● 満を持して2020年のドメーヌ・トラペをご紹介させていただきます。長くトラペのワインと向き合ってきました。昨年ご紹介させていただきました2019年ものは、
「流れるような美味しさ、美しさの、トラペとしてのすべてがマッチした美味しさ」
を感じさせてくれました。
2020年ものは、ヴィンテージ背景を実直に現した非常に濃密なスタイルのブルゴーニュワインが多いので、
「・・さあ・・2020年こそはトラペの真骨頂が試されるヴィンテージに違いない!」
そう思ってテイスティングに臨みました。
ある種、過大だと思えてしまう果実の風味は、いずれマッチングするとは言え、「すぐに飲むのはやめよう」と言わざるを得ない多くのブルゴーニュの生産者に有って、
「やはりトラペはトラペだった!」
と素直に喜べる半端無い仕上がりを確認させていただきました。
2020年と言う、少雨にたたられ、最後に救済の雨が降って何とか救われ、その結果として「マンモスな果実味」と「長寿」を得た素晴らしいヴィンテージに有って、ドメーヌ・トラペは、
「ビオディナミが途轍もない、信じられないほどのパワーを与えてくれたに違いない!」
そう思えるほど、
「完璧!」
としか思えない・・しなやかで美しく流れるような見事なアロマと味わいを達成しているんです。

左の写真はこのコラムを書いている数時間前に開けた・・それまで休めていた、2020年ものの村名ジュヴレ=シャンベルタンの、少し大きめのサイズにカットした写真です。
深紅を基調とした美しいアナログ的なグラデュエーションはしっとりと落ち着いた外観を見せ、強さも弱さも見せつけない、ただただ美しい姿をしているように思います。
何一つ過不足無く、ジュヴレ=シャンベルタンとしての完璧な味わいを感じさせてくれるんです。鉄っぽさ、血っぽさ、獣っぽさを精妙なアロマ、そして精緻なバランスで飲ませてくれます。
その表情は洗練され、尖った部分は全くなく、それでも2020年と言う厳しかったヴィンテージがくれた恩恵と造り手の熱情をしのばせてくれます。
メディアはこれをして「完璧」となぜ言えないのだろうか・・と疑問さえ感じています。
飲めた他のアイテムにも同じものを感じます。残念ながら余りに少ない上級アイテムには手を出せませんでしたが、
「村名でさえ・・この完璧さを感じさせる仕上がり!」
です。
ドメーヌ・トラペにとっては凄いヴィンテージになりました。そして唯一と言って良い「真のビオディナミ」のジュヴレのドメーヌが、その真骨頂を見せた年でも有ります。2020年のトラペを飲まずに何を飲めと言うのか・・と言いたい・・是非飲んでみてください。超お勧めします!
■ドメーヌより
2019年から2020年に掛けての冬は温暖で雨が多く降ったので、地中に多くの水を蓄えることができた。4月に入っても夏のような気温だったので葡萄畑は早熟傾向で5月中旬には開花が始まった。病気はあまり見られず、ウドンコ病が少し発生したくらいだった。7月は平均の2倍以上の日照量があって非常に暑く乾燥したので、日中の暑い時間を避けて涼しい早朝に畑仕事をするようにした。乾燥によって収穫量が少なくなる心配があったが、8月中旬に恵みの雨が降ってくれたおかげで葡萄の成熟は一気に進み、8月26日から収穫を開始した。収穫された葡萄は健康で素晴らしい成熟をしており、心を奪われるほどの出来だった。ブルゴーニュらしい酸味がワインにフレッシュとメリハリを与えており、なおかつパワフルで豊かな味わいの2020年は正に規格外の出来と言えるだろう。
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感動的な味わいでした。2019年もので・・ついに・・ビオディナミ転向後、20数年を掛けて自身のワインの味わいを完成させたと言えます。その答えとなるキュヴェは、実は・・ドメーヌ・トラペ・ペール・エ・フェスの2019年もの全てで確認出来ます。勿論そのトップはシャンベルタンが究極の姿をしていると思いますが、どのキュヴェを飲んでも・・
「そのアペラシオンでトップの質感を持っている」
とご理解いただけるでしょう。そしてその上で、
「実はドメーヌ・トラペの根本は、この20数年間何も変わっていなかった。」
とも・・知るでしょう。トラペの畑、葡萄、醸造を取り巻く全ての環境が変化、成長、熟成するのに20数年と言う年月が必要だっただけなのでしょう。
