● この先は一体どうなって行くんだろう・・と、不安の中でお過ごしの方も多いかと思います。コロナも台風も地震も国際情勢も政府も・・不透明な今日この頃です。被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。
店の中に迷い込んだコオロギさんは・・まぁ、毎年必ずご来店されるんですが、店を閉めた午後9時以降になったとたん、 noisy が仕事をしていようが、うるさいからと対抗して音楽を大音量で流そうが「我関わらず」で・・羽を一生懸命にこすらせて、大声で延々と鳴いています。
が、それも3日目ともなりますと・・モールス信号みたいに途切れ途切れになって来まして・・気になってしまうので何とか救い出そうと冷蔵庫の下とか、棚の裏などを照明を当て探すんですが、そうしてしまうと「ピタッ」と鳴き止んでしまうのでどうにもなりません。伴侶を求めるその一途さと、誰もいないところにわざわざ入り込んでしまう抜けた性分に、何故かこちらもシンミリとしてしまうんですね・・あ・・もう、あの煩わしくて仕方なかった声さえ聞こえてこない・・(T.T
そんな一途なコオロギさんとは性格が似ているのか似ていないのか・・はたして非常に微妙な感じの、ある意味凄いドメーヌである、グロ・フレール・エ・スールの2018年ものをご紹介致します。
2016年からなんと・・サン・スフルにトライし、2017年ものは全量サン・スフルにしてしまったと言う・・ある意味、非常に危険なことを「サラリ」とやってしまったグロ・フレールです。
ですが・・エージェント情報によりますと、
「やめてくれ!・・So2、使ってくれ!」
と言うクレームにも似た要請が、世界中から届いたそうです。
まぁ・・そりゃぁ・・そうです。2016~2017年もののグロ・フレールのワインはかなりのパーセンテージで、世界中で「劣化したに違い無い」状態で販売されたに違い無い訳です。
ワインセラーとは名ばかりの高温セラーだったり、ショップ営業が終了すると電源を落としてしまったり、オーナーが如何に高い理想を持っていたとしても、それを理解できない部下ばかりが利益を上げることだけを目標にしていたり何も感じようとしなかったり・・するのが人間ですから・・。そりゃ・・皆、楽をしたいですから・・わざわざ冷え込むセラーで仕事をしたくないと思ってしまえば、何をするか判りません。
なので、グロ・フレールの2018年ものは、
「So2を入れた!」
と明言しています。
ですが、noisy もテイスティングして確かめたところ・・
「入れたSo2は相当に微量!」
で、以前使用していた量とは雲泥の差があるものと感じました。・・なので、
「かなりナチュラルな・・流れるような味わい!」
です。
また、2018年もののグロ・フレールの特徴としまして、
「ボディが凄い!」
です。滅茶大柄なんですね・・。実に大きな構造をしています。これは、アルコール分の高さに由来するものかと感じます。
なので、今飲んでも美味しいですが、
「今まで以上に長く持つ」
のは間違いなく、その完熟を迎えた時の素晴らしさは圧巻だろうと予想しています。つまり、ブルゴーニュの1976年みたいな年だと思います。
それだけに今、さらに美味しく飲むには、
「品温はやや低めが良い」
ことは間違い在りませんで、17度位になってしまうますとピントがボケてくるはずです。少し冷やすだけで相当美味しくなるんですね・・不思議ですよね。
中~下のキュヴェはリーズナブルですし、上級キュヴェ・・・例えばヴォーヌ=ロマネ1級レ・ショーム以上のキュヴェの、
「質感が物凄い!」
ことも特筆すべきでしょう。ジュースの質がもう・・半端無く素晴らしいです。相当に分別した葡萄を使用し、ほとんど圧を掛けない造りをしたと伺える味わいでした。
そんなグロ・フレールの2018年です。是非ご検討くださいませ。
