● グージュが良い!・・もの凄く良いです。以前のやや硬さの残るタンニンが目立つ姿は2017年ものでかなり解消され、柔らかく目立たず、質感高いものに変化して来たのはお伝えしました。「眠れる巨人、ついに覚醒か?」とまで書いてしまった以上、2018年ものは相当頑張ってテイスティングし、ドメーヌ・アンリ・グージュの現在の真の姿を暴きたい・・(すみません・・)と思っていました。
そして2018年ものが入荷したんですが・・いや~・・良いですね~・・。
「覚醒した!」
のは間違い無いでしょう。
何が嫌いだったか・・正直に言えば、やはりその「タンニンの姿」です。赤ワインにはやはりタンニンは必要不可欠・・と言いますか、どんな赤ワインにもタンニンは備わっており、熟成や味わいに大きな関与をしています。
しかしながら・・ブルゴーニュワインはエレガンスが重要と考えていますから、
「硬く平板な大量のタンニン」
は好ましく無く、
「質はとても良いが目立つタンニン」
は、悪くないが・・ボルドーじゃないんだから・・と言いたくなってしまいます。
しかしながら、
「実はちゃんと備わっているのに全く判らないほどに仕上がったタンニン」
は、これ、最高ですよね?
昨年の2017年ものは、「質はとても良いが(少し)目立ちたがりのタンニン」が感じられたんですね。それでも他の表情は素晴らしく、
「お~・・グージュもついに来たか?」
と感じさせてくれたわけです。それだけに、2018年もののテイスティングは、ハラハラドキドキ・・「これで元に戻っちゃってたらどうしよう・・」みたいな感情が生まれて来まして、それはもう真剣にテイスティングさせていただきましたよ。
で、2018年ものは、
「実はちゃんと備わっているのに全く判らないほどに仕上がったタンニン」
どころか、
「柔らかさと冷ややかさを持った見事なタンニンを、ミネラリティのオブラートに包みこんで美しいディテールを生み出した!」
素晴らしい表情をしていたんですね。
ですので、畑のテロワールも、モノの見事にクッキリと浮かび上がって来ています。クロ・デ・ポレ・・・旨いですね~・・最高です。こんな価格で良いのかな・・とも思ってしまいます。プリウレも、本来はミネラル組成の性でしょうか、バランスが良過ぎて目立たない味わいに陥りがちのワインが多いと思いますが、ふっくらとした美しい表情に微細な起伏を持っているのが良く判ります。パワフルだがやや粗暴にも感じることの有るヴォークランも、そのまんまの姿に美しさを投影出来ているんですね・・。いや、村名のニュイも滅茶美味しいですよ。
ここからは推測に過ぎませんが、エルヴァージュを若干変えて来ていると思います。そもそも長めの熟成を掛けるのが伝統のようですが、たぶん・・そこを変えて来ているはず・・と感じました。
そして、自然派なアプローチもついに身を結んだんだろうと思います。ピノ・グージュ(ピノ・ブラン)の白ワインも滅茶美味しいですよ。これから先にご案内予定のドイツはバーデン、ヴァーゼンハウスのヴァイスブルグンダ―が絶妙に旨いですが、若干体形は異なるとしても、そこに「気品」をプラスするとピノ・グージュに近くなるなぁ・・などと感じています。
今回のテイスティングは、10アイテム中9アイテムで、1級レ・サンジョルジュのみテイスティングできませんでした。(ですが色々確認の意味を込めて合計10本開けています)ですが、
「今までに無いほどのレベルに仕上がった2018年、ドメーヌ・アンリ・グージュ」
で有ることは間違い無いです。
美しさ、雅さを感じさせる素晴らしいワインです。是非飲んでみて下さい。お勧めします!