そして2019年もので初めて造った「キュヴェ1859」・・。このワインをもし飲むことができるなら、「トラペの根本は何も変わっていない」ことを教えてくれます。そして、この類稀な美しさ、フィネス・・・「質感」と言う言葉が、ワインを言葉にする時に最も重要だと思い知るでしょう。是非この「圧巻な質感」に触れてみて下さい。

ついにブルゴーニュワインのトップに並んだのは間違いないと言えます。
左はラ・ルヴェ・デュ・ヴァン・ド・フランス誌の2019年ミレジムのページです。早々たる顔ぶれに驚きますが、・・まぁ、確かにあのクロ・デ・ランブレイの100点取得にはビックリ・・。常連である「トラペ」の100点は、むしろもう珍しくは有りません。
ただし・・2019年もののトラペは、ある意味「お化け並み」の質感を持っていると感じました。「物凄い質感!」・・これに尽きるかと。
シャペル=シャンベルタンのツヤツヤとしたミネラリティに包まれた物凄い要素の質感。村名に至っては、キュヴェ1859の完璧と思えるようなバランス。これはいつもの年なら「オストレア」に混ぜられている葡萄で仕上げたものらしいんですが、もう・・べらぼうに旨いです!・・そして、仲間?を奪われたオストレアの縦伸び系の見事な味わい!
また下級クラスも凄いです。マルサネの赤、白は・・とてもマルサネとは思えない質感を感じさせてくれますし、いつも美味しいコート・ド・ニュイ=ヴィラージュはキュヴェ1859を一回り小さくしただけ・・みたいな味わいなんですね・・これ、いつもはそれなりに沢山いただけるんですが、2019年ものは抑え込み失敗・・今回ご紹介分だけです。
パスグラのア・ミニマも凄いです。いつも美味しいので、
「評価が低過ぎる!」
と言い続けて来たのが少しは効いたのか?・・何と、あのジャスパー・モリス氏が89点!・・在り得ないですね。あの人はいつも87とか86とか・・でしたから。まぁ、2018年ものにティム・アトキン氏が90点付けたのが効いたのかもしれません。
このブルゴーニュのトップクラスのワインの中では、実は・・
「トラペのワインが一番リーズナブル・・」
と言う事実に驚かれるかもしれませんが、左のLRVF誌でもトラペの2019シャンベルタンは、価格を書いてないロマネ=コンティをはじめ、ルソーが2000ユーロ、ルロワが10000ユーロで、このところ価格が上がってしまって手の出なくなったクロ・デ・ランブレイが480ユーロとほぼ同様な500ユーロになっています。
どのキュヴェも非常に少ないので、
「兎に角、何でも良いから1本でも!」
飲んでみて下さい。
最高のヴィンテージの、ブルゴーニュ最高のドメーヌのワインです。お勧めします。
■ドメーヌより
2019年は春は温暖で気温が20℃くらいになる日もあったが、4月になると気温が低下し、2016年や2017年の霜の被害を思い出させるような天候だった。4月末になると一旦気温が上昇して回復傾向に向かったが、5月になると再び気温が低下。6月も気温の乱高下があり、安定しない気候が続いた。7月にようやく夏らしい気候になって葡萄の成熟も進んだが、今度は酷暑が続いて葡萄は水不足のストレスにさらされることになった。それでも我々の畑の古木は健気に耐えて、小さいながらも果皮が厚く、酸味もしっかりとしたほぼ完璧に近い葡萄が収穫できた。魅惑的で豊かな果実のアロマ、たっぷりとしながらも絹のように滑らかな舌触り。昔を思い起こせば目が覚めるほど素晴らしかった1929年や豪華絢爛だった1959年、最近で言えば豊かで輝いていた2009年を連想させるほどで、繊細かつエネルギッシュな味わいは正に「9」が付くヴィンテージにふさわしいワインと言えるだろう。
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2018年のドメーヌ・トラペです。いや~・・ビックリです・・。どうしてこんなに変われるのか・・劇的な変化を遂げた2018年でした。
「・・そんなこと言ったって、トラペはトラペでしょ?・・誰だって飲めば判りますよ・・」
とおっしゃるかもしれませんが、いや~・・・もしブラインドで出されたら、絶対外すと思いますよ。
noisy 的には、
「攻撃された ナマコ が取る行動!」
みたいなものに感じられまして・・はい・・。
ナマコは危険を感じると、
「内臓を身体から出して逃げる」
そうです。そうやって内蔵を食べさせて逃げ切るのかな?
