思わず深呼吸をしたくなる。
今回、ワイン評価誌『リアルワインガイド』編集長の徳丸さんのご紹介により、大人気ワイナリーである室伏ワイナリーのワインを取り扱わせて頂けることになった。ただし、室伏ワイナリーのレギュラー商品は非常に人気が高く、既存の顧客への配慮もあって割り当ては難しい状況だ。そこで、今回は特別に我々のための新キュヴェを醸造していただくことになった。
この新プロジェクトは、室伏ワイナリーの小林さんと徳丸さんとの間に築かれた強い信頼関係があってこそ実現したものである。さらに、『リアルワインガイド』が提唱する日本ワインの「新流通システム」に賛同するインポーターの中から、今回、徳丸さんが選んだのは『いろはわいん』さんと、我々『エイ・エム・ズィー』である。

このプロジェクトは、日本ワインの「新流通システム」の行方を占う上でも非常に重要な意味を持つものだ。共同販売を行う『いろはわいん』の魅力は、独自の視点で選び抜かれた生産者との深い繋がりにある。単にワインを輸入するだけでなく、生産者の「哲学」や「物語」を伝えることに重きを置いており、取り扱うワインはいずれも個性的だ。それぞれのボトルには土地の風土や造り手の想いが色濃く反映されており、『いろはわいん』はまさに日本を代表するインポーターのひとつと言えるだろう。同社社長の寺田さんは、温和で優しい人柄に加え、広い人脈と長いキャリアで培った確かな知識と経験を持つ人物だ。その存在感は、今後のワイン業界において重要なポジションを占めていると言える。競争の激しいワイン業界においてゼロから会社を立ち上げ、15年間も経営を続けてきた実績は、確かな実力の証だ。
ワイナリーの裏手にある外階段を上がり、2階で出迎えてくれたのは、ワイナリーの責任者である小林剛士(こばやしつよし)さんと社員の広瀬さんだった。小林さんは周りからは親しみを込めて“つよぽん”と呼ばれている。この日は不在だったが、小林さんの兄であるジュンさんと3人でワイナリーを運営しているそうだ。
室伏ワイナリーは年産約8万本の中規模のワイナリー。毎年珠玉のワインを生み出し続けている名生産者だ。一般的に知られている名称は「共栄堂」だろう。この名前は、小林さんの実家が営む「よろず屋」の屋号に由来しているという。「共に栄える」という理念には、ブドウ栽培やワイン醸造を通じて山梨の農業全体を支えたいという小林さんの思いが込められている。
そのため、ワインのラベルには「共栄堂」や「KYOEIDO」に加え「室伏ワイナリー」の名が混在している。しかし、一般消費者には分かりづらいとのことから、今回の『リアルワインガイド』の新プロジェクトでは「室伏ワイナリー」の名称に統一する方針だ。ただし、ラベルには引き続き「共栄堂」などの記載がある点はご容赦いただきたい。

さて、ワインを造る小林さんは、白髪交じりの髪と長く白いひげをたくわえた風貌が印象的で、まるで森に住む仙人のようだ。その特徴的な姿に加え、彼の話しぶりには独特の魅力がある。飄々とした語り口で、冗談を交えた豊富な話題は、一つひとつが腹を抱えるほど面白い。時折、真剣なトーンで語りかける言葉は心に響き、気づけば彼の世界観に引き込まれているような感覚を覚える。
かつて勝沼醸造で勤めながら多様なワイン造りに携わった小林さんは、2006年に独立した。それから18年。「あっという間に過ぎ去った」と振り返る小林さんの言葉からも、彼の充実した日々が伝わってくる。ここでは、彼が話してくれた興味深いエピソードの一部をご紹介したい。
◇山梨のブドウ栽培をめぐる現状と課題
山梨でもブドウ栽培農家の高齢化や後継者不足が深刻な問題となっている。ワイナリーのある牧丘は、生食用ブドウの巨峰で知られる地域だ。もしかすると、私たちが普段食べている巨峰も、この牧丘産である可能性もあるかもしれない。巨峰はその大きな実から「ブドウの王様」と称され、かつては生食用ブドウの代名詞だった。しかし近年では、シャインマスカットにその地位を追われている。実際、巨峰やワイン用ブドウからシャインマスカットへの栽培切り替えが進み、農家が急増した結果、現在ではシャインマスカット自体が飽和状態となり、価格が下落している。
この急激な変化について、小林さんは「急な需要の変化は全体のバランスを崩す」と語り、同じ山梨のルバイヤートの大村社長も同様の懸念を示している。
シャインマスカットについて、小林さんも余った果実をワインにすることを考えたが、香りが華やかすぎるため単一品種のワインは、造るのを断念したそうだ。
◇若い世代を支えるための取り組み
