● 海外メディアにも全く注目されず、評価ポイントさえ下されないヴォーヌ=ロマネの極めて小さなドメーヌで有りながら、
「・・うわ~・・美味しいね~・・綺麗だね~・・エレガントだね~・・!」
と、日本のワインファンを唸らせ続けているのがこの人、ジャン=ルイ・ライヤールさんです。
飲めばもしかしたら判ると思いますが、全房での高温発酵系で醸造したエキス系のエレガントなピノ・ノワールです。
また、もしかしたら飲んでも判らないかもしれませんが栽培はビオロジックで、So2 は少量使用するタイプです。
そして醸造系はD.R.C.同様ですから、味わいもD.R.C.風・・と言うことになります。
ライヤールさん、ボーヌの教育センターの栽培・醸造の教師をされていらっしゃいます。そんな方が造っておられる素晴らしいワインが、全く注目もされずに放置されている現状は、日本のワインファンにはもしかしたら有難い状況なのかもしれませんが、ワインを取り巻く業界としては非常に残念なことじゃないかとさえ思っています。
難しかったはずの今回ご紹介分、2021年ものですが、
「ま~・・とにかく素晴らしい!健康的でエキスが美しく出た、まさにお手本のようなピノ・ノワール!」
と言えます。
流石に超弱い円と、半分ほどしか収穫できなかった性も有り、A.C.ブルで4千円超えになってしまいましたが、長らく3千円ほどで販売させていただいていました。
もし知らない方がいらっしゃるのでしたら、
「・・そりゃぁ・・とんでもない不幸としか言いようがない・・」
です。
ジャン=ルイ・ライヤールの2021年、是非飲んでください。低温発酵系のジャイエ風、果実たっぷりなタイプでは有り得ず、高温発酵系のD.R.C.風、美しくも伸びやかなエキスが織りなす、エレガントで官能的なピノ・ノワールの世界を教えてくれます。ご検討くださいませ。
■ 2021 ヴィンテージに関するジャン・ルイ・ライヤールのコメント
2021年は、ヴィニュロンの生活を困難にするような天候が相次ぎました。3月は非常に湿った冬の土壌が急速に暖まり、3月末には非常に早い芽吹きが始まりました。
しかし、4月6日から8日にかけて、3夜連続で気温がマイナス8度まで下がりました。これは、主に斜面に位置するブドウ木が大きな被害を受けました。しかし、4月の天候は非常に乾燥していて、べと病の発生は殆どありませんでした。
5月は平年に比べて30%を雨が多かったものも、非常に涼しかったため、病害の発生が抑えられました。
6月は非常に乾燥した暑い月であったため、開花が早く、6月8日から15日にかけてブドウは一気に開花しました。結実も非常に早かったため、この時期の農作業は通常7~8週間かかるところを3週間で行うことができました。
7月10日頃にブドウ木は平年よりも2~3週間早く房を閉じ、月末にヴェレゾンを開始しました。病気、特にウドンコ病は、ブドウが抵抗力を増すヴェレゾン直前の7月中旬に大攻勢をかけるので、衛生的な監視が必要でした。しかし、数年前から100%オーガニックに取り組んでいる私達(甥のヴァンサン・ペンダヴォワンがドメーヌを徐々に私から引き継いでいます)は、雨季の間にブドウの木を処理し、繊細な時期のブドウを保護することができました。
8月に入ってからの寒さがブドウの成熟を妨げたましたが、幸いにも8月15日からは気温が高くなり、ブドウの成熟を助ける夏の暑さが戻りました。霜や連続した寒波、熱波に見舞われた区画によっては、成熟度が同じではないため、最高のブドウを得るために9日間かけて何段階かに分けて収穫を行うことになりました。
結論から言うと、糖度が高く、総酸度も良好なレベルのワインができました。リンゴ酸の量が平均よりやや多いため、マロラクティック発酵が通常より遅れて行われました。収穫まで少し待つことができたので、タンニンの熟成が得られ、1999 年のヴィンテージに近いものとなりました。健全でバラ房の小さなブドウで、ミルランタージュのブドウも少しあり、醸造を行うことができました、果皮はかなり厚く、果汁の収量はかなり少なめでした。このため、私達のこれまでの少量醸造の経験が大いに役立ちました。
大量生産に慣れている造り手の中には、ほとんど空っぽの大きなタンクで、温度管理、抽出、パンチングダウンを行うことが非常に難しく、機械では不可能な場合もありました。そのため、ポンプを最大限に使ったポンピングオーバーを行った造り手もいました。しかし、これは酸化現象が発生するため、推奨されるものではありません。
ドメーヌでは、良好な抽出で、美しいルビー色で、小さな新鮮な赤い果実のアロマがあり、柔らかいタンニンと美しいストラクチャーを持つ、将来性のある美しい赤ワインを得ることができました。
白ワインは、柑橘系のニュアンスを持つアロマが主体で、生き生きとしていて、正確で、時間が経つにつれて丸みを帯びてくるでしょう。
