● モルゴンの主・・・そう言っても、もう良いでしょう。ジャン・フォワイヤール(ジャン・フォイヤール)はそれだけの存在感の有る素晴らしいクリュ・ボジョレーを造っています。ガメイだぁ、ピノだと、そんなものは土地に合うかどうかだけだよと・・・当たり前のことを優しく教えてくれるワインです。

■ミレジム情報 当主ジャン・フォワヤールのコメント
2013年は、最終的には状態の良いブドウを収穫できたが、ミレジム的には難しい年だった。春は気温が上がらず雨の多い天候が続き、開花のスタートが例年よりも 3 週間遅れた上に時期も長くまばらだった。また、湿気が高かったためベト病の心配が常にあり、ボルドー液の散布もいつも以上に回数が多かった。7 月後半から天候が回復し、遅れていた成長を幾分取り戻したが、9 月に入り再び涼しく不安定な天候に逆戻り。ブドウの糖度がなかなか上がらず、12%を超える完熟したブドウを収穫するのに例年よりも 2 週間以上多く待たなくてはならなかった。
2014年は、2013年同様に難しい年だった。スタートは全て順調で、開花も例年より 3 週間も早く、雨が降らないことが少し心配なくらい天気に恵まれていた。だが、7 月に入り一転、気温も低く 1 日おきに雨が降るような不安定な天候が 8 月終わりまで続いた。夏らしい日がほとんどなく、ブドウの成長にもブレーキがかかり、毎日がベト病対策に追われる日々だった。このまま行くとブドウが未熟のまま収穫に入らざるを得ないと半ば絶望的だったが、9 月に入り再び天気が戻ってきた。夏が遅れたようにやって来て、ブレーキのかかったブドウも全てみごとに熟し、最終的に傷のないきれいなブドウを収穫することができた!
■「ヨシ」のつ・ぶ・や・き
今年もジャンの収穫に参加した!2016年は、コルスレットとフルーリーに雹の甚大な被害があったが、モルゴン全体としては 2010年のようなバランス良いワインとなりそうだ!
ところで、今回の収穫参加でジャンが新しくカーヴを建設していることが判明!収穫時の朝は暗かったので気づかなかったが、収穫から帰ってきた後、ジャンのカーヴの隣に目をやると、建設途中のどでかい新カーヴがあるではないか!ジャン曰く、今のカーヴは醸造所としては全く問題ないが、熟成カーヴとしては地下が狭く作業の効率がものすごく悪いとのことで、作業効率の良いカーヴを新たに建設することにしたそうだ。来年から正式に稼働する予定の新設カーヴの広さは小学校の体育館並みで、その中でも特筆すべきことは、地下に 100m2ほどの個人用のワインストック場を設けることだ!ストックのスペースを設けたジャンはこれから将来に向けて毎年 600 本以上のワインを確保する予定だ!すでにレジェンドとなっている彼の古酒がベストのコンディションで長年熟成されていくと思うと、ロマンを感じずにはいられない・・嗚呼、飲ませて欲しい~!!
(2016.9.29.のドメーヌ突撃訪問より)
Jean FOILLARD (ジャン・フォワヤール)
生産地
マコンからリヨンへ南下する途中、右手に大小起伏のある山々の連なる光景が一面に広がる。ボジョレーの街ベルヴィルから西へ6kmほど緩やかに登りきったところに、クリュ・ボジョレーのひとつであるモルゴンの産地ヴィリエ・モルゴン村がある。その村の中心地から少し外れたところにジャン・フォイヤールのドメーヌがある。
畑の総面積は11ha。そのうちの6haはクリュ・ボジョレーの畑で、モルゴンの中でもとりわけ評価の高い区画である「コート・ド・ピィ(Cote
de Py )」とその近辺に持つ。その他の畑もちょうどモルゴンとボジョレヴィラージュを挟む境界付近に点在し、クリュ・ボジョレー、ボジョレー共にテロワール的には非常に恵まれた環境下でブドウを栽培している。気候はコンチネンタルで、夏はたいへん暑く冬はたいへん寒い。東西南北に広がる丘陵地帯によって、冷たい風や多量の雨からブドウ畑が守られている。
歴史
現オーナーであるジャン・フォイヤールは、以前はワインの瓶詰め会社で働いていた。当時、仕事で瓶詰め設備のない小さなワイナリーをまわる機会の多かった彼は、マルセル・ラピエール、ギイ・ブルトン、イヴォン・メトラ等、現在活躍する自然派ワインの生産者と深く知り合い、次第に彼らのワインづくりに興味を抱くようになる。特にマルセル・ラピエールに影響を受けたという彼は、ジュール・ショーヴェの本を片手に、マルセルのカーヴに足繁く通いながら独学でワインの醸造を勉強した。1981年、彼の義父が老年により畑仕事を辞めたのをきっかけに、畑を譲り受け本格的にワインづくりをスタートする。現在ではマルセル・ラピエールに次ぐボジョレー自然派ワインの代表格となっている。
生産者
現在、ジャン・フォイヤールは11haの畑を4人で管理している。ブドウの品種は、ガメイのみで、樹齢は27~70年。畑は硫黄とボルドー液散布のみで、100%ビオロジック。とにかくブドウの質にこだわり、収穫時の選果は粒レベルで傷んだブドウは一切入れない。低温でのマセラシオンで、じっくり時間をかけた仕込みから出来上がるワインはまさに上品の一言。彼のつくり出す果実味豊かでエレガントなワインは、自然派ワインの愛好家以外の人たちからも評価が高く、ワインガイド「ル・クラスマン」を始めさまざまなガイドで取り上げられている。