で、2018年もののドメーヌ・トラペは2016年以前のキュヴェと比較しますと、内臓と皮が逆転しちゃってます。
つまり、
「マンモスなクリスタル風ミネラリティが表面に、愛らしくふっかふかに優しい果実味は完全エキス化され中心部へ」
と移動しています。これは、noisy がテイスティングしたキュヴェ、全てにおいて言えることなんですね。
ですので、
「まるで メオか、ヴォギュエか、ルーミエか?」
みたいな感じがしていまして、noisy の脳も相当に揺れています・・。
そして、シャルドネも全く同じなんですが、非常に理解しやすい味わいになっていますので、
「・・そんな訳ないでしょ・・でも確かめるにはすぐに美味しく飲めないとなぁ・・」
とおっしゃる方にはシャルドネを、
「それは面白い!」
と思われましたら、早い段階でさくっと飲むのでしたら「村名ジュヴレ以下」、早い段階で時間を掛けて飲めるのでしたら「村名オストレア以上を」お勧めいたします。
ほんと、目が離せない・・ですよね。凄い状況になって来ました!是非ご検討くださいませ。
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2017年のドメーヌ・トラペのご案内です。2013年に続き、またまたトラペがやってくれちゃいました・・。また価格が上がるか・・と懸念も有りますが、海外のワイン販売サイトをアチコチ見てみると、異変が起こってます。トラペの下~中級キュヴェが軒並み完売になってるんですね・・。どう言うことなんでしょう?
実は、ル・ギィド・デ・メイユール・ヴァン・ド・フランス誌(旧クラスメン)が、2017年シャンベルタン/トラペに20点満点を付けちゃったんですね。勿論、他のワインもそうですよ・・写真はこちら。

あの村名アレアでさえ、17点と言う高い評価でした。
ル・ギィド・デ・メイユール・ヴァン・ド・フランスは以前はクラスメンでしたし、現在も月刊のル・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランスを出版していますので、皆さんももうお馴染みかと思います。
で、noisy も2017年ものは気合を入れてテイスティングに臨んだ訳です。2015年は本当に美味しく、2016年ものもその延長で厳しかった年を乗り越えました。まぁ、noisy的には2016年の方が好きかもしれませんが・・。
2017年もののドメーヌ・トラペは・・もう以前のトラペとはかなり異なっています。これは、ユベール・ラミーの2017年でも同様のことを言ってますので、
「・・お~い・・またかよ・・」
と思われるかもしれません。
「もう作り話は・・いらないよ・・」
でも、そうじゃないんです。
トラペの柔らかで優しい作風。それはおそらく皆さんも認めるところでしょう。それが好きか嫌いか・・も人それぞれです。
しかし2017年ものは、そんな安易な言葉では表現できない、いや、間違っているとさえ感じるほど、全体的な印象は異なったものとなって感じられるはずです。
noisy 的には、それは2017年特有のものなのか、単なる偶然の産物なのかは判断できていません。
要約してしまうと・・こんな感じかと思います。
「2017年のドメーヌ・トラペは、それまでの彼らのワインそのものを透明感の高いミネラリティの透過性カプセルで包み込んだ!」
と言えます。
なので・・もう、全然違って感じられてしまうんですよ・・今までのトラペのワインと。それが顕著なのが下~中級キュヴェです。もしブラインドテイスティングで出されたら、全く当たらないと・・思いますよ。noisy も散々迷って・・当てられるかどうか・・と言うところかと思います。
素晴らしいミネラリティのヴェールを得て、柔らかでエレガントな液体は光り輝いています。
だから、海外でも今まで散々残っていた下級キュヴェがすでに完売しているんじゃないか?・・などと思っている訳です。
そして、20点満点のシャンベルタンですが、フィネスの担当さん、K君によりますと・・
「ルーミエのミュジニーより旨い!」