ジャン・ルイ・ライヤール
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ヴォーヌ=ロマネに有って、非常に質の高いエキス系の見事な味わいのワインを、非常にリーズナブルに提供してくれる唯一のドメーヌ、ジャン=ルイ・ライヤールの2019年ものが入って来ました。毎年全く残ることなく完売を続けていますが、それはやはりヴィンテージ背景が見えつつ見事な仕上がりを見せる味わいとコストパフォーマンス故でしょう。
早速届いた2019年ものを、トップ・キュヴェのヴォーヌ=ロマネ1級レ・ボーモンを除いて4アイテム、テイスティングさせていただきました。
2019年はライヤール本人が言うように、とても収穫量が少ないヴィンテージですが、「ミルランダージュ」の葡萄が多く、いつもよりやや長熟さのある仕上がりになっています。
細かいことは各コラムに記載させていただきますが、その中でも・・
「早く飲んでも美味しい・・早い仕上がりをしているキュヴェ」
は、村名ニュイ=サン=ジョルジュと、A.C.ブル・ブランのレ・シャサーニュです。
村名ニュイ=サン=ジョルジュは今の段階で結構に開いた感じが有り、美しいエキス感からの表情についつい・・うっとりしてしまうほどです。
また、A.C.ブル・ブランのレ・シャサーニュがまた素晴らしい出来で、今までで一番・・ほぼ完全にエキス化がされ、微細な表情が複雑性により多彩で官能ささえ感じられるものです。これは少ないですが・・飲んだらビックリするほどだと思います。
「少し休ませて・・もしくは熟成させて飲むべきキュヴェ」
は、村名ヴォーヌ=ロマネとA.C.ブル赤のレ・パキエです。勿論ですが、飲めていないレ・ボーモンもそうかと思います。
「2019年ものはミルランダージュが云々・・」
と言うライヤール本人の言葉が裏付けられる味わいで、相当に集中していて、見事なタンニンが有り、ミルランダージュらしい濃密な味わいに仕上がっています。その反面、
「まだ仕上がり切っていない」
のもしっかりと透けて見えています。ややタンニンが前に出ていて、エキスな味わいではあるものの、まだまとまり切っていないんですね。
ですのでこの2アイテムは、
「最低1カ月の休養」
が必要で、出来ることなら「オリンピックが終わった頃」から手を付け始めるのが正解かと思います。
ですが、仕上がり自体は相当に良く、2015年ものの美しい仕上がりに凝縮感からの力強さを加えたようなニュアンスですので、相当に期待できると確信しています。
どうやら今回の2019年ものは一発で終了のようですので、是非ご検討の上、お早めにご注文いただきますようお願いいたします。
■2019 ヴィンテージに関するジャン・ルイ・ライヤールのコメント
2018 年の12 月は雨が多く、平年よりも2.2 度も高い気温で年が暮れました。2019 年は、平均よりも約1.1 度暖かい温暖な3 月によって芽吹きは平年よりも早く、およそ半分の畑で4 月初めに芽吹きました。しかし、寒波の訪れと4 月5 日の霜によって、芽吹きが早かったブドウ木が被害を受けてしまいました。
4 月中旬からは、気温が上がり、5 月になると夏のような熱波に見舞われ、少しの雨を交えて、熱波は6 月初めまで続きました。6 月に入ると涼しい気温と風によって、ブドウ木の成⾧が鈍り、結実不良によるミルランダージュが起こりました。しかし、日照量は平年よりも多く、7 月から収穫までの2 か月の気温は平年よりも高く、水不足が心配になるほどでした。
それでもブドウ木は干ばつに耐え、9 月の好天によって、成熟したミルランダージュの(それでも良好な酸を備えた)ブドウを得ることができました。この素晴らしい天候と、病気にかからなかった全く健全なブドウを状態に鑑みて、収穫を10~12 日ほと遅らせ、9 月19~21 日に収穫しました。2019 ヴィンテージは、タンニンと酸、自然アルコール度数のバランスが完璧で、前途有望で、素晴らしい熟成のポテンシャルを秘めています。
ジャン・ルイ・ライヤール
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待望の2018年、ドメーヌ・ジャン=ルイ・ライヤールのご紹介です。これほどまでにリーズナブルで、ブルゴーニュの聖地の素晴らしい味わいを届けてくれるのは、ジャン=ルイ・ライヤールだけです。他にいらしたら是非教えてください・・(^^;;
今回は、あのフラッグシップ、1級のレ・ボーモンもいただきました。これは非常に希少です。
「あと7割増しで欲しい!」
と言って交渉したんですが・・何だかんだと言い訳された挙句、結局最初に提示された量しか来ませんでした。(・・だからそれじゃテイスティング代が出ないってば!)
