
懐かしいですね・・1980年代のマルセル・ダイスを一応知る者としましては、
「・・ここまで来たか・・」
と言う高揚した気持ちと、
「・・・一体・・どこまで行くのよ・・」
と言うような不安な気持ちとが交錯します。
1980年代から1990年代初頭のマルセル・ダイスは、まだビオディナミに傾倒することなく、重厚長大で古典的・・と言うか、普通な造りをしていました。
しかしながらそのワインの持つ「オーラ」と、飲んでみて感じる「圧倒されるほどの凄み」は、ワインを好む者にとってみれば唯一無比の存在でした。
それがどうでしょうね・・1997年までは覚えていますが、So2をそれなりに使用する醸造を徐々に止めて行き、勿論、畑仕事はそれよりも早くビオ由来のものに変更して行ったように感じます。noisy がマルセルに東京で出会ったのもその後のワインのリリース頃かと思います。是非とも彼にお話しを聞きたかったんですが、奥さん(元・・!)に前に出られて早口でまくしたてられ、ブースの後ろの方に引きこもっていたマルセルとは話せずじまい・・。ちょうどルロワ女史もいらしており、高島屋さんの営業さんが、
「これからドメーヌ・ルロワのコルトンを開けます!」
と言う言葉にそそのかされ・・?・・踵を返してその、これまた至宝のワインをいただきに、グラスを差し出しに行ってしまいました。今ではマルセルも息子さんにほとんど任せるようになったのかな・・と思います。時代の流れを感じてしまいます。
下のグラスの写真は2009年のものです・・是非今回の2011年と比較してみてください・・。ビックリでしょ?・・色合いの質が全然違うんですよ。
2009年ものは、
「ん・・安心できる色。でもSo2はまだ使ってるね・・」
と感じます。しかし・・・それからたった2年後の2011年もの、左(上)の写真はどうでしょう?・・
「・・こりゃぁ・・おそらくSo2は使ってないな・・」
と感じるかな・・と思います。勿論ですが色合いだけでは無く、アロマの立ち上がり具合を見て・・の総合的な判断の結果の話しです。
ですので、ま~・・テクスチュアが柔らかいです。しかも、
「まったく危険性を感じない見事な仕上がり!」
です。この色に赤味が差していたりすると、noisy 的には飲む前から眉に唾をしなくてはならなくなります。それってエッジにね・・出やすいんですね・・。
蜜や柑橘、様々な色合いの果実が非常にソフトに感じさせてくれます。1990年頃のダイスのワインとは・・全く違う表情です。勿論、2009年ともかなり違います。以前のものはもっとソリッドで、冷たいエッジが有り、非常に冷ややかで・・エキセントリックでした。
しかし2011年ものは、表情は全く違うように見えて・・実はほぼ同じじゃないか?などと思ってしまいます。何故って、非常に複雑性が高く、飲めば飲むほど深遠さを感じて来てしまうからです。
「・・寄らば切るぞ!」
みたいな、サムライの持つ光る刀のような以前のダイスのビュルクに比較すると、
「・・おかえりなさ~~い!」
と、優しく出迎えてくれる・・機嫌の良い時のカミさんのような・・(^^;;・・しかし、実はちゃんと・・
「(・・さぁ・・旦那が帰って来た・・後で言うことはシッカリ・・言わせていただきますから・・ね!)」
と、そのポテンシャルを目立たぬようにちゃんと後ろ手に隠しているんでしょうね~。・・もしかしたら、その手に持っているのは、上杉謙信由来の名刀、「鉄砲切り兼光」並みのものかもしれません・・。・・怖いです・・ね・・。
まぁ、ハッキリ言いまして、2009年よりもポテンシャルは高いです。しかし、このフカフカの土を連想させるソフトさ、身体に角度無く入ってくる液体の馴染みの良さは、
「本当に同じワインなのか・・いや、やっぱり同じなんだよな・・」
と・・理解するしか有りません。
美味しいワインでした。混植ですから・・オーストリアの例のワインだと「ゲミシュターサッツ」ですね・・。スペクテイターは92ポイント、ラ・ルヴェ・デュ・ヴァン・ド・フランスは18/20ポイントと、
「・・ほ~・・この色でもちゃんと評価してるな・・」
と思えるものでした。
さらなる進化を始めたマルセル・ダイスです。2012年のシュナンブールはアドヴォケイトも97ポイントと・・史上最高の評価をしています。何てったって飲み心地の良いビオ系ワイン・・しかも偉大さを隠し持っています。是非飲んでみてください。お勧めです!
【ダイスが進めるアルザス・プルミエ・クリュの代表格!複雑で滑らかなやや甘口!蜜のニュアンスに果実とスパイス!13品種の混植です!】
「封建的な葡萄栽培地」と訳すのでしょうか・・・「le Vignoble Feodal」(レ・ヴィニョーブル・フェオダル)。
マルセル・ダイスが自称で言い始めた「アルザス・プルミエ・クリュ」ですが、実際に原産地呼称に入るように運動しているようです。
このアルザス・プルミエ・クリュは、ブルゴーニュのようなテロワールの違い、優位性をAOC認定しようと言うものです。特にマルセル・ダイスは、アルザスの多くの生産者がするような、
「品種別の栽培・醸造」
にまったくこだわりが無く、むしろ、「混植」(品種別に植えない)にこだわっていて、あくまで葡萄品種は「畑の個性=テロワールの表現」をするために混ぜて植えた方が良い・・と言う考えによるものです。
混植することによって、本来なら品種ごとに開花時期や収穫時期に違いが出るものが、お互いに影響しあって、「一緒に収穫できるようになる」からのようです。
このビュルク・クリュ・ダルザスは、まだ「自称プルミエ・クリュ」です。しかしながら飲んでみると、
「半端なグラン・クリュより大柄で複雑性が高い」
ことが判ります。グラン・クリュ格付けをされていてもビュルクよりも全く劣るに違いないと思われるワインが沢山有ります。
少しこってりとしていて、少しだけ甘みが有ります。「ヴァンダンジュ・タルディヴ(遅摘み)」に近いと思われますが、一般的なそれよりは甘くないです。酸がキッチリ・・非常にバランス良く出ていますので、ダレて感じられることは有りません。また透明なミネラリティが物凄いです。オイリーで複雑、しかも繊細さのあるやや甘口です。かなり美味しいです。ダイスご自慢のシュナンブールには及びませんが、目隠しで飲むとシュナンブールと言ってしまいそうですね。
フルーツもドライフルーツ、生の果実が沢山の種類で感じられます。甘過ぎないのが良いです。
まぁ、アルザス品種を13種類も混植していますんで・・そりゃぁ複雑性高いですよね。でもバランスも凄い!・・是非飲んでいただきたい逸品!ご検討くださいませ!