
以前何度か古酒のボージョレ系ワインをご紹介させていただいていますが、お客様の反応は素晴らしいものがあります。
そりゃぁそうです・・凄く美味しいんですから・・たぶん余り経験されたことのない美味しさだと思うんですね。実際はさして名も無い、もしかしたら「ただ古いだけ・・」なガメかもしれない・・と思って飲んでみても、例えば30年ものとか、40年ものとかのクリュ・ボージョレなら感動的なブーケと柔らかなボディ、官能さを体感できます。
先だっても2006年のシャトー・デ・ジャックを4アイテムほど、ご案内させていただき好評でした。それでもまだまだ若い美味しさでしか無かった訳です。
今回はなんと・・21年ものですよ。クリュ・ボージョレのシンプル・ムーラン=ナ=ヴァンと、畑名入りの「ラ・ロシュ」です。
noisy もどこかワクワクしつつのテイスティングです。こういうのは本当に楽しいです。
1996年ムーラン=ナ=ヴァン・・これはもう文句無しの美味しさです。元々鉄仮面的にドライで、甘味も何も無い、まるでピノ・ノワールと酷似したニュアンスのフレーヴァーに、ガメならではの官能感と、ムーラン=ナ=ヴァンならではの赤さを持つミネラリティ・・・金属ですね・・これが「パカッ」と・・まではまだ行ってはいないんですが、かなりの部分で開いてきますから、鬼鉄です。・・いや、最近は「鉄板」と言うのかな?・・激旨いです!
勿論ですが、まだまだ・・成長途中なんです。シャトー・デ・ジャックの醸造はしっかりしていますから、並みの熟成力じゃぁありません。40年までは軽く大丈夫でしょう。これ、一推しです。非常に安いです。

一方のムーラン=ナ=ヴァン・ラ・ロシュですが、色を是非、シンプルと比較してみてください。硬いミネラルの殻が崩壊しはじめたシンプル・ムーラン=ナ=ヴァンはほんのりとレンガ色がエッジに入って来ており、全体的にもレンガ色が浸食し始めていますが、ラ・ロシュの方はようやくエッジに入り始めた感じが見て取れると思います。
まるでまだ数年しか経過していないような、新鮮な色合いが残っていますよね?・・これで収穫から21年ものです。どうなっていると思います?
熟してきてゴージャス感が出始めているシンプルものに比較すると、まだまだ・・そんなニュアンスには成っていないんですよ。
しかしながら、トータルのポテンシャルは、複雑感や高貴さ、ベルベッティーな感触など、シンプルを大きく上回るんですね~・・。なので、この場合、
「単純明快に美味しいシンプル・ムーラン=ナ=ヴァンに対し、複雑高貴さが迫って来てポテンシャルが美味しいと言わせてくれるラ・ロシュ」
になっています。
もしかしたら、さほどワインを飲みこんでいない方は、シンプルの方が高いワインだと思われるでしょう。でも、飲みこんでいく内に・・
「あれ?・・こっちの方が美味しくなって来たぞ?」
と気付くかもしれません。
ラ・ロシュはまだまだ熟成して行きます。30~50年、へっちゃらです。勿論ですがちゃんと温度管理した場合です。noisy も何度か50年もののボージョレやクリュ・ボージョレを飲ませていただきましたが、シンプル・ボージョレの場合は50年ほどが限界、クリュ・ボージョレはそれを確実に超えて行きます。皆さんがワインを飲んで知ったり見ている世界観は、実はほんの一角で、完全に要素が完熟に近くなった場合のワインの姿と言うのは物凄いものが有ります。
それをまた見たいから、飲みたいから、古酒を買ってしまう・・・
時には残念な姿をしている古酒も有ります。時には、
「・・あぁ・・これはもう・・終わってるなぁ・・」
と諦めていたワインが数時間後に大化けしていることも有ります。それまで死んでいた色合いまで、ピッカピカに輝き出すことだって有ります。
この1996年のムーラン=ナ=ヴァンはだいぶ完熟に近付いてきていますが、ラ・ロシュはようやく熟し始めた時期に入った程度でしょう。ラ・ロシュの大爆発はいつか?・・それに出くわしたら感動の味わいに感涙を流すかも・・しれません。
また、このようにシッカリ出来た葡萄で、シッカリ醸造した上質なガメは、全くピノ・ノワールに引けを取らないんだ・・ということを知ってほしいと思っています。是非飲んで見てください。非常にリーズナブルだと思います。一推しです!
以下は2006年のムーラン・ナヴァン各種のレヴューです。
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【ガメ?ピノ・ノワール?・・ちゃんと判るでしょうか?たぶん間違えると思いますよ!これはとても楽しい大人の遊びです!】

Moulin-A-Vent Champ de Cour / Chateau des Jacques 店も古いので仕方が無いけれど、まぁ・・この夏、アチコチ壊れて・・参ってしまいました。自動ドアが2回、ベルトが外れるトラブル。2度目がついこの間なので、まだ
noisy が応急修理しただけになってます。・・だからベルトがもう駄目だから交換してくれって言ったのに、「あ~・・う~・・」言うだけでやってくれなかったからね・・。エンジニアなんだからモノが古いとはしても、何とかするもんでしょ。ただ増し締めしただけで帰っちゃうならやらないでも同じ・・。
まぁ、それは良いにしても、今度はPOSシステムも・・ウンともスンとも言わずにお亡くなりに・・。連動しているパソコンシステムは生きていたので、運営そのものは大きな問題には成らなかったものの・・やはり不便でね。
で、ようやく新システムに切り替わったのだが、今度はそのPOSシステムのOSがWindows7になってしまった関係で、LAN
でつながっている店内のPCとの連携が上手く行かなくなってしまって・・。PCを更新したり、メモリを増やしたりハードディスクを変えたりOSを上げたりと・・まぁ忙しいったらありゃしない・・。
「私はワイン屋じゃ無かったのか!」
と言いたくなるような仕事ぶりでした。ホント、何か信頼出来ない部分が有ると困っちゃいますよね。自動ドアが動かないということは、誰かがいらっしゃれば、