と言って憚りませんでした・・(^^;;・・マジか~?・・どっちも飲ませろよ~!・・
と言う訳でして、このマンモスな量ながら滅茶苦茶美しいミネラリティを衣に得たトラペですが、これがこの先も続くのか、それとも2017年と言うヴィンテージの特徴なのか?・・と言う疑問は先送りすることになりますが、少なくとも2017年のトラペが驚くほど変わって、しかも驚異的に美味しいのは間違い在りません。・・ちょっと煽った感じに取られるかもしれませんが、
「騙されたと思って、パスグラでもA.C.ブルでも白でも・・飲んでみてください。」
とお伝えしましょう。
勿論ですが、noisy も未だ飲めていない1級以上のクラスも、「ル・ギィド・デ・メイユール・ヴァン・ド・フランス」がこれほどに高い評価をしていますので、間違い無いと思われます。
貴重な、しかも分岐点的なヴィンテージになった2017年かと思われます。是非ともご検討くださいませ。
■生産者のコメント
2017年は春から暖かく早熟で3月末にはすでに葡萄の葉が開いている畑もあったほど。4月末には2016年同様、霜の気配が漂ってきたが藁を燃やして煙幕を張ることで霜害を回避することができた。5月になっても暖かい気候は変わらず開花期も問題なく経過。7月は猛暑で中旬には色付きも始まり、まるで2009年を彷彿させるような早熟具合だった。7月末に雨が適度に降ったことで葡萄の果皮が厚くなり、8月の天気が良好だったおかげで種も果梗も良く熟して完璧と言って良いくらいの健康状態になり、2017年が素晴らしいヴィンテージになるであろうことは疑いようもなかった。気品がありつつも豊かな味わいで、すでに優雅さと偉大さを醸し出している。エネルギーに満ち溢れ、かつエレガントなワインは舌が肥えた愛好家さえも惹きつけるだろう。
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ジュヴレのビオ生産者、ドメーヌ・トラペです。しなやかで優しい、美しいワインで尖った部分が無いです。

1868年から6世代にわたってジュヴレ シャンベルタンでワイン造りを続けているこのドメ ーヌは、代々少しずつ畑を増やしていき、現在では13haの畑を所有しています。現当主のジャンルイ氏は物腰柔らかく穏やかな人物で、1996年からビオディナミを導入して自然を最大限に尊重したワイン造りを行っています。
畑の手入れはビオディナミで化学肥料や除草剤は一切使用していません。ジャンルイ氏の
「ビオディナミにおいて、人間の役割は葡萄が安定して育つように支えてあげることが大事で、畑仕事と選別をしっかりやれば、あとは葡萄が勝手に良いワインになるように働いてくれる。」
という言葉の通り、クォーツ(水晶)の粉末を定期的に畑に撒くことで土壌の活性化を促し、植物のエネルギーを引き出して病気に負けない木を育てることを目指しています。葡萄の木の仕立ては片翼式ギュイヨ、コルドンロワイヤルで春に厳しい摘芽を行い、凝縮した葡萄のみ収穫しています。樹齢も高いものが多く、植え付けも1ha当たり約12000株以下にし、収量を抑えることによって品質のレベルを高める努力をしています。
収穫は全て手摘みで行い、畑と醸造所でそれぞれ選別し、醸造所では除梗前の房の状態と除梗後の粒の状態での2度に渡る選別が15人で行われます。除梗は約30%で、開放桶で低温浸漬を行い、3~4週間かけてゆっくりアルコール醗酵をさせます。必要に応じて櫂入れを行い、空圧式圧搾機でプレスした後にワインは樽へ移され、樫樽で15~18ヵ月熟成されます。樽は主にトロンセ、アリエ、ヴォージュ産のものが使われています。
収穫は全て手摘みで行い、畑と醸造所でそれぞれ選別し、醸造所では除梗前の房の状態と除梗後の粒の状態での2度に渡る選別が15人で行われます。除梗は約30%で、開放桶で低温浸漬を行い、3~4週間かけてゆっくりアルコール醗酵をさせます。必要に応じて櫂入れを行い、空圧式圧搾機でプレスした後にワインは樽へ移され、樫樽で15~18ヵ月熟成されます。樽は主にトロンセ、アリエ、ヴォージュ産のものが使われています。