■2018年アンリ・グージュ
2018年は冬から4月中旬くらいまでは雨が多く寒い日が続いたが、それ以降は気温も上がって葡萄の成熟は早く進んだ。しかし、7月に3度に渡って降った雹の被害が深刻でニュイサンジョルジュ村の南側の畑では収穫量が半減してしまった区画もあった。収穫できた葡萄の出来は素晴らしく、ジャミーな果実味が豊かでリッチな飲み応えのあるワインになっているが、長熟型で飲み頃になるまでには時間が掛かるだろう。
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「ニュイ=サン=ジョルジュの眠れる巨人、ついに覚醒か?!」
そう言い切ってしまいたくなるような2017年のアンリ・グージュをご紹介致します。noisy wine では2013年ものを少量ご案内して以来のご案内です。
そもそも・・2014年以降のアンリ・グージュを仕入れていなかった・・訳では有りません。ちゃんと仕入れてましたが・・ご案内するには至っていませんでした。
だって・・その時にご案内したとしてもそんなに売れないだろうし、何よりアイテムが多いので、書く手間と売れ行きを想像しますと、今ご案内しないで、美味しくなってからの方が良いだろうなぁ・・と判断したためです。
ところが2016年ものが入って来た時に、
「まぁ・・どうせそのままお蔵入りかな・・」
と思ってテイスティングだけはしていたんですが、
「・・あれ?・・大分変化して来ているんじゃない?」
と感じました。元々、しっかりな果実としっかりなタンニンが同量ほどしっかり存在した大柄系のワインなんですが、タンニンの質がかなり向上し、構造の大きさよりもエレガンスが見えてくるようなスタイルになって来ていたんですね。
なのですぐにご案内しようか・・とも思ったんですが、やはりこのタンニンが丸くなるには時間が掛かるか・・と思い直し、お蔵入りにしてしまいました。
2017年ものが入って来まして、A.C.ブルゴーニュと村名を飲ませていただきました。
「げげっ!・・これ、アンリ・グージュなの??」
いや~・・もう、青天の霹靂とはこのことですよ。ビックリしたったらありゃしない・・。それは・・同時に開けたルーミエさんのA.C.ブルもビックリ・・同じような凄いミネラリティが前面に出ていて、「つるっつる」のテクスチュアと、適度に果実が見え隠れする、
「超エレガント系!・・のピノ・ノワール!」
に大変身していたんですよ・・両アイテムともです。
時に野暮にも感じられた多めのタンニンは全く感じず、ルーミエのA.C.ブルとスタイルが見事に被ること!・・最後には、どっちのグラスがどっちだか判らなくなる始末・・です。
しかもその「透明なクリスタル風なミネラリティ」の心地良いこと・・そしてそのミネラリティに包まれた要素から漏れだすエキスの風味、それが昇華してピノ・ノワールの甘美なアロマが香り出すと、
「本当に自分はアンリ・グージュを飲んでいるんだろうか?」
とさえ疑いたくなってしまいました。
フィネスさんの担当さんに聞くと、ちょうどヌーボーの週に有った試飲会でも滅茶苦茶好評で、その後の商談会などで早々に・・
「2017年のアンリ・グージュは完売!」
になってしまったそうです。
まぁ、noisy のところにはすでに割り当て分が決まっていたので問題は無かったんですが、
「いや~・・そうなると、年末までの短い時間に、上級キュヴェを含め何とか数本はテイスティングして確信を持ってご案内しないといけない!」
と言うことになってしまいました。
なので、2014年から2016年のキュヴェはまた当分そのまんまですが、物凄い大変身をして超エレガント系になった2017年のアンリ・グージュをご案内致します。
2017年のアンリ・グージュは、2016年以前とはスタイルが全く異なります。まぁ、2016年ものは2017年ものの傾向を1/4ほどは持ってはいます。
どちらかと言うと、多めの果実と多めのタンニンが前面に出ていて、ミネラリティは完全に裏に回っている大柄系のピノ・ノワールでした。ニュイらしい・・と言えばそうなのかもしれませんし、5年ほど置くと溶け込んだタンニンが丸く、甘くなり、見事な味わいになるのは間違いありません。多くのアンリ・グージュ・ファン(マニア)がそうであるように、
「アンリ・グージュは寝かしてから飲む」
のが一般的でした。
ところが2017年ものは・・全く違います。果実の種類は異なりますが、シャンボールの雄、ジョルジュ・ルーミエ張りの見事なミネラリティが、まず第一に顔を出します。それは球体の表面をコーティングしているかの如きです。