ジャン・フォイヤールの+α情報
<もっと知りたい畑のこと>
土壌:サーブル・カリケール
総面積:11ヘクタール
品種:ガメイ、シャルドネ(買ブドウ)
樹齢:27~70年(シャルドネは20年平均)
剪定方法:ゴブレ
生産量:50hl(1ヘクタールあたり)
収穫方法:収穫者15人前後でケースを使った手摘み。畑で粒レベルの選果
ビオの認証:なし
<もっと知りたい醸造のこと>
醸造方法:赤はマセラシオン・カルボニック、白はトラディショナル。 赤は、ブドウを畑で選果後、房のままセメントタンクへ。その前にタンク内に「ピエ・ド・キューヴ」と呼ばれるすでに先に熟したブドウを敷いて醗酵を促し、その上に収穫したブドウを入れていく。いったんキューヴの温度を7~8℃まで下げて、低温マセラシオンを施す。この間に二酸化炭素をキューヴ内に加え充満させておく。タンクを密閉のまま発酵・浸漬期間は23日間。ルモンタージュ、ピジャージュは一切なし。垂直プレス機で時間をかけてプレスをした後、フリーランとアッサンブラージュ。古樽または大樽(フードル)、もしくはセメントタンクに移し3~8ヶ月の熟成。
白は、畑での選果後、房のまま垂直プレスで4時間かけて圧搾。プレス後、ジュースをイノックスタンクに移し、温度14℃~18℃での低温発酵で7ヶ月の醗酵熟成。澱引き後1ヶ月の清澄を経て瓶詰め。
酵母:自然酵母
発酵期間:セメントタンクで23日間
熟成方法:古樽、フードル、イノックスタンクまたはセメントタンク(モルゴンはセメントタンクで3~4ヶ月、モルゴン・コルスレットは古樽で7ヶ月、モルゴン・コート・ド・ピィは古樽50%フードル50%で8ヶ月、モルゴン・コート・ド・ピィ・ヴィエーユ・ヴィーニュは古樽で8ヶ月の熟成)
SO2添加:瓶詰め中に極微量
熟成樽:2~5年樽
フィルター:なし、白はメンブランシート
ちょっと一言、独り言
初めてジャン・フォイヤールのワインを知ったのは2年前、ロワールのドメーヌで剪定作業を1週間だけ手伝いに行った時だった。2日目の夜に出してもらったワイン、あまりにも美味しくてそのワインの名前だけなぐり書きしたメモ帳が今でも残っている。そのメモには Py だけしか書かれていないが、それがまさにジャン・フォイヤールのMorgon Cote de Py だったのである。以後は、自然派ワインのサロンがある度に、彼のブースで顔を合わせ試飲をさせてもらい、その度に一人で感動していたが、今回のように実際に彼のドメーヌに赴いてじっくり話しをしたのは初めてだった。
彼の印象は、見た目の仏頂面とは正反対に、性格は明るく、ワイン好きのイイおっちゃんという感じだ。「昨日の飲み過ぎたお酒がまだ残っていて頭がボーとしているんだ」と言いながら、さっそく封の切られていないモルゴンを開けて、自分にも私にもグラスなみなみに注いで朝から迎酒!私はこれからジャンのワインの試飲と午後から別のドメーヌ訪問が控えていたので、注がれた一杯をゆっくり口にしながら話しを進めていったが、彼は話しの間に軽く一本を空けてしまった!確かにジャンのワインはどれも美味しいので、普通に一本くらいは簡単に空いてしまいそうだが・・・でも、これから畑とカーヴを見に行かなければならないし、いきなりのハイペースで大丈夫なのだろうか?
そんな心配はよそに、彼は酒の勢いで多少明るくなっただけで、畑案内とカーヴ説明はしっかりこなしてくれた。さすが大モノは違う!ちなみに彼にプライベートの趣味を聞いたところ「飲むこと!」と間髪入れずに応えてくれたので、相当ワインが好きなのだろう。
彼は、ジュール・ショーヴェやマルセルラピエールのワイン哲学から大きな影響を受けているが、実際に醸造学校等で学んだことはないという。彼のコンセプトはワインらしいワインをつくるのではなく、ピュアなブドウをそのまま醗酵させたお酒をつくることで、低温でマセレーションすること以外は技術的にほとんど人の手をかけない。かの Bettane&Desseauve の Le Classement ではジャン・フォワヤールのワインを「全ての要素が素晴らしく融和されて、みごとなバランスを保ちながらも、後味に若々しいタンニンを感じる、誰にもまねできない彼独特の秘法が隠されている」と絶賛する。彼には天性の才能があるのだろうか。
ジャンはまた、当然ながらボジョレーヌーボーも生産する。彼のヌーボーの特徴は長いマセレーション。ヌーボーは解禁日が決まっているため、実際多くのワイナリーは、解禁日に遅れないようマセレーションの期間を短くしたり、発酵温度を高めに設定し発酵をスムーズに終わらせるようなリスク回避を行なっている。一方で、彼のヌーボーはそのような流れに逆行するかのように、自然酵母、低温長期浸漬と解禁日ぎりぎりのせめぎ合いで少しでも品質の向上を図る努力をしている。
「ボジョレーヌーボーが、世界的にある種の収穫祭的な要素で盛り上がるのは大いに結構だが、本当にしっかりつくったボジョレーは、ブルゴーニュのグランクリュに匹敵するくらいのポテンシャルがある」
と言い切る彼は、ヌーボーがたんなるお祭り的なキーワードではなく、常にクリュ・ボジョレーの試金石となる質の高いものでなくてはならないと肝に銘じている。 品質よりも商業主義に走りがちなボジョレー生産者に一石を投じる彼の素晴らしい渾身の力を込めたキュヴェのラインナップをぜひお試しあれ!