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大変身したグロ・フレール・エ・スールをご紹介します。
「・・えっ?・・noisy さんがグロ・フレール?・・そんなの、有りすか・・?」
と言われてしまいそうですが・・そうなんです・・大変身した姿を見てその気になっちゃったんですね・・。
ま~・・逆浸透膜なども使用し、「濃厚」なピノ・ノワールをリリースしていたベルナール・グロが事実上引退、現在は息子さんのヴァンサンが継いでいます。
なので、
「noisy が突然、意趣を翻した訳では無い・・」
んですね。
いや~・・もうどれだけ長い間、グロ・フレール・エ・スールのワインを扱っていなかったか、見当もつきません。20年近いんじゃないでしょうか。
理由としては、日本中どこでも入手可能な、濃密なピノ・ノワールは・・別にnoisyの出番でも無いし、結局価格だけが魅力になってしまえば、テイスティングをしてお勧めしたところで、お客様には魅力的には映らないだろうし・・と言うことが大きかったと思います。
じゃぁ、何で noisy が2017年ものから再度扱うことになったか・・と言いますと・・、ここは非常に重要ですから・・はい。
「日本中にとんでもないコンディションのグロ・フレール・エ・スールのワインが並んでいる(に違いない)から」です。
今回はかなり無理して、多くのキュヴェをテイスティングさせていただきました。
そして、ヴァンサン・グロが造る珠玉のピノ・ノワールの、ナチュラルで美しく優しいトーンと、「ビオ」と言う言葉だけでは表現しきれない見事な出来と、何よりも、
「ブルゴーニュ・ワインの将来を感じさせる、新しいナチュラルワインの姿」
を、そこに見たから・・です。
しかしながら、その気持ちとは裏腹に、一気に不安な気持ちも湧き上がって来ました。
「・・この美しくナチュラルなピノ・ノワールの姿を、壊さずに販売できるワインショップは非常に数少ないはず!」
とついつい思ってしまったら、かなり悩むことになってしまいました。
何故って・・それは渦中に栗を拾うことになりかねないから・・です。
そりゃ・・そうです。非常にコンディションの悪い同じワインを飲まれた方が、グロ・フレール・エ・スールのワインはそういうものなんだと信じてしまいかねないから・・です。
なので、少なくとも「夏に寒いと感じないセラー」で販売のために置かれているグロ・フレールの2016年以降のワインには、決して手を出さないのが賢明です。勿論、「冬に超寒い」のも・・同様でしょう。
しかし、本当に良いコンディションのグロ・フレールのワインを、確かな保存と飲み方で飲むことが出来れば、きっとnoisy が感じた「ブルゴーニュワインの進むべき将来の姿」に近いものを、感じることが出来るかもしれません。
2017年のヴァンサン・グロによる一連のワインの姿が、一番似ていると思われるのが、
「ドメーヌ・ビゾ」
です。
「ドメーヌ・ビゾのヴォーヌ=ロマネのワインたちを、もう少しエレガントにしたような感じ」 と言えば、なんとなく想像できるかと思います。
何せ、あの偉大なる「ヴォーヌ=ロマネ」近郊の珠玉のワインばかりを、ナチュラルに・・So2を使用せずに仕上げているんです。そんなドメーヌは、他に存在するでしょうか?
So2を全く使用しないピノ・ノワールは、So2 を使用して仕上げた同様のキュヴェとは、特にリリース直後からしばらくの間、全く異なる姿を見せます。
So2 を使用したキュヴェはその姿をタイトに、「クッキリ」と判りやすいものにさせ、その大きさも、要素も、理解がしやすいんです。
反対にSo2 をしようしないキュヴェは、So2の使用で隠れてしまう「中間的な表情」をも、しっかり見せますので、全体を見通そうとすると、やや「ぼんやり」としたように感じられるでしょう。
しかし熟成が進み、中間的な表情を形作っていた「つなぎ」「グラデュエーション」的要素が磨かれてくるとどうでしょうか?