2018年も非常に素晴らしいです。伸びやかで健康な2017年ものに対し、2018年ものは「複雑性」が乗っかっていますので、ポテンシャルは確実に上回り、その分、育っていくのに少しタイミングが遅くなる・・と感じました。
それにしても滅茶美味しい!・・ヴォーヌ=ロマネの生産者で最もリーズナブルで最もエキシーです。A.C.ブルでさえ・・非常に・・です。(ここでは書きませんが・・)是非ともご検討くださいませ。
■2018ヴィンテージに関するジャン・ルイ・ライヤールのコメント
2018年の冬は湿気が多く雨がちでしたが、4月初めからの季節外れの暖かさで、ブドウの芽吹きは非常に早くなりました。しかし、5月上旬に気温が氷点下にまで下がり、ブルゴーニュは霜の被害を受けてしまいました。幸運なことにヴォーヌ・ロマネは被害を免れました。その後暑さが戻り、ブドウは5月末に開花しました。そして良好な条件のもとで成長しました。
6月に入ると雨がちの日が2週間程続きました。この間はべと病の心配がありましたが、管理を怠りませんでした。その後は乾燥した暑い日が戻り、それは収穫前まで続きました。
2018年は4月から9月にかけて、1559時間の日照時間がありました。これは平年よりも20%も多い日照時間です。この日照量のおかげで、酸と糖とタンニンの並外れたバランスを備えた、健全で成熟した素晴らしいブドウを収穫することができました。
ジャン・ルイ・ライヤール
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ジャン・ルイ・ライヤールの2017年が少量入荷してきました。大変小さなドメーヌですので、人気の高さに数が本当に足りません。
2016年ものの美しいエキスのワインには皆さんも心を奪われたに違いありません。難しかったはずのヴィンテージに「そつなく」ではなく、「すばらしい」ワインに仕上げた実力は確かなものと言えます。
2017年ものは前年のような苦労は無かったようです。前年はほぼ9月の後半(28日頃)に収穫していますが、2017年ものは前半(8~9日頃)ですから、3週間も早いですし、生産量も1.5倍~1.7倍ほどに増えているようです。
で、非常に少ない1級レ・ボーモン(公称900本)は片手の指さえほとんど余るほどの数量しか入ってませんので飲めませんでしたが、A.C.ブル、村名ニュイ=サン=ジョルジュ、村名ヴォーヌ=ロマネをテイスティングさせていただき、2017年ものの姿を見させていただきました。
2016年ものがリリース直後から凄いバランスを見せたのに対し、2017年ものはより複雑性高く、より品格を感じる味わいでした。ある意味、リリース直後から完成された味わいの2016年・・は、最初から非常に美味しかった訳ですが、2017年と比較してしまえば複雑性は届かなかったかと言えます。
2017年は複雑性の高い味わい・・つまりよりポテンシャルが高い訳で、その分、「現時点でのまとまり」と言う点では2016年に及ばない訳です・・村名ニュイ=サン=ジョルジュを除いては。
いや~・・ニュイ村名、今絶好調です。滅茶苦茶旨いです!・・しかも激安ですし!・・勿論、A.C.ブルもA.C.ヴォーヌ=ロマネもその意味では「時間の問題」です。輸入の疲れが取れた休養バッチリ状態に持ち込んでいただいた段階で、
「エキスたっぷり!ピュアでエレガント、複雑性も高い見事な激安ピノ・ノワール!」
に大変身です。
ブルゴーニュワインの暴騰が懸念される中、ブルゴーニュのど真ん中の誰もが飲みたいと思っているピノ・ノワールをリーズナブルに供給してくれている数少ないドメーヌさんです。是非飲んでみてください。超お勧めします!
