シャトー・ラヤスと並び賞されるシャトーヌッフの巨人、アンリ・ボノーが唯一手掛けるテーブルワイン、レ・ルーリエです。
高齢でしたがエネルギッシュなお爺ちゃんで、男性の関係者が訪れても居留守を使うくせに、女性のスタッフが訪ねると下ネタ連発、ワインの話しなど放ったまま口説きまくると言うような噂(・・と言うかその女性本人からの体験談を聞きました・・)が有るほどでした。
そんな彼も昨年の三月に糖尿病の悪化で亡くなってしまいました。シャトー・ラヤスの故ジャック・レイノー氏とは友人同士で、決して昨今の新しい風潮に流されることの無い古典派シャトーヌッフの超人的な造り手として一生を過ごしたと言えます。
彼のワインの味わいはある意味、「自然派と呼ばれる現代の造り手よりも、よりナチュラル」と言えます。So2 は少ないし、アロマの鮮烈さ、スピードは非常に速いです。バルク売りしてしまうシャトーヌッフの格落ち・・・いや、単に本人が気に入らなかっただけなんですが、当然のことながらアンリ・ボノーのクレジットなどはエチケットに記載も無いのに、そう言われて購入して飲んでみると、
「・・何だこのコート・デュ・ローヌ・・ドエラャー旨い!!」
とまぁ・・ビックリしてしまったことも有ります。・・まぁ、アンリ・ボノーのバルク売りした購入者さんがそれとなく言葉にしない限り、それは判らないんですけどね。以前に1~2回だけ、そんなボトルを販売した記憶が有りますし、そのたびに飲んでひっくり返ってました。
以前に販売したレ・ルーリエは、ノンヴィンテージの2008~2009年ブレンドものでしたが、今回は2011~2012年のブレンドもののようです。エチケットの右端に小さくそのようなことを示す数字が書いてあります。
2016年に亡くなられていますので、このキュヴェは確実にアンリ・ボノーさんの手に寄るものと思われますから非常に貴重かな・・と思います。
まぁ・・シンプルなシャトーヌッフにしても、マリー・ブーリエやセレスタンはなおさらのこと、とんでもない価格になってしまっているでしょうしね。
因みにアンリ・ボノーさんは、シンプルにするか、マリー・ブーリエにするか、はたまたレゼルヴ・ド・セレスタンにするかなどは、
「キュヴェが仕上がってみないと判らないので、それが決まるまで数年掛かる」
ことと、
「キュヴェが仕上がらないとリリースしないので、ヴィンテージの順番通りには出て来ない」
ことが有り、しかも5ヘクタールの古木からほんのちょっとしか生産しないので、「幻」と言われるシャトーヌッフでした。
まぁ・・この「レ・ルーリエ」にしても同様ですよね。noisy はリストで目にすると間違いなく・・オーダーを入れるようにしていますが、本当に滅多にお目には掛かれません。
今回は本当に少量なので、飲まずに販売させていただきます。レアだと思います。是非お早めにご検討ください。なお、あくまでセラーでの保存をお勧めします。その辺のビオワイン以上に変質しやすいです。
以下はN.V.2008~2009年のコメントです。
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【2008年と2009年にまたがったノン・ヴィンテージ!レアです!目茶官能的で素晴らしいです!】
「わお~!」なシャトーヌッフならぬ、アルディッシュのルージュです。アンリ・ボノーをテイスティングしてご案内できる機会など、そうは無いと・・思いますので。まぁ、最後かもしれませんね。
まず色!・・どうでしょう・・まぁ、「官能的な色合いだ!」と言わせたい訳ですが!・・美しくも照り有り、透明感有り、グラデュエーションの層の多いことったら、中々出会えないような色彩です。
グラスをノーズ向けると・・一般にビオ系、自然派系の生産者のワインは、香りが立つスピードが非常に速いですが、アンリ・ボノーのレ・ルーリエも全く同様にフェラーリ並みです。
そして、その香りこそ、正に「官能的」です。で、滅茶苦茶ナチュラルです!ナチュラル感に満ちています。
・・ですが、
「ピュアか?」
と聞かれると・・ピュアだとは言い切れないんですね~。でもピュアに近いとは言えるかもしれません。ピュアベースで非常にナチュラルだがリアルにピュアでは無い・・と言うのが正しいです。それが
「官能的」
と言うべき素性です。
「実に・・エロいです。」
その昔、アンリ・ボノー爺さんのところに出入りしていた日本人の女の子(仲買人をやっていると言ってました)は、ボディタッチが酷すぎて辟易していると・・言ってました。「あのエロ爺!」とまで・・(^^;;
まぁ、そんなエx感覚がワインにも出るのかもしれませんが、実に官能的です。
で、その正体は
「極端にSo2の存在が無い」
ことに有り、よって「揮発酸」の姿が僅かに有ります。
ところがですね・・これがまた凄いところで、その揮発酸はワインと全く一体化していて、まずほとんどその存在にさえも気付かないだろうと思えるレベルなんですね。
生ける揮発酸に侵食されてしまったワインは、どんなワインでも余韻が全く同じです。サワーですよ。昨今のビオのシーンでは非常に多いと言えます。
でも、ワインラヴァーはワインを飲みたいので有って、お酢を飲みたい訳では無いんですよね。どうも最近はおかしいです。ナチュラルならお酢でも良いと言うのは理解に苦しみます。
で、このアンリ・ボノーのレ・ルーリエですが、そんなレベルのワインでは当然有り得ず、僅かな揮発酸の表情をワインの表情の極一部として取り込み、安定させ、官能的と言われる彼のワインに協力させているんですね。
実は、優れたテイスターであればほとんどの場合、色を見ただけで揮発酸の存在に気付きます。赤の場合は少し難しくはなりますが、それでも疑問を持つレベルでは気付くでしょう。でもこの写真の色合いからはまったくそれを検出出来ず、ノーズに近づけて初めて・・
「・・なるほど・・」
と確信した訳です。
言ってみればフレデリック・コサール、ド・シャソルネイと同様の手腕を発揮しているとも言えます。勿論、本家は年長のアンリ・ボノーですが・・。コサールも実は似たようなテクニックや感性を持っており・・いや、エxの部分では無くて・・たまに、遣り過ぎてしまって失敗・・と言う流れも有った訳です。
また、例えば、ド・ラルロの醸造責任者だったオリヴィエ・ルリッシュは、このワインとほぼ同様の地で赤ワインも造っていますが、
「全くの別もの」
です。オリヴィエ・ルリッシュの中にはアンリ・ボノーのような感性やテクニックは(今のところ?)有りません。しっかりSo2は使うし、ボラティル(揮発性)の生成を嫌うでしょう。そういう意味ではオリヴィエ・ルリッシュはナチュールでは無いことになります。
何だかナチュールとは何か?・・みたいな論文的になってしまいましたが、
「どんなナチュラリストよりナチュール的で、ボラティルさえも配下に置く魔術師の官能的ワイン」
がアンリ・ボノーのワインです。熟したブルゴーニュがごとき複雑性妙官能ワイン・・是非ご堪能ください。・・でも保存には重々お気をつけくださいね。