【プイィ=フュメ A.O.P.と言う硬い殻と格を捨て、巨大な構造とミネラリティをそのままに、官能さと柔らかさ、親しみやすさを身に着けた2018年シレックス!素晴らしいです!】

本当に長い間ダグノーのワインと向き合って来ました。その途中には、悲しい出来事が有りました。
「ディディエ・ダグノーって、知ってます?」
と言う一声から始まったお付き合いです。あまり知らず、調べてみたら中々に評判が良いものの、「変人だ」と・・。それならきっとnoisy とも相性も抜群だろうと言うことで仕入れて飲んでみた訳ですね。
最初の印象は・・もうおそらく四半世紀も前のことかと思いますが、
「・・これ・・どれだけの人が理解可能なんだろう・・」
でした。
とてつもないミネラリティを閉じ込めた、ピュアな柑橘をほんのりと漂わせた見事なアロマでした。しかしながら同時に、
「完熟までは相当時間が掛かる・・」
「飲むタイミングによってはまったくガチガチで開かないだろう」
と言う、ワイン屋にとっては余りうれしくない対象でも有った訳ですね。
案の定、1995年から徐々に広まり、2000年過ぎにはインターネットが花開き、日本でも・・今で言うところの「インフルエンサー」でしょうか、饒舌にワインの感想を記事にする個人サイトや、そしてブログなどで飲んだワインに対する意見が掲載されるようになってきました。
そうすると、
「高いのに美味しくない・・スッキリしてるだけ」
「スイスイ飲めてフレッシュで辛口で美味しい!」
「・・何これ?」
みたいな感想を何度か目にしたことが有ります。「・・これは・・遺憾だろう・・」と。それはつい最近まで続いたと思いますよ。

