【なんと28年ものの古酒、コルトン・グラン・クリュ!!造り手はショレ=レ=ボーヌのドメーヌ・トロ=ボー!・・美味しいのか美味しく無いのか・・ばかりを追っていたら何も理解できません。】

まずは気になっていらっしゃるでしょうから写真の説明をさせていただきますね。1枚目と2枚目は2023年3月9日の0時過ぎに開けたこのコルトンG.C.の写真です。3枚目と4枚目は、ほぼ同画角になるように撮った2023年3月22日0時過ぎの、
「同じボトルのもの」
です。入荷は昨年の12月、今までずっと休めていました。
また、9日の抜栓後は温度管理をせず、コルクを逆刺しにして食卓に置いたまま、2~3日置きにその変化を確認していました。ですが毎回写真を撮っていた訳ではありませんで、余りのんびりと常識外れの超遅い夕食をとっていると誰かの雷が落ちないとも限らないので、出来るだけスピーディに終えるようにしています。
Noisy wine に入る前までの保存につきましてはおそらく冷え目のセラーに長年に渡り入っていたようです・・が摂氏10度ほどかと思われ、1枚目の写真をご覧になられますとお判りのように、
「非常に若く見える!」
・・まあ、この1枚目の見え方ですと収穫から7~8年ほどしか経過していないんじゃないの?・・とおっしゃる方もおられるかもしれませんが2枚目のエッジ近辺を見れば、
「良いとこ、12年位?」
と言われるかもしれません。
1枚目と3枚目、2枚目と4枚目で見比べてみますと面白いかもしれません。3枚目の写真は13日ほど経過したコルクを逆刺ししただけの同じワインです。
「・・げげっ・・マズそう・・茶と言うか、黒いじゃん・・」
と思われるでしょうね・・(^^;;
でも4枚目は幾分マシに見えるかもしれません。でも果実の「果」の字も想像できないような色彩に変わりは有りません。
そりゃぁ・・逆刺ししているとは言え、空気はバンバン入って来ます。それまでずっと四半世紀以上に渡って「ほぼ還元状態」に置かれていた訳ですから、So2的成分など微塵も存在しておらず、ある意味、
「急激に酸化して色を落として行く」
訳で、
「どこぞのSo2嫌いのビオの生産者さんのワインと同じ状態」
とも言える訳ですね。

2枚目の写真のところに来ました。肝心の味わいですが・・その前に、この「トロ=ボー1995コルトン・グラン・クリュ」ですが、畑はおそらくコルトンの丘の南端の裾野の「レ・コンブ」のみ、もしくは「レ・コンブ」が主体にアロース=コルトン北端の「ル・コルトン」「コルトン=ブレッサンド」が少々混じっているかもしれません。
赤のコルトン・グラン・クリュが連なる最南端の「レ・コンブ」のワインで、しかも最下部・・西隣が「ラ・ヴィーニュ・オー・サン」でして、あのコルトンの王「ルイ・ラトゥール」や、メオ=カミュゼ等がリリースしていますので、少し似通ったニュアンスが有るかもしれません。少し上がって行くともう、コルトン=シャルルマーニュの白葡萄が植わっている畑です。
ハンドキャリーで自宅に持ち帰り、しっかりコルクを抜きました。コルクは折れもせず、ですが半分以上はワインで染みていました。ですが異常なほど硬化していることも無く、柔らかさをまだ持っていましたので、個体差は有るとしましてもそんなに苦労はしないかと思います。
グラスに注ぎますと・・いや・・結構にフルーツなアロマが上がって来ます。幾分ソリッドでしょうか。完全にエキス化した液体からの熟したフルーツ香り、ドライフルーツ、ちょっと紅茶っぽさ、チリチリっとした感じの重さを感じる鉄っぽさやマンガン?、獣っぽい香りと、トップに分離しきれないが石灰的、石的ニュアンス。
非常に複雑な香りです。口に含むと・・そのまんま上記とそっくりです・・(^^;; ですが、まだ膨らみ切らず、この頃のブルゴーニュワインに良く感じた平板なタンニンが中低域に・・「薄目の紙」のように存在しています。
ちょっと保存温度が低かったのとその期間が長かったことで、いきなりの抜栓、すぐのテイスティングと言う飲み方は、実際に美味しく飲む場合には適さないと言うことが判ります。
何と言ってもまぁ・・造り手の技量も有ります。今のような、
「リリースされてすぐ美味しいブルゴーニュワイン」
じゃぁ・・無い訳です。
トロ=ボーも素晴らしい造り手ですが、その頃はやはり白は滅茶苦茶素晴らしく、でも赤は「超クラシカル」な造りと仕上がりでしたので、それも含めましてこのようなタンニンが残存していると思われます。
ですから、このタンニンが「ふんわり感」を醸し出すようになっていれば、
「滅茶苦茶美味しい!」
と感じるかと思うんですね。

