● マルセル・ダイスが完全ビオディナミに移行してからというもの、マニアックな世界ではかなりの人気を誇っていたのに、何となく縮小ムードになっているのが残念でなりません。微力ながらも、
「素晴らしいものはやはり素晴らしいのだ！」
と、声を大にして伝えて行こうという決心です。

商売をやっているのであれば誰しも、すぐに完売してしまうような商材は欲しいものです。何てったって販売が楽ですし、エージェントさんのコピーをそのまんま張っつけて、写真を撮ればほぼ出来上がり・・・、もしくは、常連さんに流して、
「はい、終了！」
です。

でもそのような商材は、例え売れてない頃から扱っていたとしても、また、その造り手の知名度を上げるのに大きな寄与をしていたとしても、欲しがる他の方のために、結局数量は削られてしまうものです。

ミシェル・ダイスの造り出す世界の孤高さと気高さに目が行くのであれば、いや、まともなワイン屋、味わいを第一に考えるワインファンであるならば、パワフルさを失いエレガンスを手に入れた彼のワインを正当に評価出来るはずだし、自身でも、
「呑みたい！」
と思うはずなのです。

何年か前にお会いしたミシェルは、外交的な奥さん（よくしゃべるんですよ・・)の影でひっそりと、その鋭い眼光に不透明なシャッターを降ろしているようでした。今は不仲説も噂で聞きましたが、実際のところはどうなのか、全くわかりませんし、個人的なことには関与しません。

それでも、アルザスの畑のキツイ傾斜と戦い、既存の権益とも正対しつつ自身が思う正論で押し通して生きているミシェル・ダイスと、彼の造る素晴らしいアルザス・ワインが大好きです。

今回は、自称プルミエ・クリュのエンゲルガルテンとランゲンベルク等をテイスティングさせていただきました。暴力的にも思われた果実の風味を捨て、真のエレガンスを手に入れた心洗われる味わいに「クラッ」と立ち眩みが来ちゃいました。真に素晴らしいワインは口や鼻、目を通して、心に直接響くものです。是非とも呑んでみてください。