
余り誉め言葉ばかりのレヴューは書きたくないと、常々思ってはいるんですが、寂しさや悲しさと共に有る種の・・嬉しさも有るんでしょう。noisy も珍しくちょっとウキウキしているのかもしれません。
だって・・そりゃぁそうです。もしダメダメな印象しかないのであれば、ご紹介しなければ済む訳です。でも、そんなにダメな訳でもない・・が良くも無い・・なんてことになりますと、否定半分、肯定半分の・・お客様にとっては意味不明のレヴューになりかねません。その昔は随分と言われたものです。
「noisy さんの文章は、勧めているのか貶しているのか判らん・・」
本人は、良い部分もネガティブな部分もちゃんと書こうとして・・結局そのようになってしまっている訳で、
「そもそもヘンテコなものは紹介しないか、ちゃんとダメだと書いて紹介する」
と言う、本人なりの決め事が有るもので・・そうなっていた訳です。
なので、基本・・紹介しているものに変なものは無い・・とご理解いただけますと幸いでございます。
で、このクロ・サン=ジャンとモルジョをブレンドした1級です。凄い健康的です!・・まるで2005年のピノ・ノワールのリリース直後のようです。ぷっくりとした、どこにもキズの無い小さなピノ・ノワールの粒が想像されます。
そして「力業」に頼らず、「新樽」も余り多くは使わず、健康な葡萄がピュアさを失わない程度のマロラクティックをさせた、「ハツラツ」としたプルミエ・クリュに仕上がっています。
今飲んでも非常に美味しいですが、これ・・年毎に随分と変化していくはずなんですね・・。
例えば、今はあのシャソルネイもまた、「新樽」を全く使用しないようになっています。集中し凝縮した葡萄を古樽や陶器でエルヴァージュしています。なので、シャソルネイ、コサールのワインも滅茶ピュアです・・が、
「シャソルネイ、コサールよりピュアさは活き活きとして感じられる!」
んですよ。
少し前までのドラグランジュを知っていたら、ビックリすると思いますし、20年前の・・新樽100%が大ブームになり、濃密濃厚なピノ・ノワールが持て囃された頃のドラグランジュを知っていたら、「復活か?」と思えるはずなんですね。
ガニャール、モレ、ラモネと言われたシャサーニュの名家も世代交代でどんどん変わって行くのでしょう。そんな一時代のたったの一時に過ぎませんが、中々に面白い時間を過ごせたとは思っています。是非ご検討くださいませ!お勧めします。
以下は以前のレヴューです。
-----
【古木由来のテロワールから、丸いパレットの充実した味わい!・・でも繊細で美しいです!】
もうドメーヌを閉じることが決まっているからなのか、それともこの2017年ものの実力なのか・・noisy にも判りません。
しかし、2017年もののガニャール・ドラグランジュのワインには、何故か肯定感しか・・感じないんですよね。いつもならどこかネガティヴな部分を探している自分に気付くんですが、そんなルートを決して辿らせないワインです。
100年にもなろうか・・と言うV.V.も混ざる、やや重量感のあるモルジョや、やや軽く赤さのあるクロ・サン=ジャンの粘性の有る味わいが、赤果実をリアルなものにしています。
充実していますが繊細で、決してマッチョにはならないです。色合いをご覧いただきますと判るかと思いますが、通常のシャサーニュ村名とは少し異なり、色合いも濃い目ですよね?
でも超繊細です。ピュアで甘く無いです。そして、いつの間にか心に侵入され、「ワビサビの世界」に入れさせられてしまうんですね。これは非常に美味しい!・・ポテンシャルを取りに行っても満足行く深みのある出来です。・・でもシミジミ系なんですね~。そして価格も非常にリーズナブル・・ですから、これは是非飲んでいただきたい!・・ご検討くださいませ。
以下は以前のレヴューです。
━━━━━
【お見事!・・以前はリリース時には非常に硬かったワインなんですが、2016年は今飲んでもジューシーで旨いです!】
モルジョとクロ・サン=ジャンのブレンドで仕上げられる、見事なシャサーニュ1級ワインです。
ピュリニーでは、見事なほどにピノ・ノワールが植わっていた畑もシャルドネに植え替えられ、1級も村名も本当に僅かしか残っていません。シャルドネの方が高く売れるから・・です。
シャサーニュではピュリニーほどでは無いにせよ、その傾向は強まってくるのは必定・・。1級モルジョと1級クロ・サン=ジャンは・・・どうなんでしょうね。個人的には赤の方が個性的なように感じています。
シャサーニュ村名もそうだったんですが、この1級赤も実に色っぽいです。そして村名には「ちょうど良い感じ」の濃度・密度だったものが、「より凝縮」して感じられ、当然ながら同じように持っている「色っぽさ」の表現もよりしっかりしています。
これはおそらくミネラリティの組成がそうさせるので有って・・・、例えばドメーヌ・ラモネの先代、アンドレ・ラモネは「クロ・ド・ラ・ブードリオット赤はボーヌのロマネ=コンティだ!」と言って憚りませんでした。
noisy 的には、
「・・ん~・・そうかなぁ・・確かに複雑性と構造の深さは感じるけど・・洗練性がロマネ=コンティ同様とは思えんなぁ・・」
と言う感覚でした。
アンドレ・ラモネ翁もその辺を突っ込まれると、「まだ醸造技術がそこまで達していない・・つまり自身の問題だ」としていたようです。
むしろnoisy的にはモルジョやクロ・サン=ジャンの赤は鈍重になり過ぎずに、ヴォーヌ=ロマネ的な野性味・スパイスとジュヴレ的な鉄っぽさ、官能感を持ち合わせた素晴らしいリューディ・・・と言う感覚でして、むしろ、
「もっと評価されてしかるべきでは?」
と思っています。
勿論ですが、安易な造りをしてしまう造り手も多いものでして、全てのモルジョ、クロ・サン=ジャンの赤が良いと言う訳では有りません。
それに、ミシェル・ニーロンさん希少な1級赤、ラ・マルトロワのツヤツヤ、テカテカ、まん丸な味わいが示すように、適した栽培と醸造が組み合った時のシャサーニュ1級は驚くほど旨いと言えます。
この1級シャサーニュ赤・・・是非飲んでみていただきたいですね。構造の深さと複雑性から来る重量感、精緻さ、エロスは素晴らしいです。本当は特別セットに入れたかったんですが高くなりすぎちゃいますので諦めました。お勧めします。飲んでみて下さい!