「せっかく手塩にかけて育てたブドウが売れないのでは、若い世代は農業を継がない。」
小林さんはそう語り、農家が持続的に運営できるよう、買いブドウの価格を可能な限り高く設定している。また、行き場を失ったブドウも捨てることなく買い取るよう努めているという。
「栽培家の息子や娘が家業を継ぎ、家族を養い、生活していける環境を整えたい。」
その言葉には、小林さんの揺るぎない信念が込められている。早い段階から「安く買えば農家も地域も未来がない」と気づき、警鐘を鳴らしてきた小林さん。変革の先頭に立ち、未来を思う姿に胸が熱くなる。

◇持続可能な未来へ
小林さんは、やる気のある農家が育てたブドウは品質が高くなることを理解しており、その結果として関わるすべての人が「ウィンウィン」になると信じている。今年も買い取り価格を前年より引き上げ、来年はさらに上げたいと考えているそうだ。物価上昇が続く中で、このような逆張りの取り組みを進める姿は、まるで現代のサムライのようだ。
ただし、国内のワイナリーの生産シェアの90%を大手が占める現状は厳しく、課題も多い。小林さんのような志を持つ生産者が増え、この取り組みがやがて大きなうねりとなり、業界全体が持続可能な環境へと進むことを心から願っている。
小林さんは、年間を通じて収入を得られるようにするための工夫として、シーズンごとにワインをリリースする「四季醸造」にも言及していた。通常、ワインは収穫、醸造、熟成を経てリリースされるまでに時間がかかる。ブルゴーニュをはじめとする多くの地域では、年に一度の収穫・醸造サイクルに基づき、ワインがリリースされるのも年1回のみだ。リリース後に初めて収益が得られるため、それが一般的なワイナリーの収入モデルとなっている。小林さんは、歴史ある日本酒製造のルーティンとも共通する点があると指摘する。たとえば、日本酒では秋に収穫した米を冬に仕込み、春や夏には杜氏や蔵人が酒造りを休む。このため、酒造りの期間中は高収入だが、それ以外の季節は別の仕事で生計を立てることが多いという。
実弟が愛媛の道後温泉にある酒蔵で杜氏をしている私にとっても、この話は非常に興味深かった。弟は仕込みの数か月間、ほぼ24時間体制で酒蔵に入り浸るほどの集中を要している。その後の春以降は、プロモーション活動やコンクールの審査員として全国を飛び回るが、収入の変動が大きいと聞く。ワイナリーでも同様に、年1回のワインリリースによる収入のみで生計を立てるのは容易ではない。そのため、小林さんが考える「四季醸造」のような取り組みは、年間を通じて安定した収入を得るためには必要不可欠な手法なのだといえるだろう。

小林さんは、共に働く人々の生活を安定させるため、年間を通じて定期的に収入が得られる「四季醸造」をルーティン化したいと考えているのだ。通常、ブドウの収穫は秋に限られるため、四季ごとにワインをリリースするには、海外からバルクワインやジュースを購入し醸造する方法もあるが、当然のように小林さんはその手法には全く興味がないという。彼が目指しているのは、自ら選び抜いたブドウや自社栽培のブドウからワインを仕込み、熟成期間やブレンドを工夫することで、四季それぞれに応じたワインをリリースすることだ。
以前、あるレストランから「常時オンリストできるよう、品切れを防いでほしい」と要望を受けた際、小林さんは「ワインは工業製品ではなく、生物のような存在。無限にあるものではないですから」と素直に答えたという。彼にとって、ワインは自然の恵みを最大限に活かした限りある宝物なのだ。また、「牡蠣の季節にはそれに合うワインを」というように、四季ごとの食材や料理に寄り添うワインを提供することが理想だと語る。レストランの固定的なオンリストではなく、気軽に変えられる店頭のホワイトボードや黒板に旬のワインとして記載される方が望ましいとも考えている。
◇希少価値よりも品質重視のワイン造り
小林さんは仕込みに関しても、「あえて少量生産して希少価値を高める」という一般的な方針を取らず、品質を第一に考えている。5000リットルのタンクで約6000本のワインを仕込むことが多いそうだ。彼の目標は、誰もが気軽に手に取れる価格帯で高品質なワインを提供することだ。高いワインを1本ではなく、手頃なワインを複数本購入して時間をかけて飲み比べることで、ワインの成長や変化を楽しんでもらいたいという熱い想いも込められている。そのため、彼のワインは高い人気を誇りながらも、手の届きやすい価格設定がなされている。しかし、その需要は供給を大きく上回り、近年では同じ人が複数本購入するのが難しくなっているのは必然だろう。
