
美味しいブルゴーニュ・ピノ・ノワールって・・どのようなものでしょうか。人それぞれで定義みたいなものは有るかと思います。
じゃぁ、ブルゴーニュ・ピノ・ノワールの本当の姿とは、一体どのようなものでしょうか。・・まぁ、実はこれは、ブルゴーニュ・ピノ・ノワールを開ければ、例えそれがどのようなクラスのもの、造り手のものだったとしても、一つの姿で有ることには違い在りません。
しかしながら、じゃぁ誰が造っても、いつのものでも、どんな状態におかれていたとしても、本当の姿であると言えるかどうかは微妙なところです。だからこそ、コンディションが良いことが大前提の上で、良い造り手を選ぶことが求められるわけですね。
その上で、ブルゴーニュ・ピノ・ノワールの理想を言うのであれば、新酒にはその特別な良さも有るとしても、ある程度熟成したピークで飲めること・・もあるんじゃないかと思います。
2004年ヴィンテージは、どちらかと言うと「普通」とか、「今一つ」と言う出来の年だと言う理解が一般的かと思います。だから2004年ものがリリースされた当初は余り芳しい売れ行きとは言えない状況でした。特別に「悪い売れ行き」と言う訳では有りませんでしたが、ワイン評論家さんたちのプレリリースの評判が良く無かったことが理由として言えます。
確かに、リリース当初は今一つバランスに欠ける感じはしたものです。「まだ仕上がって無い感じ」が漂っていました。
しかしリリースから5年ほどが過ぎると、
「・・いや、2004年もの・・美味しくなってきたよ。」
「2004年って、結局は悪くは無いんじゃないの?」
みたいなご意見が多くなってきました。それでも、
「いや・・好みじゃないなぁ」
と言う方もいらしたと思います。
毎年のようにリリースされるブルゴーニュ・ピノ・ノワールは、やはり、
「その年の特徴」
をしっかり反映したものになっています。次の年は2005年ですが、これはプレリリースが評判良く、皆さんも購入意欲が高まったヴィンテージだったと思います。
しかしながら・・どうなんでしょうね・・2005年もの、今飲んで美味しいでしょうか?・・勿論、美味しくなってきてはいると思いますが、当初の評価が正しかったかどうか・・は中々に微妙なところだとは感じないでしょうか。
2005年と言うヴィンテージは、造り手たちがこぞって、
「グレートイヤーだ。」
と騒いだ年でも有ります。
で、その真意の多くは、
「畑仕事が楽な、何も(余計なことを)しなくて良かった年」
と言うことです。
まぁ、そんなことを真顔で言ってるとするなら、その造り手さんはそうとう手を抜けたのでしょうから、出来は通常と変わらないんじゃないか?・・などとも想像してしまいます。
半面、2004年はどうだったでしょうか?・・2005年とは違い、
「一生懸命にやらなければ厳しかった年」
と言うことが言えます。まぁ、何とか間に合った・・とか、何とか上手く仕上げることができた・・と言うヴィンテージでも有ります。
遅い熟でヒヤヒヤさせられたと言うこともあるでしょう。読み間違いで早々に諦めて収穫してしまえば、浅い味わいのワインになってしまったと言えます。
しかしながら、多くの優良生産者は素晴らしいワインに仕上げた年でもあるんですね。ヴィンテージ背景を含んだ、比較的重厚で複雑な味わいです。結構にシンプルで健康的な仕上がりの2005年とは、やはり結構に違うとも言えると思います。
ジョルジュ・リニエさんは、昔から「フィルターがキツメなので・・」と言う部分が有り、若い時分にはちょっとな・・と言うニュアンスなんですが、もともとは濃密なエキスをさり気なく抽出できる凄腕でも有りますので、それがこの2004年ものにもちゃんと出ています。
ヴォルネイの南側に拡がる4つの1級畑、カレル・スー・ラ・シャペル、レ・ロンスレ、レ・リュレ、ロバルデルをブレンドしています。基本的には村の北側はポマールに接していますので、似たニュアンスが有ります。中ほどはより赤く軽やかな感じが強く、南に行くと、赤を積層させたような強さを持つ感じになり、東はやや重く、西はやや軽く・・と言うイメージです。勿論、例外も有りますし、突出して良い畑もまばらに存在します。
ムルソーのサントノーほどの強いフレーヴァーには成らないものの、重くも無く、軽くは全然無い、中間的、もしくはほんのり重量感のある感じに仕上がっています。これは2004年の特徴をも含むかと思います。
複雑な襞が重なるかのようなテクスチュアから、エロティックな熟成香が漏れて来ます。腐葉土に僅かに獣香的スパイス、ほんのりジャミーにも感じるほど赤みを帯びた果実感が熟して甘みが出てきており、程好いグラが感じられます。
それなりに強かったはず酸は熟して丸みを見せ、美しい減衰カーブを描く長い余韻の最後に、チリチリっとした酸のニュアンスを感じさせてくれます。全般を通して美しく出しゃばらない石灰感が有り、このワインを下支えしていることが伝わって来ます。
いや~・・美味しいです。飲むならこう言うちょっと熟したワインが良いなぁ・・と感じていただけると思いますよ。
実は、完璧な状態では飲んでいないんですね・・見ていただいて判るかと思いますが、完全には「澱下げ」仕切ってはいない状態です。それでもテクスチュアは良いですし、「澱の感じ」はさほどしないです。
フィルターはしているので、大きな澱は有りませんが、滅茶苦茶細かい澱が有るはずです。熟してグラが有りますんで、
「そう簡単には透明度は高まらない」
ほどの細か~~~い澱が有ると思ってください。
それを下げ切らずにも美味しくいただけますが、完全に下げると・・さらにもっとクリアに、ピュアになり美しくなると思います。
いや~・・美味しいです!・・こういうの、飲んでください。
勿論ですが・・飲み方も有りますよ。それに「開け方」も・・です。雑に抜栓すれば、やはりそういう味わいになります。雑に抜栓するクセがついていらっしゃる方は、自分ではそれは雑じゃないと認識しているはずなので説明が困難ですが、少なくとも、
「頑張って澱を落とす。」
「見えないにしても落とした澱を再度舞わせないように静かに抜栓する。」
「グラスに注ぐ時にもグビッとボトルを急に横にしない。」
などなど・・ちょっと気を使うだけで随分と変わるものです。ソムリエさんでも美味しく入れてくださる方と、ちょっと雑味の出る方と・・いや、お店の方針にもよるかと思いますけど。
是非、良い感じに熟してきた2004年ヴォルネイ・プルミエ・クリュ、挑戦してみてください。2004年ものの印象も大きく変わるかもしれませんよ。お勧めです!