【液面が低いからダメ?・・それって本当?・・これ、滅茶美味しいです!ほぼ完熟に近い1996年ポマール1級フルミエ!】 ・・こちらはシャンランです。

まぁ、先行き問題になりそうなアイテムをテイスティングするのはワイン屋の務めでも有ります。
「・・この96年って、こんなに液面が低くて大丈夫ですか?」
と聞かれたら、どうしたら良いでしょう?
「・・・さぁ・・飲んでみなきゃ判りません。」
昨今はそれで済ませてしまうのが普通なんでしょうが、もう少し突っ込むことも「お務め」では無いでしょうか。
「この1996年は飲めておりませんが、アイテム違いのこちらは・・」
と言える位にはなりたいものです。
ワイン屋をやっていて思うことは、お客様が飲む前のボトルを直前に味見出来たらどんなにか良いだろうか・・と言うことですね。そこでちゃんと判断が出来ますから。でもそれは叶わない希望です。
しかしながら、造り手は違いますよね。どんな経過を経たアイテムかを知っています。そして出荷前に、
「リコルクをするか?」
「補酒をするか?」
「ボトルを入れ変えるか?」
「エチケットを貼りなおすか?」
そして、
「売るか売らないか?」
を判断しています。
例えばこの1996年のヴォルネイ1級レ・フルミエは、キャプスュル下から3~5センチほどのところに液面の上部が有ります。普通なら・・結構に下がっていると判断できます。そして、コルクを見れば、かなり色が付き湿っていて(上がっていて・・)、リコルクされていないことが判ります。

左の写真をご覧ください。左のボトルは1992年ポマール1級レ・シャンラン、右は1996年ポマール1級レ・フルミエです。
1992年レ・シャンランは結構な量が入っています。リコルクされているかどうかは、現段階では不明ですが、されているともされていないとも・・判らないです・・が、リコルクされ、不足した分を補酒している可能性も有ります。
右の1996年レ・フルミエは開けて確認していますので、リコルクも補酒もされていません。外観を綺麗にしてそのまま出されたようです。
もし、1992年レ・シャンランがリコルクされていたとしたら、
「そこにはドメーヌとしての判断が有った」
ことの証明になります。
また、もっと古いキュヴェも液量がたっぷり入っています。
つまり、1996年ものは「コルクもまだ持ちそうだし味わいも良いのでそのままリリースしよう」
と言う判断が有った・・と考えられます。
なので、今回の一連の古酒はドメーヌがきちんと仕事をした結果として届いたことが伺えます。
で、この1996年のポマール1級レ・フルミエ(ヴォルネイ1級では有りません)ですが、
「滅茶美味しい!・・ほぼ完熟!とろりとした甘みさえテクスチュアから滲みだして来て、古酒ならではの艶めかしくも官能的なブケ、キノコ、動物香、フルーツが実に心地良い!」
味わいになっているんですね。
1996年と言えばもう23~24年でほぼ四半世紀です。同年のヴォルネイ・アン・シャンパンについてはそちらのコラムで記載しますが、
「全然違う個性!」
を見せてくれますので、1996年同士の比較も滅茶面白いと思います。
因みに、ポマール1級レ・フルミエは、ポマールのトップクラスのレ・ジャロリエールの下部に接し、ヴォルネイのレ・フルミエの北に接します。ここまで熟してくると・・ホント、ブルゴーニュワインの醍醐味・・です。
なお、今回のポマール1級レ・フルミエは、1988年、1993年、1996年、1997年、1998年と入荷しています。
ポマール1級レ・シャンランも入っていますが、テイスティング出来るほどは数が有りませんでした。この畑は1級レ・ジャロリエールと1級リュジアン・バの上部に接し、1級リュジアン・オーとヴォルネイの1級シャンランに挟まれています。余り重くは無く、エレガント系の味わいになることが多いように思います。ただし、90年以上(現時点で)の古木を含みますので、期待も大きくなりますよね。
この機会に是非!・・貴重な古酒をご検討くださいませ。お勧めします!
以下は以前のレヴューです。
━━━━━
【ポマールらしい重量感!ドライで引き締まった躯体!香りの複雑性・凝縮感が半端無いです!】
何と表現すれば良いのか・・こんな表現で良いのかとは、noisy もこの20年に渡って悩んで来たことではありますが、いまだにそんなことを考えつつ、キーボードに向かっている訳です。
ポルシュレさんはオスピス・ド・ボーヌ、ドメーヌ・ルロワと渡り歩いてきた・・とされますが、やはりオスピスでの彼の仕事振りが素晴らしかったので、引退しようとする彼をマダム・ルロワが引き止め、ドメーヌに来てもらったと記憶しています。
なので、やはりオスピス的なのでは?・・などとも一瞬頭を過りますが、大体にして、「オスピス的なピノ・ノワール」が余りに大雑把でしか判らないし、何しろワインに仕立てるのは各ドメーヌなんですから、余計に様々なタイプになり、「オスピス的な味わい」の根拠にはならんと・・言うことになります。
ただしオスピスは基本、新樽100%で造らされますから・・そのためにはどうしたら良いか・・とか、逆算で造らざるを得ないのが寄進者たる各ドメーヌなんですね。なので、新樽に負けない、しっかりした葡萄を得ることが重要になり、そんな流れを造り、監督したのがアンドレ・ポルシュレと言えるでしょう。
この美しい、しかも非常にしっかりした、そして透明感が凄い色合いを見てください・・。素晴らしいでしょ?・・・もう何となく味わいが想像できるんじゃないかと思うんですが・・?
一口飲んで思ったのは・・何と、ドメーヌ・ルイ・ジャドのクロ・サン=ジャックです・・。何でなんだろう?・・と自分でも不思議です。ニュアンスは非常に似ているなと・・しかし、各部分はおそらく全然似ていないんです。むしろ、
「若くして飲んだ時のジャドのクロ・サン=ジャック」
と言うべきなのかもしれません。
例えばド・シャソルネイのフレデリック・コサールも、あのパカレも、ポマールのレ・シャンランを造っていた時期がありましたよね。エレガンスが有り、非常にエキシーで、しかも軽やかさや官能感も有り、旨いワインでした。
でも、ポルシュレ監修のこのポマール・レ・シャンラン・・・・全然違いますよ。同じ自然派だとしても、もう腰の位置が全然違います。非常に低い位置から出てくる感じの全域に渡り発散されるアロマです。
そして非常に凝縮していて、細やかに仕上げたものが詰まっている感覚が有ります。言っちゃえば他の自然派たちのワインと比べてしまうと「薄い」と言えるかな・・と思うんですね。
かと言って、
「濃いのか?」
と聞かれると・・・
「・・いや・・濃いと言うんじゃなくて・・やはり詰まっていると言うべきかな・・」
と答えるでしょう。
まだ全貌を簡単には見せはしないんですが、非常に濃密・・要素が複雑で構造がしっかりしてるんですね。
今飲んでも・・とても美味しいんですが、開花はずっと後ですから非常に勿体無い感じがします。酸素をほぼ遮断した昨今の造りでは無いと思います。樽を適切に使用し、適度な酸化を促進させつつ、香り高く美しく仕上げたレ・シャンランなんですね。
この感触はやっぱり、あの時代を思わせるかな・・と思います。アンリ・ジャイエやら、ギイ・アッカやらね・・もう凄い人たちが沢山いました。その中の一人がポルシュレさん・・。昨今の造りから言えば少し難解なのかもしれませんが、2013年にこれほどまでの非常に質の高い葡萄を得ていることにビックリです。20年後、物凄いワインになっている可能性が有ります。是非・・ご検討くださいませ。