ただ小林さんは今後もワインの値上げはしないと断言している。小林さんのワイン造りは、品質を重視しながらも、人々の生活や楽しみに寄り添った持続可能なアプローチでその姿勢は変わらないのだ。
◇事務所の下の1階にある醸造所でいくつかのワインを試飲させて頂いた。
◆1.DD(橙) FY / 白
正式名不明。DDは橙(だいだい)の略、FYは冬の略のようだ。甲州種100%。とても爽やかで洗練されている。旨味が乗っていてダシの風味を感じることが出来る。とても艶やかで日本ワインの良さが凝縮したようなワイン。甲州は3つの手法で仕込まれるそうだが、それらをそれぞれ組み合わせた別々のキュヴェを造っているそうだ。
1.ダイレクト・プレス(直接圧搾)
2.醸し
3.マセラシオン・カルボニック
これはダイレクト・プレスと醸しから生まれるワイン。エイジングマジック(熟成の魔法)と自らが語っていたが、熟成によりさらに複雑で奥行きのある味わいになったそうだ。ダイレクト・プレスの清涼感と醸し由来の奥行きが絶妙なバランスを見せる。柑橘の果皮やハーブの香りが際立ち、味わいには控えめながらも感じる渋みとコクがある。酸と果実味が繊細に絡み合い、より食中酒としての魅力が高いスタイル。
◇亜硫酸塩(SO2)への考え方
小林さんは、亜硫酸塩を可能な限り減らしたいと考えているそうで、かつて亜硫酸塩添加を抑えたワインを何度も試作し、実際にリリースしたこともあるそうだ。ただ一部で酵母が残ったままのワインが販売後に再発酵し、クレーム対応をした経験があり、その判断は、より慎重になっている。現在は安全性を確保しつつ、味をしっかりと整えるため、基本的には最後の工程で亜硫酸塩を極少量、添加する方法を取っている。
小林さんによれば、「味を固める」という役割を果たす亜硫酸塩は、料理における塩のようなものだという。塩が味わいやダシを引き立て、味を整え、最後に味の輪郭を締める役割を果たすように、亜硫酸塩もワインの味わいをぼやけさせず、しっかりと支えるために必要だと語る。彼は、「朧気な味わいも面白いが、ぼやけすぎるのはワインとして適切ではない」との考えを持っている。
◇味を固める為の亜硫酸塩添加
この亜硫酸塩添加で「味を固める」という考え方は、Domaine Takahikoの曽我貴彦さんも語っていたそうだ。ただし、曽我さんは2015年から赤ワインに関しては亜硫酸塩を無添加で仕上げている。亜硫酸塩を添加するタイミングも重要だという。小林さんは「最初に添加すると味がギチギチになりすぎてしまうため、添加するなら本当に最後の段階」と説明する。
◇添加量と挑戦
小林さんの亜硫酸塩の基本的な添加量は25ppm以下に抑えることを目標としており、今後、キュヴェによっては20ppmに減らす方向で考えているようだ。過去には極限まで減らし、5~10ppmでの挑戦も行ったが、一部で酵母が残り、開栓時に再発酵による泡で大半が吹きこぼれるというトラブルも経験したことから、キュヴェ毎に正確な判断を行っているそうだ。
近年、新たに立ち上げたワイナリーの中には、最初から亜硫酸塩無添加を謳ったワインをリリースするところも増えてきた。それについて小林さんは、「その味わいのぼやけ具合や様々なリスクをどれだけ理解しているのか、とても興味深い」と語る。自身も挑戦を重ねた経験があるからこそ、彼らの試みに深い関心を持ち、注視しているようだ。
◆2. Muscat Bailey A / 赤
一般には来年1月にリリースされるそうだ。ダイレクト・プレスで仕込まれた。とてもチャーミングで軽やかで親しみやすい。滋味深く、体に染み入るように優しい。正式名不明。
◆3.甲州 / 白
ダイレクト・プレスとマセラシオン・カルボニックの組み合わせのワイン。軽やかで鮮やかな柑橘系の香りが特徴。白桃やグレープフルーツのようなフレッシュな果実味に加え、マセラシオン由来のほのかなキャンディのような甘やかなニュアンスが感じられる。爽やかな酸とミネラル感があり、後味はきりっと引き締まる。カジュアルでほろ苦く旨味が乗っていて、輪郭もくっきりとして奥行きがある。これも正式名不明。完成度が既に高く、人気があるのも十分に理解できる。
◆4.甲州 / 白
マセラシオン・カルボニックと醸しの組み合わせのワイン。正式名不明。果実のフレッシュさと複雑な味わいが絶妙に調和した仕上がり。柑橘や洋梨、トロピカルフルーツの香りに加え、醸し由来のほのかな苦味と旨味が奥行きを与える。丸みのある口当たりながらも酸がしっかりと支え、余韻にかけてじんわりと続くほろ苦さが印象的。
