
ブローカーさんからこのオファーをいただいた時、
「えっ?・・・何かの間違いじゃない?」
と思っちゃいましたよ。
だって、異常に安いんですから・・。このご時世、この価格じゃパストゥグランも買えない造り手が沢山いますからね。
しかも、この1級ヴィーニュ・フランシュは、ルイ・ラトゥールのドメーヌものです。しかも、ルイ・ラトゥールのボーヌの赤におけるフラッグシップなんですね。
あのジャック・ジェルマン、シャトー・ド・ショレがドメーヌを売却する時、
「ボーヌはうちの会社の看板だ!」
とばかりに?ルイ・ジャドが手を上げましたよね?・・そして手に入れたんですよ・・ジャック・ジェルマンの1級ヴィーニュ・フランシュを。ルイ・ラトゥールとすると心中穏やかじゃぁ無かったでしょう。そんな裏事情の深読みも、結構面白いですよね。
それに、例えばあのPKさんも著書「バーガンディ」のボーヌのコラムの優良な生産者/ワインで、このルイ・ラトゥールのヴィーニュ・フランシュ1級を上げていますし、マット・クレイマーさんも、「たいへん飲みがいの有るワイン・・・ボーヌで5指に入る」と持ち上げています。
まぁ、ヴィンテージ的には2007年と言うことで、そろそろ飲み頃に入りつつある感じかな?・・と言う部分ではあるものの、
「・・2007年かぁ~・・」
と言うような溜息も聞こえてきそうでは有りますが、それでもボーヌ1級のトップクラスのピノ・ノワールで、しかもドメーヌ・ルイ・ラトゥールですから、このプライスは嬉しいですよね。後は noisy のテイスティング次第・・でしょうか。
因みに日本の正規はアサヒビールさんで、直販ショップも有ります。現在2010年を販売中とのことですが、税別¥8.450、「在庫の状況によって、まれに、お届けするヴィンテージが変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。」とのことで、こんな価格でもデイリーワイン扱い並みと言う訳の判らない販売をしています。こんなことからも、何故真っ当なワイン屋が正規からルイ・ラトゥールを買えないのか・・と言うことも滲んできますよね。
まぁ、正規品でそんな8千円台の価格・・と言うのも、高騰しているブルゴーニュワインの中に有っては、非常にリーズナブルなんですが、ヴィンテージこそ違うものの、6割引きの価格ですからね・・とてもお買い得かと思います。
味わいの方ですが、これがこのプライスなら文句など出ないだろ!・・と言えるようなものでした。2007年ですから収穫から9年目に入ったところですよね。
ヴィンテージ的に、やや冷ややかなニュアンスを持ちやすく、豊かなフレーヴァーには成りにくかった2007年のブルゴーニュでは有ります。そんな傾向はやや見えるものの、それでもしっかりエキスが出ていて、2000年頃までに有った、
「ルイ・ラトゥール特有のパストゥリザシヨンのニュアンス」
はもう有りません。これは、日本酒で言うところの「火入れ」ですね。一時期ルイ・ラトゥールでは、菌の繁殖を抑えるために品温を上げて「殺菌」していたんですね。英語だとパスツリゼーションです。
これがもう・・ワイン界じゃぁボッコボコに叩かれましたがルイ・ラトゥールでは全く意に介さず、無視していました。
でも・・いつの間にかね・・火入れは止めちゃってたようなんですね。2000年位まではやってましたよ。結構・・判りやすいです。ナチュラルさが無くなっちゃうんですよ。まぁ、止めずとも、火入れの温度は高くしないようにしたのかもしれませんけどね。
色合いは非常に健全で、美しい適度な濃度のルビーです。しなやかながら、どこか「キリッ」としたフィネスも湛えています。軽やかな白っぽい石灰のニュアンスがスグリ系の果実に混然としています。中域は適度な膨らみを持ち、その奥に、「チリチリ」とした鉄っぽいニュアンスがまだ集合体として感じられます。
時間が経過するとともに、その鉄っぽさは幾つかのミネラリティに変化して行くようで、結構な複雑性も見せてくれます。その部分が完全に解れると完熟なのでしょう。でもそれにはもう少し・・3~5年位ですかね・・掛かると思います。勿論ですが現状で充分な美味しさのバランスを持っていますのでご安心ください。
ポマールとの境に有る「ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ」を南に接する位置に有りますので、やはり豊かな土っぽいニュアンスも持っています。しかし
「グラマラスだね~!」
と言うほどでは無く、そんなニュアンスも持ちつつ、スタイリッシュさの方に振られた味わいかなと感じられます。
現状でも美味しく飲め、この先10年は大丈夫でしょう。色々と評価を調べましたが、このクラスを評価する機関は少なく、「ラ・ルヴェ・デュ・ヴァン」が15.5/20、スペクテイターが89/100と言うものが見つかったのみです。
ん・・noisy 的には90点の大台に乗せて良いんじゃないかと感じますね。そうじゃないと並みのACブルは全部70点台にしないとバランス的に合いません。
とても美味しい・・品格も個性も備わったボーヌ1級レ・ヴィーニュ・フランシュ2007年でした。是非ともご検討くださいませ。