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素晴らしかった2015年ものは、ま~・・飛び抜けて美味かったですよね~。しかも価格も実にリーズナブル!・・ヴォーヌ=ロマネの生産者さんですよ?・・今時はヴォーヌ=ロマネ村名など、ネゴスものでもこんなプライスは不可能かと思いますが、それも、
「滅茶美味しい!」
ですからね。2016年ものも期待してテイスティングに臨みました。今回は1級レ・ボーモンは無し、次回以降の入荷を期待しています。
物凄く健全で何のストレスも継ぎ目も無い見事な2015年ものに比べ、2016年ものはやはり2016年らしい複雑性を秘めた大きな構造のワインだと言えます。
この辺の仕上げ方は実に見事で、
「ジャン・ルイ・ライヤールって、こんなに造りが上手かったんだ・・」
と驚かされました。
今飲んで納得の味わい、3年後に期待を大きくし、6年後以降、大きく膨れたボディからエレガンスと複雑なアロマを見せてくれるものと感じた2016年です。
■ヴィンテージを追うごとにワインの純粋さと透明感がアップ
【1968 年から全房発酵を貫くヴォーヌ・ロマネの小さな巨人】

1968 年から元詰を開始したドメーヌ・ライヤールは、栽培面積3ha 弱、総生産量5~6 千本という、他のヴォーヌ・ロマネのドメーヌに比べて極めて小さなドメーヌです。ガイド等への掲載は殆どありませんが、コストパフォーマンスの高さで、欧米では個人客を中心に高い人気を集めています。
■全房発酵の第一人者
温暖化の影響と世代交代によって、2010 年代からブルゴーニュで急速に導入が進んでいます。しかし、ジャン=ルイ・ライヤールは元詰めを始めた1968年から半世紀近く一貫して全房発酵にこだわり続けてワイン造りをしてきました。全房発酵を行うためには何よりもブドウの果梗まで成熟させる必要があり、収穫をぎりぎりまで遅くしなければなりません。また、ピジャージュ(櫂入れ)は機械を使わずに足で行わなければならず、より多くの手間がかかります。ジャン=ルイ・ライヤールはDRC やルロワと共通するこの哲学をずっと実践し続けている全房発酵の第一人者なのです。
■職人的な緻密な作業から生まれる真のハンドメイドワイン
ジャン=ルイ・ライヤールは、ロマネ・コンティで働いていた両親から1989 年にドメーヌを継承しました。彼は自分の目の届く範囲の小さな畑で、職人的な緻密な手作業による「真のハンドメイドワイン」にこだわって仕事をしています。例えば、発酵層からワインを引き抜く際も機械は使わずに、手作業で小さな桶を使って行っています。ドメーヌのワインの品質向上は特に2010年代に入ってから目覚ましく、ヴィンテージを追うごとにワインの純粋さと透明感がアップしています。
■ドメーヌの醸造について
近年のブルゴーニュでは、湿度が高い涼しい夏、そして夏の日照不足を補って余りある程の素晴らしい9 月の天候によって、可能な限り成熟したブドウを得るために、以前よりもずっと遅く収穫ができるようになりました。それは特に梗の成熟に顕著に表れています。こうしたことから、近年、全房発酵がブルゴーニュで広がりを見せているのだと思います。いずれにしても、全房発酵を行うためには成熟した果梗を得ることが非常に重要です。私のドメーヌでは最も良く熟す区画や除梗しないブドウに適した区画を毎年見極めて果梗のついたブドウを収穫しています。
まず、全房のブドウを発酵層の深部に置くことで、発酵が長く行われるという効果があります。全房のブドウはブドウの粒の中で発酵が行われるため、発酵層の中に温度の高い核の部分が生まれ、30度を超える温度が長く維持されるのです。そして、アルコール発酵の期間がより長くなることによって、最上の抽出と、異なる成分(タンニン、色素、ポリフェノールなど)の間の自然な結合が可能になります。また、果梗が発酵中の急激な温度上昇を抑えて、固体と液体の間の良好なバランスを取ってくれます。発酵中に機械を使うピジャージュ(櫂入れ)やポンピングオーバー、激しい攪拌を行うと、揮発性の高いアロマがピノ・ノワールから失われてしまいます。このため、ドメーヌではこのような激しい行為を行わず、足でソフトなピジャージュを行って、揮発性の高いアロマがワインに残すようにしています。