◇余談だが、訪問したこの日に山梨でワイン用ブドウの新品種『ソワノワール』の苗木がリリースされた。
暑さに強い赤ワイン用の新品種の名称は、ワインの評価とともに検討した結果、ワインの色が濃く、味わいが絹のように滑らかであることから、「黒い絹」という意味のソワノワール(Soie Noire)と命名された。これは独自性やアイデンティティを持った日本発の赤ワイン品種であることを象徴している。命名にはワイン県副知事の田崎眞也氏や林真理子氏らが参加した。
近年、急激な温暖化により赤ワイン用のブドウが色づきにくくなるという課題が国内外の産地で問題となっている。そこでブドウ栽培で長い歴史を持つ山梨県は、2年前にヨーロッパ原産の「メルロ」と「ピノ・ノワール」を掛け合わせ、暑さに強い赤ワイン用の新品種「ソワノワール」を開発し、苗木を増やしていた。そして12月16日、甲斐市の施設で県内のワイナリー向けに初めて苗木の引き渡しが行われ、県の担当者が270本の苗木を畑から掘り返して袋に詰め、出荷された。
県によると、ソワノワールは暑くても色づきやすく、色づきの時期が早いことが特徴だという。山梨県ワイン酒造組合の有賀雄二会長は「今年も暑かったので品種によっては赤ワインを造りたいのにロゼワインのようにしかならないということが起きている。ソワノワールは色が濃くて非常に期待している」と話していた。苗木の引き渡しは来年春ごろまで行われる予定で、収穫が本格化するのは3年後から4年後を見込んでいるという。ルバイヤートの大村社長は、試験的に20本のソワノワールの苗木を購入したそうだ。
■ 今回、我々2社からリリースされる新キュヴェはこの日に集荷されたばかりで、試飲する事は残念ながら、叶わなかった。
代わりにこのワインのコンセプトやラベルを頂いた。初見でこれがワインのラベルだと思う人は皆無だろう。ラベルだけでも数多ある他のワイナリーとは一線を画す。
新たに造られたワインはロゼワインでワイン名は『K23_AK_RZ_77』と言う。通称は末尾から取った『ナナ・ナナ』。
見慣れない化学式のようなワイン名は先入観なくワインをフラットな気持ちで飲んでもらいたいという想いからだ。Kは共栄堂の頭文字だろうか? 23は2023年産の事で、AKは秋リリースの秋を現す”AKI”の2文字から。ちなみに春はHR、夏はNT、冬はFYと表記される。RZも同様の表記方法でロゼの事を現す。
赤はAK、白はSRと表記されるようだ。
SO2少量添加は基本だが、これは無添加。このキュヴェを正確に見定めた最適解なのだろう。
品種はピノグリ、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、巨峰、シャインマスカット等で、これらを巧みにブレンドしている。地元の名産品である巨峰やシャインマスカットが使われているのは小林さんの地元を愛す気持ちの表れだ。
ワイナリーでは一般流通用のワインとは別に3種の管理番号(77.88.99)で分けられたキュヴェがあるようだ。キュヴェ名末尾の77は今回の特別キュヴェ用に新流通システムの為に新たに割り当てられた番号。山梨県内での販売用には88で、被災地支援の為のワインには99が割り当てられているそうだ。被災地への想いは相当強いようで、自分に何が出来るのか分からないが、まずは能登に行って、自分の目でそれを見極めたいとも話していた。
自分の事に関しては全くの無頓着で服などの身なりにはあまり興味はなさそうだが、周りの人や困っている人をほっておけない優しくて熱い心が、それぞれのワインにも宿っているのだと素直に感じた。すべて共栄の精神が根底にあるのだ。
新流通システムの為の今後のキュヴェは前述したように四季ワインのコンセプトの下、季節ごとに年4回で各1200本程度がリリースされる予定だ。今後、どのようなワインがリリースになるのか、実は全く未定で、小林さんがその都度、樽で試飲しながらその時毎に考えて、面白いと思うワインをリリースする予定との事だ。アーティストによる、”おかませワイン”のようなイメージが近いかもしれない。いずれにせよ、どんなワインとなるか、とても楽しみだ。小林さんの手にかかれば、価格以上の素晴らしいワインになるに違いない。
こちらからの要望は何もなく、自由に好きなようにワインを造れるのだから、既存の枠を取り払った彼が一体どんなワインを世に放つのか、本当に楽しみでならない。その彼から生まれる新たな珠玉のワインを、『いろはわいん』さんと、共同で楽しみながら大切に売っていきたいと思う。
文・写真・構成/ ㈱エイ・エム・ズィー バイヤー 菊池