左の一枚目の写真は例のごとく、滅茶寄った写真です。何も調整していません。美しい淡い緑が入った黄色ですね。二枚目の写真はホワイトバランスと色味調整を少しだけしていますので・・調整すると伝えたいものが結構に崩れてしまうんですね・・難しいです。
ベンジャマンは、卵型の樽や横長の樽などを用い、父であるディディエ・ダグノー由来のその「クリスタルのような硬さ」にクサビを打ち込むことに成功したようです。お陰で、
「ただ滑らかで硬いだけではない・・その分子の隙間から要素のディテールが漏れ伝わるようになって来た!」
訳です。
実際、抜栓後3~4日目ほどのタイミングで、一旦すごく柔らかくなったんですね。官能さを帯びたダグノー的ピュアさの柑橘なフレーヴァーが、実に心地良く、旺盛に空気中に振り撒かれます。部屋中が素晴らしいアロマで満たされます・・あ、この時期は時折換気しないといけませんね・・。
それ以後も収縮して閉じこもり、またやや解放して柔らかくなりを繰り返したようです。1週間ほどで中身が無くなってしまったのでその先は判りませんが、いや・・たっぷり楽しませてくれましたよ。そして、数年前に飲んだ1990年のシレックスを、また思い出す訳ですね。15年ほどの歳月がようやくこの素晴らしいポテンシャルを・・まだ100%解放したとは言えない感じでは有ったにせよ、
「美味い!」
と心にシュチュエーションとともに刻まれた訳です。
単に、今はやりのビオを追い詰めているだけではない、父譲りのスタイルです。是非味わってみて下さい。早めに飲むなら数週間に分けて少しずつ、もしくは、何とか開かせる努力をして、ご機嫌の良さそうな時に・・お勧めします!素晴らしいワインです。
以下は以前のレヴューです。
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【1週間以上に渡ってチェックしてみました・・やはり素晴らしいです!今回は貴重なマグナムも!】--以前のレヴューを使用しています。
やはり素晴らしいですね~・・。呆れるほどに透明感が備わり、まるで水晶かクリスタルか・・と言った風情が、見た目にも、味わいにもしっかりと感じられるんですね~・・・水晶もクリスタルも同じだろって?・・いや、同じじゃないんですよね・・そこはどうでも良いんですけどね。気になったら調べてみてください。
この見た目にも艶やかな光り輝き透明な美しい色合いは、味わいをそのまま表わしているとも言えます。
同じディディエ・ダグノーの代表作で有る「ピュル・サン」と比較してもそれは「見ただけ」でも判りますし、「嗅いだだけ」でも判ります。
シレックスは透明感が半端無く、柑橘系の密度の高いアロマを放ちますが、
「品種・・何だろう?」
と、シレックスのことを知らなければ、シレックス自身が答えを教えてくれるのには、若いものなら2~3週間は掛かるでしょう。
半面、ピュル・サンは、色合いはシレックスよりも付いていて、グラスを散々振り回せば、
「ん・・ソーヴィニヨン・ブラン・・・かな」
と言うことが出来るはずです。
1週間以上コルク逆差しにしておいたシレックスは、その水晶の中に閉じ込めたかのうような気品高い表情をほんの少しだけ・・見せてくれます。ものの見事にドライなのに超甘く、柑橘のフルーツは水晶によって輝きを増しています。
そのアロマは鼻を通って脳髄へと直結するんじゃないか?・・と思うほどに鮮烈です。素晴らしいアロマ、そして味わいでした。
そんなに凄いシレックスですが、実は評価も様々です。フランス本国だと・・例えば、ゴー・ミヨとかラ・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス辺りは物凄い評価です。19/20とか、19.5/20 などが常のように評価されている感じです。
反対に ヴィノスやスペクテイターはその下、94~95ポイント位が上限で、その上のクラシックな評価は余りしませんね。また何人かいらっしゃる東洋人、白人の MW は挙って低いです。その下の90~93ポイント位でしょうか。
考えるに、ワインにおけるミネラリティの評価が異なるように思います。低い評価をしていらっしゃる方は、ほぼ飲み頃が早く、飲み頃期間が短いです。平気で飲み頃期間10年とか・・言う方には呆れてしまいますが、ミネラリティが判らないか、よほどコンディションの悪いシレックスをテイスティングしているとしか想像のしようが無いです。
非常に寿命の長いシレックスですが、若くても美味しく飲む方法は有ります。毎日か、一日置きか、二日置き位で70ccずつ・・飲んでみる・・なんてことが、ま~・・超絶に楽しいのがディディエ・ダグノーです。
「えっ?・・そんなことしたら酸化しちゃってワインが駄目になっちゃうでしょう?」
まぁ、やってみてください。滅茶楽しいし、滅茶、為になる経験が待ってますよ。70ccずつなら10回は飲めます。35ccにすれば20回・・2日起きなら1カ月以上も楽しめますが、全然大丈夫です。ピュル・サンもシレックスも、普通のブラン・フュメも大丈夫です。そうして少しずつ飲んでいると、ある時、「どっか~ん!」と開いてくるタイミングが有ります。まぁ、徐々に開くパターンもあるかもしれませんが、それが1回じゃぁ済まないんですよね。それが判っていれば、92点とかは絶対に付けられないはずなんですけどね。
と言う訳で、素晴らしい2016年、シレックスでした。是非ご堪能ください。今回はマグナムも有ります。激レアです。
以下は2014年シレックスのレヴューです。
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【素晴らしいです!さすがダグノーのトップ・キュヴェ!そして幻のマグナムも!】
何度か飲んでいますが、でもリリース直後に開けたのは初めてです!・・素晴らしいですね。圧巻のバランスですが、全ての要素が高いレベルで集合し、そしてバランスしているのには驚きです。
昔の、ディディエの頃よりも、テクスチュアはもっとソフトでしなやかになって来ていると思います。それこそ、
「ディディエ・ダグノーのワインは1カ月以上かけて飲んでね・・」
と言っているほどですから、その位しないと、ポテンシャルを取り切れないと感じています。
しかし、ベンジャマンに成ってからは徐々に頑なな硬質さから「頑なさ」が和らいできていると感じます。それはおそらくですが、So2の絡みが有るんじゃないかな・・と。なのでピュアさはそのままに、ナチュラルさが増してきている・・なので柔らかさまで感じられるようになって来ていると。
実はこのディディエ・ダグノーのテイスティングの順番は、
ブラン・フュメ--->ピュル・サン--->シレックス--->バビロン
と言う流れで行ったんですが、最初のあの音符のエチケットですね・・ブラン・フュメを飲んだ直後は、
「ん~・・これで・・充分に旨いじゃん!」
と思ったものです。
しかし、noisy も大好きな「ピュル・サン」を飲めば、
「ん~・・やっぱり、これこれ!」
と思ってしまうし、このシレックスのような偉大なミネラリティに出会ってしまうと、
「ん~・・参った!」
と降参してしまうんですね・・。どれもまた旨いんですよ。

そしてその意味ですが、昔なら、
「何年後の姿が想像出来て美味しい!」
と言うのが近かったんですが、この一連の2014年ものを開けて感じることは、
「今飲んでも素晴らしい!」
とまず言えるんですね。これが最近のディディエ・ダグノーの変化でもあると言えると思います。
その上で、
「30年経っても大丈夫!」
ですし、
「15年経ったらリリース直後とは別物!化け物だったことを理解できる!」
と言えるでしょう。
柑橘系、果実、石、岩、ガラス、クリスタルがまんべんなく散りばめられた凄いワインでした!これは飲むしか無いぞ!・・と言っておきましょう!偉大なワインです。お勧めします!