果粒の中で発酵したマストは、圧搾によって開放されて、焙煎やトースト、スグリなどのブラック・フルーツのノートを備えた凝縮したアロマを生み出します。また、新鮮なレッドフルーツのアロマを除梗したブドウの部分にも広げる作用もあります。それから、発酵層からワインを引き抜く際、発酵前には緑色であった果梗が深い赤色に変わっていることを確認することができます。これは、果梗が発酵中に一部の色素とアルコールを捕える働きがあるからです(*このためワインの色調がやや薄くなります)。この際、果梗は内包していた水分を放出しますが、ヴィエイユ・ヴィーニュは若いブドウ木に比べて水分が非常に少ないという特徴があります(このため、ヴィエイユ・ヴィーニュの方が全房発酵に向いていると言えます)。幸いにもドメーヌの畑は樹齢が60~80 年を超えるブドウ木が大部分を占めているため全房発酵向きと言えます。
果梗と一緒に発酵させることは、樽熟成の際に不快なアロマや還元反応を引き起こす原因となる大きな澱や沈殿物を皮や果梗が捕らえてくれるため、ワインが自然な形で濾過されるという利点もあります。このため樽に移されたワインは清澄度が高く、マロ発酵終了後も樽熟成の間も、澱引きや樽の移し替え、あるいはポンプを使った作業などは一切することなく、静かに寝かせておくことができます。そして、熟成後も無清澄・無濾過の瓶詰めが容易になります。
ドメーヌでは、発酵層からワインの引き抜く際は機械は使わずに、手作業で小さな桶を使って行っています。手作業でワインを移し替えるため、ブドウの皮や種、果梗をこねくり回すことはありません。また、圧搾も非常にソフトに行うことができます。このため、ワインには不快なえぐみや苦み成分が付くことはなく、ワインに過剰なストレスを与えることもありません。
ドメーヌのワインは14~18 ヶ月の間、澱と一緒に熟成されます。ワインは、細かな澱から栄養を補給して、ふくよかで豊かになり、トーストしたパンを思わせるアロマや柔らかな口当たり、そしてタンニンを包み込んでビロードのような口当たりを生み出す粘性を獲得します。バリックでの熟成においては、焼きのややしっかりした新樽の比率を高めにしています。これはバリックが、発酵中と発酵後の果皮浸漬の際、特に醸造温度が30 度を超える際に、抽出されたブドウの種に由来するタンニンを補完してくれるしっかりと溶け込んだタンニンをワ
インに付与するともに焼いた木の微かなニュアンスももたらしてくれるからです。
ドメーヌでは熟成中にバトナージュは行いません。なぜなら、澱は低気圧の時にはワインの中に均等に浮遊し、高気圧の時には樽の底に沈殿するため、バトナージュと同じ効果を自然にもたらしているからです。この特性を利用して、ドメーヌでは瓶詰めの一ヶ月前の高気圧の時期にワインの澱引きを行ない、瓶詰め時期もちょうど高気圧の時期になるようにプログラミングしています。ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティも全く同じ方法を取っています。
一般的に熟成中は、バトナージュをして樽の底に沈殿する澱を浮遊させないと問題が起きると言われます(澱がワインの重さで潰されるため)が、ドメーヌではシュール・リーの状態で熟成させることに関してはいかなる問題も発生していません。幾つかのドメーヌが、澱引きをしないことで還元の問題に突き当たるのは、SO2 の過剰な添加に由来するもののではないかと考えられます。
ドメーヌのワインは、マロラクティック発酵の際に発生する炭酸ガスによって酸化から守られるため、SO2 を添加する必要がありません。但し、補酒は定期的に行なっています。また、決してポンプを使ってワインを取り扱うことはありません。瓶詰め前にワインを樽から引き抜く際もポンプは使わず、樽の上部の穴からの空気圧によって、ワインを樽から押し出すという自然な方法で行なっています。この方法だとSO2 加える量はごく微量で済み、ワインのアロマの全てを失うことなくワインの中に残すことが出来るのです。
ドメーヌでは、ワインのアロマはワインの熟成過程における最優先事項の一つと考えています。ワインをシュール・リーの状態で静かに熟成させることによって、新鮮な果物のアロマをしっかりと残しながらも、焙煎や燻した香りやトーストなどのトリュフに近いような香りもより多く残すことが出来るのです。