
薄い紫色の保護紙を剥がし、ボトルを斜め30度ほどにセット、頭を押さえながらゆっくりと針金を緩め、ボトルを揺らさないように注意しながらコルクを左右に回し、ガス圧で自然に上がってくるコルクを待つ。
そんなありふれたいつもの抜栓さえ、このシャンパーニュが持っている「オーラ」のようなものが、抜栓者にある種の「恐れ」と「期待」の両方を与えるような気がします。
少し中間が細くなっているようにさえ感じる首が、
「もしかしたら噴き出すんじゃないか?」
とも思わせますが、結局何も無く、結構に静かに、スムーズな抜栓が出来ました。(愚息が・・やりました・・)
開いた直後からもう・・繊細なアロマが香って来ます。実に細やかです。全く以って大雑把なものじゃ在りませんし、気品溢れるものです。
グラスに注ぎ始めると・・
「おおっ!」
と、その余りにも美しい超細やかな泡に・・思わず声がこぼれるでしょう。
そして、その泡が運んでくるさらに繊細なフルーティーな表情に、顔がほころんでしまうに違いありません。

このサピエンスは、マルゲもしかり、そのエノロジストでもあるエルヴェ・ジェスタンも同じアイテムをリリースしています。2006年からですね。
noisy は、この素晴らしいサピエンスのお披露目にも出席していますので、やはり素晴らしかった2006年も飲んでいます。
しかし・・2006年は扱わなかった・・。それにはちゃんと理由が有ります。それは、
「・・非常に素晴らしいと思う。でも、この2006年を今、ちゃんと理解できる人は非常に限られる」
と言うものです。
勿論ですが、他のショップさんでご購入され、2006年のサピエンスを飲まれた方もいらっしゃるでしょう。どうだったでしょうか?・・美味しかったですか?・・もし、そう感じられたなら素晴らしいことです。
2006年のサピエンスは、リリース当時の味わいが余りにも美しすぎ、
「しっかりと要素が有って美しい・・のと、要素が無くて美しい・・の区別が付きにくい」
と判断し、ずっと後になってからなら、2006年のこのサピエンスを扱いたい・・と決心したんですね。なのでnoisy は2006、2007年のサピエンスをスルーしました。そして、グレートな味わいになったと思える・・しかも、より判り易い味わいになったと思えたので・・2008年を扱わせていただきました。
ま~・・美しいです。とことん、美しい・・。抜栓直後はピノ・ノワールがやや前面に、ムニエが下支えし、シャルドネが中盤~余韻を担当している感じですが、非常な一体感が有ります。むしろ到着の翌日に飲んでいますので、それを理解出来た・・のかもしれません。
15分ほど経過するとシャルドネが出張って来ます。これも気品が素晴らしいです。コート・デ・ブランのグラン・クリュにも引けを取らないでしょう。適度な膨らみが有り、余韻に突入します。
繊細な旨みとフルーツ感を持った「押し味」は余韻の前半を頑張ります。そして、非常な透明感の有る繊細な石灰感と共に、超絶に冷ややかな清水のような余韻に切り替わります。そのエレガントな余韻が非常に長い・・です。
これは危険な味わいのシャンパーニュです・・。非常にクリーミーで滑らか、しかも酸バランスがまん丸ですから、液体は喉を目指してしまいます。喉はその滑らかな液体をノンストップで受け入れよう・・としてしまいますが、理性がそれを押しとどめます。
でもその誘惑は大きく、ついには負けて・・飲みこんでしまうんですね・・。そして「その素晴らしい余韻」です。いや~・・旨い!
この美しく照りの良いボトルを脇に置いていたら・・絶危険です。あっと言う間に空ですよ。アヴィーズ・エ・クラマンもその傾向が顕著ですが、
「シャンパーニュに欲しいものが全部有る!」
と思わせてしまう様な魅力が・・有ります。
高価なシャンパーニュですが、これは飲んでいただきたいな・・と思います。若い方でも、もし彼女に飲んでもらったら・・上手く行っちゃうんじゃないでしょうか。
サピエンス・・・2008年ものにおいて、非常に判っていただきやすいスタイルになったと思います。飲んでみてください。超お勧めです!