
『ローラン・ポンソ、ドメーヌ・ポンソを去って新ワイナリー設立』 の記事が、ワインジャーナリストの山本昭彦さんからアップされ、
「えっ?・・どういうこと?」
と思われた方も多いことかと思います。noisy もちょっとビックリしました。
でも、ドメーヌの継承時の畑の分散を防ぐために、農業法人を設立したり、生前贈与を早くからやったりと・・相続税の高いフランスでは当たり前のことなんですね。
しかも、さらなる飛躍・・・と言うか、畑を所有したいと思っても、莫大な資金が必要になりますから、多くの造り手がネゴシアンを営んでいます。ポンソのように人気のある造り手は、経営安定化のため、自身のスタイルを確立するためにもっと畑が欲しい・・と思っているでしょうからね。
ドメーヌ・ポンソを去る・・と言うのは、今のところの情報では、あくまで税金対策だろうと予想されますが、ローラン・ポンソ有っての現在のドメーヌ・ポンソでしょうから、もし、他人の手に渡るようなことがあったら大変なことです。新しい情報が欲しいところです。
タイミング良く、か悪くかは判りませんが、2011年からリリースしはじめたドメーヌもののサン=ロマンをブローカーから入手しました。
某正規代理店はもう中々くれませんし、有っても非常に高いし、コンディションは最近はだいぶ良くなったように思いますが、本当の所はどうかまだ良く判らんし・・で、とりあえず1ケース購入できたので、
「・・良し、飲んじゃお!」
とさっさと初物をテイスティングさせていただきました。
いや・・美味しいですね~・・気品が有ります。サン=ロマンらしさを失わずに気品高く仕上げています。
サン=ロマンと言えば、ビオの雄、ド・シャソルネイのフレデリック・コサールを思い浮かべると思います。コサールのサン=ロマンは、非常に豊かでナチュラルで美味しいですが、
「どこか・・彼風の自慢みたいなものが入って無いか?」
と感じることが有ります。
コサールはいじるんですよね。まぁ、それが良い部分だとは思います。でも、サン=ロマンと言うアペラシオンの特徴よりも「コサール節」がかなり入って来る・・。サン=ロマンと言うよりも「コサールのサン=ロマン」と言うイメージです。
ポンソのサン=ロマンは、あくまでサン=ロマンとしてのアペラシオンを気品高く、ナチュラルに造り上げ、結果として、
「あぁ・・ポンソだよね」
と思わせるのかなぁ・・と感じます。
詳細には、豊かで熟した果実と緩やかで連続した石灰系ミネラリティ、そして粘土。決して「過ぎない」もので、「過ぎたるは及ばざるごとし」と言っているようにも思います。中域はしっかり有るのにパワーに頼らず、本当に自然に、緩やかなカーブを描きつつ、どこまでも伸びて行くかのような余韻が有ります。
色合いも、ブルゴーニュの造り手とすれば非常にナチュラルな色合いで、身体への侵入角も緩く、とても馴染みます。おそらくこれなら頭が痛くなるとか、酔いがキツイ・・と言うようなことは起こり辛く、SO2はほぼ使用していないに等しい感じ・・でも、決して危険なニュアンスは感じ取れません。
シミジミ系かと言われると、そんな感じも若干あれど、実はちゃんと存在していて、全く不足していないし多過ぎない・・だからこそ、
「サン=ロマンが持つ個性を気品高く表現出来ている逸品」
と感じられるのかと思います。
ポンソのワインの中では、非常にリーズナブルな価格ですが、まったく手を抜いていないのが良く判ります。新樽などには目もくれず、一人黙々と・・1980年代から自然な栽培と醸造をしていた人です。
扱いを知らないアメリカ人は・・・、まぁ日本人も同じだったでしょうが、
「ポンソのワインは酸化している。ひどい造りだ。」
と、あのPxさんでさえ、そのように書いたことが有ります。日本にも、随分と痛んだポンソのワインが1990年代後半まで届いていました。まぁ、昨今はさすがに少なくなった・・と言うか、その傷み具合は減って来ています。
今回は、noisy も久々に・・有名ドメーヌの素晴らしい白を飲んだなぁ・・と言う気がしています。勿論、完全には開き切らない、まだ少し若いヴィンテージです。かと言って、今飲んで美味しく無いことは、全く無い・・充分に旨いです。
すぐに飲んで良く、2~3年で開き始め、15年間美味しくいただけるでしょう。その時、その時で、また違った風情を見せてくれる、墨絵を前にした仏教僧のような気分にもしてくれます。・・いや、僧にはなったことは無いですが。・・素晴らしい白ワインでした。これは美味しい。価格も安いでしょ?是非ご検討くださいませ。