Moulin-A-Vent la Roche / Chateau des Jacques誰かがドアを開けてあげなきゃ成らないわけで、内装工事人に扮し、ドタバタやりながらも、ドアを開けたり閉めたりと・・まぁ、大変な夏でした。
そんな中で今回のシャトー・デ・ジャックの3アイテムが到着し、12本ずつなので・・飲めても2本、普通なら1本が限度と言う内容だったんですが、汗水流しつつ苦労したもので・・
「・・いいや!飲んじゃお!」
とばかりに結局3アイテム全部飲んじゃいました。・・唯一の愉しみ・・(^^;;でした。
ここまで書いてますが、まぁ、ここまで詠んで下さってる方はそんなことは無いと思いますが、
「ん?・・ガメか!・・興味無し!」
とばかりの方が多いのでね・・。そんなガメに対する印象を除いてあげたいと、常々思う訳です。
大体、このシャトー・デ・ジャックのワインは飲まれたことのある方も多いと思いますが、
「ん?・・ピノじゃないの、これ?」
と感じたんじゃないかと思うんですね。

Moulin-A-Vent Clos des Thorins / Chateau des Jacques
普通、この地域のワインはマセラシオン・カルボニックという製法で、つまり、全房発酵、炭酸ガス浸漬法で造られますが、シャトー・デ・ジャックは普通に造ります。なので、濃度はしっかり出てきます。まず、そこが大きく違います。
また、このムーラン・ナヴァンというA.O.C.のワインは、比較的濃い果実味の味わいになります。これはテロワール・・つまり畑のミネラリティの組成と天候がそうさせているんですね。
なので、このシャトー・デ・ジャックを飲んで、
「ん!ガメ(ガメイ)ですね!」
と即答できる方は、むしろボージョレ・マスターと言えるんじゃないでしょうか。noisy
もちょっと自信無いです。それほどまでにピノ・ノワールと酷似しているんです。
ムーラン・ナヴァン・シャン・ド・クーは、コート・ド・ニュイで言うと「シャンボール=ミュジニー」タイプのミネラリティとテクスチュアを感じる仕上がりです。2006年ですから熟し始めていますが、今も美味しいとしても、まだまだ先の長いワインでも有ります。ドメーヌでもこの3種のワインは10年~20年、良いコンディションを保つと言ってます。非常に長い寿命が有ります。で、その上でムーラン=ナ=ヴァン的、非常に特徴的なミネラリティ、まぁ、マンガン由来・・と言うのが定説ですが、火薬とか鉄とか錆びとか・・そんな複雑なニュアンスが有ります。とても美味しいです。
ムーラン・ナヴァン・ラ・ロシュは、その「ラ・ロシュ」と言う名前とは少し裏腹に、非常に「ジュヴレ=シャンベルタン」的な鉱物・・鉄っぽく、男っぽいニュアンスがする味わいです。細やかな澱もそれなりに出ており、またタンニンも少し感じます。ふくよかでおおらかですが、とても複雑性が高く、大きなワインと言えるでしょう。その上で上記のムーラン・ナヴァン的な面を見せます。
ムーラン・ナヴァン・クロ・デ・トラン は、最もムーラン・ナヴァン的なワイン・・と言えるかもしれません。とてもバランスが良く、むしろ上記2アイテムの中間的要素に満ちています。
もともと、ここは「ロマネシュ=トラン」と言う村ですんで、ムーラン=ナ=ヴァンじゃぁ無いんですね。何でもロマネシュ=トランの「風車」が有名だったのでA.O.C.を「ムーラン・ナヴァン」にしたと・・もう30数年前に読んだ本に書いてあったような気がします。間違ってたらすみません・・。
で、そのトラン の名前が付いた畑・・見事に「クロ・デ・トラン」(トランのクロ)と言う名前で、しかも非常にムーラン・ナヴァン的なのは当たり前のことなのかもしれません。ある意味、コート・ド・ニュイで言えばヴォーヌ=ロマネ的かもしれません。
こんなワインの飲み方は、まぁ・・普通じゃないとは思いますが、人間、やってきたことの延長でしか理解できないもんですよね。なので、非常にnoisy
的過ぎて何をおっしゃってるのか判らん・・と思われるかもしれませんが、少なくとも、ボージョレ、ボージョレした、軽いガメでは無いということ。そして、そのレベルはワインに精通した者さえ騙せるものであること。そしてとてもピノ・ノワール的・・いや、ブルゴーニュワインであると素直に感じる高いレベルのものであること・・が言えると思います。
しかも2006年とブルゴーニュ的な仕上がりのヴィンテージで有り、熟し始めて来ているので、醸造時由来のアロマティックな香りと熟成により生まれた「ブケ」の両立が有り、ブケが段々支配的になりつつある段階のワインです。
熟成させて飲む・・ワインファンの願うところでは有りますが、実際は非常に難しいものです。今回はシャトー・デ・ジャックの古酒がとても安いです。是非価格も調べてみてください。・・あ、今回のは
「畑名付きムーラン・ナヴァン」・・つまり「クリュのクリュ」ですんで、畑名無しのムーラン・ナヴァンやACブルゴーニュとは「
格が違う」のでご注意ください。こちらの方が全然上です。通常は6千円位かな?・・と思います。3本も飲んじゃいましたんで赤字覚悟・・のレヴューでした。ご検討くださいませ。