【こちらはロー・レベル品。でも普通のと変わらないかもしれません。官能的な色合い!・・そろそろ飲んで良いよ・・とワインがささやいています!】

今まで何度も書いていますので、耳にタコ状態かと思いますが、シャンボール=ミュジニーのワインと言うのは、基本的に滅茶苦茶超熟です。海外のメディアが8~10年で飲め・・などと戯けたことを平気で書いていたりしますが、よほど力の無い造り手さんによるものだとしても、そんな短い期間じゃワインの本質にはたどり着けません。
勿論、ワインの評価はその持ち主たる個人が最終的に下すものです。同じワインが有ったとしても、全く同じでは無いですし、個人の好みや感性は人それぞれですから。
ただし、本質的なものは普遍です。noisy が言っている意味を判ろうとするなら、収穫から四分の三世紀近く経過したこのボトル越しの見事な色合いを見るだけでも理解が可能です。少なくとも、
「もの凄い・・色!」
と言うことだけは判ります。熟してきたワインが持つ、感動的な色です。
「エッジにオレンジが・・」
などと言うような飾り言葉は陳腐です。そんなもんじゃワインに許容されないでしょう。
だからと言って、美味しいに違い無い・・とは感じても、必ずしもそうはならない可能性も有りますからワインは難しい・・。
誰がどう見ても・・
「こりゃぁ・・いかん・・」
と判断したボトルが結果的に感動的に素晴らしく、誰がどう見ても、
「この状態ならパーフェクト!」
と判断したとしても、そのようにはならなかったりしてしまうんですね。
だからこそ、当たった時の感動は並みの表現などできない訳です。
「なんじゃ・・こりゃ~!」
と、某俳優さんのドラマの映像と言葉を思い出してしまいますが、
「ワインの生命は無限か?」
などとも考えたくなるほど、どこまでも伸びて行く、高みに連れて行ってくれるものでも有ります。
今回は、この滅茶苦茶長命なシャンボール=ミュジニーを6本購入出来ました。レベルが低いものも有りましたので、そちらは少し価格を下げました。
経験的には、ブルゴーニュのロー・レベルもの(液面の低いもの)は、ボルドーのロー・レベルものに比較すると、当たりを引く可能性は高いです。
何より、
「液面が低くても感動的な色合いは変わらない・・か、却って素晴らしいように見える」
ことも有ります。
液面の低いボトルの価格を下げたのは、「需要」を見越しただけです。どっちのボトルが良いのかは、最終的には一緒に開けてみない限り判りません。当たるも八卦、当たらぬも八卦・・の世界観です。
何せ、液面の低いボトルは、リコルクをしていなかったり、リコルクをしたとしても減った分を足していない可能性が有り、その方が全く正しい熟成の味わいが得られる可能性すら有ります。だから・・、難しいんですよ。少なくとも、液面の低い方の1本は、より凄い色をしているように見えて仕方が無い・・ただしそれを開けずに確かめる方法が無い・・と言うことなんですね。
以前にも何度か書きましたが、1934年だったか、ボンヌ=マールを飲んだ時のことです。昔、仲間同士でグレートなワインを年に1度、滅茶苦茶に開ける会をやっておりました。エージェントの担当さんも呼んで、楽しくやっていた訳ですが、参加費用は、
「何かワインを1本持ってくること」
でした。
で、何を思ったか・・そのうちの1人が、その古~いボンヌ=マールを持ってきたんですが、
「揺らさないように慎重に持ってきたそのボンヌ=マールからは、何とも官能的なアロマがすでに放たれていた・・」
んですね。
そう、もう・・コルクは委縮してしまって石のようにカチンコチンになっており、当然キャプスュルなど無く、液面も低いなんてもんじゃないほどのレベルで外界とツーカーになっていたので、
「彼はそのすでに香っているボンヌ=マールを横にすることも出来ず、手で慎重に運んできて・・でへへへ・・と八重歯を見せた」
んです。
それから数日後、車で運んで大宴会!・・になったんですが、超苦労してそのカチンコチンの石になったコルクを外部に出し、何とか人数分に振り分け・・られなかったのかな?・・少なくて・・でも、そのワインがま~・・物凄い香りで、味わいもシャンとしていて、開けた本人(私です)も、持ってきた人も、飲んだ仲間連中も、
「こんな経験、初めて!」