以下は2008年のこのワインのレヴューです。
━━━━━
【ワインスペクテーターは91Points!クラシックな造りでガッシリ仕上げたピノ・ノワールがトロッと丸くなってきました!】
フィネスさんと言うエージェント(インポーター)さんは今となっては非常に珍しくなった、頑固なワインエージェントさんで、並行輸入などには全く食指を伸ばさず、さりとて、入荷したものをさっさと全て販売してしまうことも無く、言わば「カヴィスト」としての役割もしっかりされていらっしゃいます。大昔はそのようなスタイルが大半を占めていたんですが、現在は軽薄短小、入荷したらさっさと全部販売してしまわないとお金が回らないものんですから、カヴィストスタイルのインポーターさんはほぼ絶滅です。まぁ・・ワイン屋も同じですけどね。
なので、このガニャール・ドラグランジュ2008年シャサーニュ=モンラッシェ1級にしても、まぁ・・売れないと言うのもあるのでしょうが、美味しくなるまで積極的には販売しないんですね。担当さんがこぼしてました・・。
「販売数よりテイスティング数の方が多いワインが沢山ある」
・・・いや~・・そこだけは・・身につまされます・・残念ながら・・笑えないっす・・
まぁ、ガニャール・ドラグランジュのようなクラシックなスタイルですと、リリース直後はどうしても・・
「硬っ~~い!」
ものですから、余り出て来なくて平板に感じられ、リリース直後に手を出すことはほぼ無くなってしまいます。
そんな時は、何度も何度も・・テイスティングするそうです。そして、ようやく溶け込んで来た!・・販売しよう!・・となると・・、
「ん~・・まだちょっと・・xxxの辺が気になるなぁ・・」
と、そのままに沙汰止みになり、また半年~1年後位に社員総出でテイスティング・・を繰り返すことになるそうです。
フィネスさんのこう言ったこだわったスタイルは、やはり社長の藤田さんによる部分が大きいでしょう。ワインに厳しい時を生きてこられてますからね・・。品質にも、その時の味わいにもこだわりたい・・のでしょう。頭が下がります。
で、この2008年シャサーニュ1級赤ですが、ジャック・ガニャールが仕込んだ最後のキュヴェです。クロ・サン=ジャンとモルジョのブレンドによる1級で、ジャックが仕込んでいますから・・非常にクラシックです。
昨今の流行りの造りは、余り酸化をさせず、抜栓した時にアロマが拡がるようなスタイルですが、ジャックの時代はそんな事はお構いなし、
「時がワインを造るんだ!」
と言うスタンスなんですね。
例えばこの間まで販売していました2001年のモレ=サン=ドニ・プルミエ・クリュ・クロ・デ・ゾルム / ジョルジュ・リニエなども、もの凄くクラシックです。リリース直後はエキスは綺麗に出ているものの、ま~、硬いったらありゃしない・・訳です。
しかし、2016年の今、飲まれてどうでしょう?・・トロットロで妖艶でしょう?・・錆びたナイフじゃないかと感じられるくらいに厳しかったエッジも丸くなり、官能的で非常に美味しいですよね?・・それが熟したピノの醍醐味なんですね・・。
このシャサーニュ1級も、リリースからおそらく6年ほど経過しているはずでして、かなり深い味わいになってきました。しかも、
「酸化を抑制して仕上げた昨今のピノ・ノワールには無い、昇華したブケ」
が有ります。
その上で、テクスチュアも滑らかになり始め、赤黒極小果実が群生しつつ、なめした皮や華やかなスパイスが心地良く香り、やや大きめの石を連想させるようなミネラリティが下支えしています。とても美味しい・・と思います。
クロ・サン=ジャンは村の北西に有り、ご存知モルジョは南東ですんで、北西にある石灰が非常に強い性格と、南東に有り、やや粘土がしっかり有る性格とのブレンドが、このワインの味わいを決めています。非常にドライですが熟により甘味も出て来ました。力強くもブルゴーニュ的なエレガンスも持っています。
そしてこのドメーヌは、ブラン・ガニャールとフォンテーヌ・ガニャールに移譲されるようですので、この先はもう無いのかと思います。是非飲んでみて欲しいと思います。ご検討くださいませ。