因みに、海外のサイトを見ていましたら、
「2004年にこのワインを飲んだ方のレヴュー」
が見当たり93ポイントと言う評価で、自動翻訳では以下のようにおっしゃっています。
「友人と一緒に 2本のブルゴーニュの赤をブラインドでテイスティングして1位になった。グラスに注ぐと鮮やかな赤。巨大で、真っ黒で、ほこりっぽい、チョークのようなノーズ、口当たりはどちらかというとノーズ同様で、甘くて酸っぱいサクランボのヒントを伴う、柔らかく、豊かで、真っ黒な果実、ミディアムなフィニッシュ。」
なるほど・・。流石に2004年からは19年も経過していますから、サクランボではなく、野生の熟したチェリーと感じますが、美味しく飲めたのでしょうね。
で、このワイン・・個人的には少しタンニンが気になったので、まぁ・・この先の姿はある程度想像つく訳ですが、
「そうだ!・・この際だから、徹底的にやってみよう!」
と思い立ったわけです。
でもまだややタイトさの残る味わいなんですが、素晴らしい点が有りまして・・それは、
「余韻・・と言っても飲んだ直後の余韻ではなく、飲み終えて随分経っても・・歯を磨いてもコルトンを自分の中に感じているよう・・」
な・・いや、全然嫌な感じが残るんじゃなくて、ブルゴーニュ・ピノ・ノワールの存在感みたいなものでしょうか・・凄く長く感じていました。

で、3枚目と4枚目ですが、凄い見た目ですよね・・。
「ん~・・こんなの・・飲みたくないよ~~・・」
などと思われるかもしれませんが、
「1961年のシャトー・ラトゥールだって、数時間も経たずにこんな色になる!(・・可能性がある)」
訳です。
昔結構に飲んだボルドーの古酒は、むしろこんな感じの色彩イメージしかなかったりします。
で、この状態のワインですが・・
「若さは無いものの妙な酸化のニュアンスも感じず、とても甘やかでむしろ果実感を助長している感じ。平板だったタンニンは膨らんでその甘やかさと膨らみに変化、トロミが出て来て余韻も長く中々に旨い!」
と感じました。
「・・この色彩で!」
です。
しかもですよ、例の余韻ですが・・いや・・コルトンがずっと一緒にいるんですよ・・。ずっと一緒にいる感じが食事を終えても長く続くんですね・・しかも1日目よりもずっと甘美なニュアンスです。
ですから、完熟までには少なくともあと10年位は掛かりそうですね・・。・・と言いますか、
「四半世紀以上にも及ぶ長い眠りから覚まされ、長距離を船旅して到着した身には、たった3カ月ほどの休養は短すぎた」と言えるでしょう。
もし美味しく飲みたいのでしたらあと10年ほど我慢するか、ある程度の色落ちは我慢するとして、コルクを抜いておく・・もしくは3~数日前にデキャンタに落としておく・・その方が良いかもしれません。
もっとも個体差も有りますから、飲むための行動を起こす前に、
「ワインを縦て澱を落とし、それが終わったら色をチェック、このグラスのような色彩と照りが感じられたらほぼ同様のコンディション」
と判断できるかと思います。
その上で、どうやって楽しむか・・を考えられ、決まったら・・そこに至る道筋を考慮されて行動すると良いかと思います。
100年もののワインをご自身でレストランさんで頼んだとして、
「このワイン、もう飲めないじゃないか!」
と怒る方は・・まぁ・・もしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、普通、いないはずです。
どうやったら美味しく飲めるか?・・と考えると思うんですね。それこそソムリエさん、真っ青ですよ・・(^^;;
「・・コルク、折らないよう・・祈らないと・・」
「澱を回さないように静かに持って行こう・・」
「パニエ・・どこに仕舞ったっけ・・」
なども有るかもしれません。そんな時は古酒用のグラスが必要ですが、このコルトン1995には、
「基本的に不要」
です。
むしろ「開放型の大振りのブルゴーニュグラス」で良いかと思いますが、抜栓仕立ての、急に酸素を取り入れながら発するブケをしっかり感じたいと思えば、古酒用のグラスも用意されると面白いかもしれません。
美味しく飲むのも不味くするのも・・こんなの、飲めないと感じてしまうのも実は自分次第だったり・・するかもしれないと言うお話でした。もしご興味がございましたら挑戦してみてください・・noisy はあと数日、付き合う予定でいます。有難うございました。
P.S.2023/03/23 午前1:00頃、甘美さと妖艶さが増して来ました!・・まだまだ行けます。
(以下は4枚目の大きいバージョンの写真です。)

P.S.2023年4月2日更新
以下は2023年3月31日0時33分の写真です。ほとんど・・澱の部分です。ザラつく部分を漉くように飲みましたが、何とも官能的でエナジーを感じさせるような・・しかも甘美さが心地良いです。
全体的なバランスとしては抜栓直後から今までを通して、ちょうど3日前がベストでした。過ぎた酸化のニュアンスも皆無、果実感は葡萄にチェリーを加えたもののコンフィのよう・・。ピュア感は無いですが何とも心に染み入るブケと味わいでした。
非常に寿命の長いワイン..まぁ、貯蔵の具合も有るでしょうが、1990年代中頃までのブルゴーニュのピノ・ノワールは、このようなクラシカルな醸造、果実の風味も今のような「てんこもり」な残糖さえ多く含むものではなく、完全エキス化されたものが多かったように思います。
完全除梗、低温浸漬などの方法で大いにウケたアンリ・ジャイエのワインとはどちらかと言えば真逆に近く、梗も使い比較的高温発酵で長熟大柄なワイン・・と言えるかなと思います。