と滅茶驚いたことを、今でも思い出すんですね。有り得ないような話しでは有りますが、事実です。
そこから言ってしまえばとんでもなく状態は良いですし、普通に・・店にいらして、光を透かせて、その色合いを確認出来たとしたら、きっと欲しくなってしまうでしょう。それが出来ないのが残念ですけど。
と言う訳で、今はもう、買おうと思っても、探そうと思っても中々に難しい話しになってしまう、非常に古いワインです。色合い的には、
「それでもこの先数十年は行けるはず・・コルクが保たれれば・・」
と言う感じです。ご興味のある方、是非、挑戦してみてください。
以下は1934年のジャン・ルフォール、シャンボール=ミュジニーのレヴューです。
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【超古酒です!コンディションは抜群!・・旨いかどうかは時の運と抜栓までの努力・抜栓時の技量に掛かっています!】
判り辛いかもしれませんが、入荷数は3本、これだけ長い期間を生きて来たアイテムですからそれぞれに個性も見受けられます。
上の写真は近年製と思われるかなり「太い瓶」に入っており、後でボトルも入れ替えられたことを伺わせます。以前、ヴォーヌ=ロマネの古酒も販売させていただきましたが、それと同様にド太いボトルです。
しかしこの左の写真は、決して太く無く、普通の太さです。しかも余り新しく無い・・しかし30年代そのままとも思えない・・中間的な年代のボトルと思われます。
なんでそんなことを言うかと言うと、この細いボトルは
「立ち姿が今ひとつ不安定」
なんですね。少しガタガタするんですよ。かと言って、倒れるようなものでは有りません。
まぁ、正確無比、縦横のラインがピッチリしているのが当然と思っている日本人気質の日本人が多い訳ですから、
「・・そんなものは不良品だ!」
と一言で片付けられてしまうかもしれませんが、それもまた、
「個性」
だと思うんですね。嫌なら買わなければ良い訳ですし、
「せっかく落とした澱を混ぜてしまうかもしれない・・」
と言うような不安が有るのでしたら、
「澱を落とす前にボトルの底を加工すれば良い」
訳です。
「ガラスの加工なんて・・できないよ・・」
と思うかもしれませんが、何のことは無いです。動かないように、両面テープ等で何かの片をくっつければ良いだけです。それで、飲むときの澱の舞いも有りません。
あと、簡単なのは、ちょっと不格好では有りますが、ボール紙などを適当な長さに切ってボトルの下部に巻いて、テープなどで止めれば確実です。工夫次第で「超古酒」をもっと楽しめる訳です。
ガラスの工業製品化で、均一なものが出来るようになり、それが一般的になったのは、戦後しばらくたってからでしょう。なので、この細いボトルももしかするとその頃のものである可能性も有ります。
また、もうしょっちゅう書いていますので「耳タコ」だとは思いますが、シャンボール=ミュジニーのワインと言うのは、一般的に非常に長い寿命を持っています。他のどんな村のワインよりも長いと言えます。その代表格はミュジニーで有り、ボンヌ=マールです。
この1934年のシャンボール=ミュジニーがどこのリューディの産なのかは判りませんが、非常に色が良いですので、かなり期待できるかと思います。
また、色合いもそれぞれに違って見え、細いボトルのものはやや淡く、しかし熟成度は高く、華やかな色合いが見て取れます。太いボトルの2本は、それよりも確実にやや暗く、しかしより照りが有るようには感じます。到着間もない状況で澱を落としつつ、光に透かせて確認していますが、どちらも良い色合いで、どっちが良いとは言い切れません。
このような戦前のワインに出会えるような機会は、そう簡単には行かないと思います。勿論ですが、新しい液が入っている可能性も有ります。そこはこのジャン・ルフォールのネゴシアンとしての良心に期待したいところですが、noisy 的な感覚としましては、細い方は、仮に新しい液が入っていたとしてもより少なく、太い方は細いボトルのものより若干多いのかな?・・と言うような理解です。見当違いかもしれませんが、個性は見受けられます。
面白い存在だと思いますし、価格も決して不当なものでは無いと思います。是非ご検討くださいませ。