
非常に健康的でやや内向的、しかし減点対象となるようなニュアンスをほぼ持たず、明るい味わいが魅力のパストゥグランとACブルゴーニュです。価格も非常にリーズナブルです。
まず、パストゥグラン2014年です。マルキ・ダンジェルヴィーユの2013年パストゥグランを飲まれた方なら、ダンジェルヴィーユの素晴らしさ、成長振りにも驚かれたと思いますが、何より、
「パストゥグランって、こんなに美味しかったんだ!」
と言う素直な発見をされたんじゃないかと思います。ブルゴーニュ・ワインファン、ピノ・ノワールファンにとってのパストゥグランは、もう単純に格下のワインであって、手元に有ったなら飲むかもしれないが、自分から望んで購入はしない・・と言うような傾向が有るかと思います。まして、まずまともにテイスティングなどしないワイン屋さんで購入されるのが常だとすると、
「今美味しい」
「いつもより美味しい」
「価格に見合わず美味しい」
などの情報が入らず、単に「誰かが適当に造る一番下のワイン」と言うような分類からはみ出させることが出来ないんですね。

やはりパストゥグランには、基本、
「ライトながらもブルゴーニュならではのエレガンスが有り、そのヴィンテージの恩恵もしわ寄せも受けることがあるが、造り手によっては最もお買い得なワインであることが有り、深く考えずに飲みたい時にはピッタリのアイテム」
であることを忘れてはいけないでしょう。まぁnoisy自身、ダンジェルヴィーユが凄く良くなってるのには気付いていましたが、数が無いと飲めないので、たかがパストゥグランでも、ちゃんと飲んでご紹介できて良かったと・・思っている訳です。
2014年のルジューヌさんのパストゥグランは、全体として非常に健康的、やや深い赤紫の色合い、とてもドライだが少しベリーがジャミーな果実感を持ち、軽やかなスパイスと軽やかな石灰系ミネラリティ、中域もしっかり膨らみ余韻も長め、まるでエレガント系ヴォルネイのワインを飲んでいるかのような印象を受けるものです。
タイミング的にやや閉じ気味では有るんですが、この春くらいから徐々にその姿を開放的なものにしてくれると思います。ニュアンス的にはマルセル・ラピエールの2014モルゴン・サン・スフルに似た感じですので非常にピュアです。お勧めです。 一方のブルゴーニュ・ルージュですが、色合いの深みを見ていただくとお判りになるかと思います。ガメの入ったパストゥグランよりもやや淡く、その分、深遠なグラデュエーションを見て取れるかと思います。
パストゥグラン同様にやや閉じ気味ですが、今飲んでも充分に楽しめるだけの要素の開放は有ります。とてもドライで甘みなどはまず有りません。よりヴォルネイ的で・・ヴォルネイ的と言うのは、コート・ド・ニュイ的な中間層・低層の中心よりも下に感じられるミネラリティ、つまりやや重めの金属的なミネラリティが少ない・・と言うことですね・・。ジュヴレは低層低域のミネラリティがたっぷり有り、それがアペラシオンの特徴とも成っていますし、シャンボールは石灰系の中層から高層に掛けての伸びやかなミネラリティ組成が特徴ですし、ヴォーヌ=ロマネはこの村ならではの中域の組成のバランスの良さと高域の複雑性を持ったミネラリティに特徴がある訳です・・・いや、大雑把に言って・・です。
ヴォルネイ系は、中域の下の部分が少し少なく、低域はもっと少ない・・反面、中域の上から高域高層に掛けてはシャンボールに似たようなミネラリティですから、非常に雅(みやび)なニュアンスとして受けることが多いかと思います。
食べ合わせでは、ジュヴレなどの重いミネラリティが少ない関係で、「甘さ」には余り相性が良く無いように思います。まず・・甘いものとは徹底的に合わないでしょう・・。このブルゴーニュ・ルージュはカミサンと一緒に飲んだのですが、散々に「酸っぱい~!」と叫ぶので、
「・・何か、甘いもの食べたでしょ?」
「・・・判る~?」
みたいな、しょ~もない会話をしたのを覚えています。酸っぱくて飲めなかったそうです・・キャンディを舐めてたとかど~とか・・。まぁ、そりゃ~酸っぱいですよ。
でも、決してそんなに酸っぱいことはまず無いです。バランスの良い酸の構成をしていますので、普通に「甘くないお料理」とは相性も良いはずですし、魚系の料理でもけっして臭みが出てくるような要素は無く、非常にピュアです。樽っぽさも無いが良い感じの酸化熟成期間を持っていたと思います。
パストゥグランほどのジャミーさは無く、むしろちょうど良い感じの熟をした葡萄を使用、エレガントなヴォルネイっぽいピノ・ノワールになっています。美味しいです。
昨今はブルゴーニュワインの高騰で3千円を切るブルゴーニュが酷く減って来ましたが、ドメーヌものでピュア、2005年ぽい健康的な味わいが楽しめるワインでした。どちらもお奨めです!是非ご検討くださいませ!