
noisy も大好きなピュル・サンです。でも何故か人気はイマイチのようで・・非常に残念です。今回はしっかりテイスティングさせていただき、写真も撮りましたのでご覧くださいませ。
本当にもう大分前になりますが、このピュル・サンも1カ月掛けて飲んだことが有ります。抜栓直後はもうパッキパキに硬質で、ミネラリティは超マンモス級、美しい伸びやかな大量の酸が、このワインのハイポテンシャルを物語っていました。
しかしながらちょうどインターネット時代の幕開けで、ブログと言うものが流行り出した頃、ワインファンの方々が、
「こんなワインを飲んだ」
とブログにアップし、飲まれた感想を書かれていたんですね。
勿論それまでもコンピュータ通信(古っ!)の会議室で・・そう、ニフティサーブとか・・NECは何だっけか・・忘れちゃいましたが、このワインはどうだ、あそこの店は安いがコンディションが・・とか、ワインファン同士のつながりや情報交換は有ったんです。
でも、ブログはどちらかと言うと、まずブログ主の一方的な主張から始まりますから、それに対して意見が有れば書き込めば良いにせよ、書き込んだ情報はさほどは目立たないものです。
で、ディディエ・ダグノーに関してもそのようなブログで紹介され、
「世の中で言われるほどは凄く無い」
とか、
「余り美味しく無かった」
と言うような情報が氾濫し、定説となりつつ有ったんですね。
まぁ、それは違うだろう・・とは感じていたものの、ワインの保存環境とか、どこで購入されたかなどにも寄る訳ですから、頭からの否定も困難・・これはどうしたものかと思っていた訳で・・
やはりワイン屋とすれば、正確な情報を提供しないといけないと・・それにはやはり、しっかりしたテイスティング能力を持ち、伝える相手に判ってもらえるような表現力も無いといかんと・・その上でのお客様へのエデュケーションも必要だろうと・・感じた訳です。
まぁ、そうは言ってもニッチな商売のニッチな店ですから、全ての方に対して満足できるようなワークは出来ないので、少なくとも自身のお客様向けには正しい情報を持って、共に成長できるようなつながりを持ちたいと思ったんですね。
で、そんな一環の中で、
「ピュル・サン1カ月掛けてテイスティング」
を実行した訳です。

空けて2週間もすると、だいぶ状況が変化してきました。驚くのは、酸化に対しての耐性の強さです。ほとんど酸化した臭いが無いんですね・・。石灰系ミネラリティが大量にあることが、そのポイントなのかと思います。
そして4週間の間に、どんどんと要素が出て来ました。非常に細やかな表情には果実感がしっかり有り・・と言うよりも、その一粒一粒の粒子がそれぞれ果実のニュアンスを持っているので、群生しているようにも感じられる訳です。素晴らしい!・・の一言でした。
4週間後には液体は無くなってしまいましたが、その後2~3カ月の間、コルクを逆刺ししたボトルの中の香りは、果実感がしっかり有り、素晴らしいアロマを放っていたものです。
そんなことを書いたコラムもどこかにあるかとは思いますが・・もう探しきれません・・(^^;; ワイン屋と言うより駄文筆業に近い何でも屋が本業です。
で、他のコラムにも書きましたが、以前より確実にテクスチュアはソフトになり、頑なさは引っ込んでいますので、今飲んでも非常に旨い・・です。
勿論、こんなもんじゃぁ無いんですよ。とんでもないほどのポテンシャルを感じます。
このピュル・サンは泥灰土土壌・・ワインジャーナリズム的には「マール」なんて言ったります。粘土質の土壌に方解石が混じったものですね。方解石は河などで流され堆積した石灰質です。ブルゴーニュのコート・ド・ボーヌに良く見られ、シャルドネの生育に最適と言われています。
しかし、この石灰の量的ニュアンスは「モンラッシェ級」で有って、単に「コート・ド・ボーヌ」と言ってしまうと間違いかと思います。少なくともグラン・クリュ並みと形容すべきでしょう。
その量もさることながら、高質さも同様にグラン・クリュ並みです。マール土壌には小振りな「シレックス」が多く堆積していますんで、そのミネラリティと取り込んでいるのかもしれません。
柑橘系の果実がたんまり有り、中域も適度な膨らみ、余韻には石灰系ミネラリティと、ナトリウム系のわずかに塩っぽいニュアンスが崩壊しているかのような感覚を伝えながらの長い収束が有ります。非常に・・旨いです!
「ダグノーは大したことは無い」
なんて安易には言わせませんよ・・。それは間違いだと。その方の感覚に間違いが無いとするならワインのコンディションが良くないことを感覚的に認識すべきかとも思います。素晴らしいワインでした。飲むべき、そしてどんな赤ワイン以上にとても楽しめるワインです。超お勧めします!・・数は有りません。