そのコーティングの中には、今までの膨大なタンニンが有る・・訳ではありません。調和され、見事なまでに下支えに回っています。
言ってみれば、2016年以前と比較すると、二次元的に言えば、
「ぐるっと180度、前後が入れ替わっている円」
もしくは、三次元的に言えば、
「今まで表面を覆っていたものは大福のアンコになり、今までアンコだったものが表面を覆っている球体」
だと言えます。
なので、印象が全く異なるんですよ。
因みに、メディア評価では、トップキュヴェのレ・サン=ジョルジュは、ジョン・ギルマン氏が96ポイントで、
「2017 Les St. Georges is going to be one of the best recent vintages of this great wine produced by the Gouges family in a long time.」
と非常な高評価をしています。まぁ、言ってしまえば、今までで最高の出来だよ!・・とベタ褒めしている訳です。
アドヴォケイトは93ポイントと低いですが、まぁ・・noisy的なことに言及しています。つまり、
「これはほとんど戸惑うほど上品でエレガントなヴィンテージ・・云々」
そう・・多くのテイスターは戸惑ったに違い無いんです。知っていればいるほど・・
「一体どうしたんだ?・・何が起きたんだ?」
と狼狽するに違いないんです。
noisy も、2017年ものは二枚看板のレ・サン=ジョルジュとレ・ヴォークランまでは飲めていませんが、それ以外のキュヴェのほとんどをテイスティングし、紹介することにさせていただきました。3年間も溜め込んでいた訳ですが、それを放っておいてもご紹介したい2017年、アンリ・グ-ジュです。ブルゴーニュワインファンなら是非、お確かめいただきたいと思います。
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第一次世界大戦後、父親より9haの畑を譲り受けたアンリ グージュ氏は1925年にドメーヌを設立し、マルキダンジェルヴィル氏やアルマン ルソー氏らと共にその時代に蔓延していた粗悪なブルゴーニュワインを無くす為にINAOを設立し、区画やクラスを決める際、自分たちの畑があるニュイサン ジョルジュとヴォルネーには自己贔屓をしないようにグラン・クリュを設定しませんでした。
アンリ氏の孫のピエール氏、クリスチャン氏がそれぞれ畑と醸造を担当してドメ ーヌを運営していましたが、ピエール氏が定年を迎えたため、現在はその息子のグレゴリー氏が中心となって、ニュイ サン ジョルジュのみ15haの畑でワイン造りを行っています。
昔からコート ドールの傾斜が急な畑では、雨が降った後に土が流れてしまうという問題がありました。これに対し、ピエール氏は1975年に葡萄の木の列の間に芝生を植え る方法を生み出しました。これは降雨後の土地の侵食を防ぐだけでなく、雑草が生えるのを抑える働きもありました。また、丈の高い雑草が生えない為に畑の通 気が良く、カビの発生を抑制する効果もありました。さらに、芝生があることで葡萄の根は横ではなく下に向かって伸びるため、地中深くの養分を吸収すること ができ、結果としてテロワールを明確に表現することができました。
また、徐々に畑をビオロジック(有機栽培)に変えてきていて、2008年から100%ビオロジックになりました。 畑で厳選して収穫された葡萄は2007年に新設された醸造所で選別され、果皮や種の収斂性のあるタンニンを出さないように葡萄の実は潰さないまま除梗機で100%除梗され、そのまま地上階にある醗酵タンクへ重力によって運ばれます。アルコール醗酵には白はステンレスタンク、赤はコンクリートタンクを使います。コンクリートタンクはアンリ グージュ氏の時代に造られた古いものが使われており、内部には酒石酸がびっしり付着しています。このコンクリートタンクはタンク上部が開いている開放桶ではないのでアルコール醗酵の際に発生するガス(二酸化炭素)がタンク内部に溜まりやすく、醗酵作用がゆっくりと進むので、じっくりと葡萄から色とアロマを引き出します。櫂入れはタンク内に設置されている金網状の機械で行い、ガスによって押し上げられた果皮や種と果汁の接触を増やしてアロマやタンニンを引き出します。その後、新樽率約20%の樫樽に移されマロラクティック醗酵をさせて18ヵ月間熟成されます。とても綺麗な葡萄が取れるのでそのままでも十分透明感がある為、コラージュやフィルターは行わずに瓶詰めされます。