そこが「新しいスタイル、ブルゴーニュワインの進むべき将来の姿」に繋がって行くように感じています。
事実、noisy が飲んだ全てのキュヴェは、今飲んでも充分に美味しく飲めてしまいます。「出っ張り感」「へこみ感」は感じないです。球体感が凄い・・その分、So2を使用したキュヴェよりも、偉大感を感じない今の状態・・と言うことが言えると思います。
「これ・・熟したらどうなるんだろう?」
と言う問いに対する自身の答えはすでに有ります。そして、自身でそれを確かめたいとも感じます。
ナチュラルな素晴らしいワインに仕上がったし、また、リアルワインガイドの徳丸さんが書いていた、「豆」もすでに消えていました。豆を感じることは、今回の一連のテイスティングでは、全く無かったんです。
そして、リアルワインガイドでの評価点には、ある種の驚きがありました。・・だって・・
「普段は徳丸さんとは意見が見事に一致することが無い」
のに、この2017年ものの評点、評価は、「豆」以外は全く同様だったから・・です。現地試飲と現物試飲、試飲時期の違いも有りますから、それは当然では有りますが、ここまで一致するのは、本当に「奇跡」です。
「ビオにこだわりたくない」
と言うヴァンサン・グロ。
だけれども彼のワインはナチュラルだし、しっかりとブルゴーニュ・ピノ・ノワールの神髄を伝えてくれたと感じます。是非、2017年のグロ・フレール・エ・スール、飲んでみて欲しいと思います。noisy のところで買わなくても結構ですが、出来る限り良いコンディションのものをお探しください。
■以下は最新のエージェント資料(雑感?)です。

昨年同様にSO2ゼロとなります。トータルSO2は10m以下となります。セラーでの定温管理必須となります。
昨年の2016年は、改めて酸化防止剤の無いワインにおける管理状態の差を教えてくれました。お陰様で、非常に良い反響をいただけた反面、管理の良くないグロ・フレールと混同されたとの声もありました。大人の事情からか、あまり声高に喧伝されていないようですが、グロ・フレールは今までと同じ感覚で取り扱ってはいけないワインになっております。
しかし昨年飲んだ時の衝撃、SO2フリーならではの浸透性の高い流れ落ちるような質感は昨今のブルゴーニュの中でも突出しています。改めて管理状態を含め、デリケートなワインのため管理の行き届いたグロ・フレールの良さを伝えて参ります。
また、懸念事項の豆香は3月のバレルサンプル試飲の時点では感じませんでした。
ヴァンサン・グロ率いる新生グロ・フレールについての露出の少なさは各社含めて情報の乏しさも相まっているように思います。グロ・フレール&スールの名前を一躍知らしめたベルナール・グロ。息子のヴァンサン・グロがドメーヌに戻り参画したのは2009年。
除草剤をやめ除草のための機械を取り入れ、少しずつ変革が始まります。トネリエと話し合い、樽のための木材から過失の温度、材質や乾燥の方法…現地雑誌でヴァンサン・グロはこのように語っています。
『私たち(若き当主ヴァンサンは一人称を“私”ではなく“私たち”とします)の16の区画はすべて同じもので同じ葡萄です。同じ樽の中で同じ手法で醸造しています。私たちはすべてのワインに対して同じように接し、同じだけ注意を払います。土地と地勢が違いを生むのです。ヴィニュロンはワインにアイデンティティを与えます。しかしながらテロワールこればかりは私たちの手を逸脱した魔法なのです。私はビオの方法を適用しようとは思いません。
自然の求めるままにすることと技術の進歩を利用することの中間で私たちは正しい均衡を見つける必要があります。』
(意訳・翻訳 村岡)
以下はベルナールの時代のエージェント資料です。

《音楽が果実を魅了するとき、美しい音色がワインに昇華させるのか、あるいはワインが音色を奏でるのか・・・》
ドメーヌ・グロ・ フレール・エ・スールは、コート・ド・ニュイ地区の中心部、ヴォーヌ・ロマネに立地する、ルイ・グロの遺産の相続分割によって1963年に誕生したワイナリーです。
初めは、4人の子供のうち、コレットとギュスターヴの2人が相続した区画を、一族のワイナリーに統合していました。
1984年にギュスターヴが亡くなると、甥のベルナール・グロが、コレットを支えながら仕事を引き継ぎます。
ベルナールは、次々とブドウ畑の植え替えを行いました。
コンクール・エ・コルボアン村(ヴォーヌ・ロマネの北に位置する小集落)の、AOCブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイの良い場所にも、あらたなブドウ畑を設営し、ドメーヌの作付面積を12ヘクタール増やしたのです(ピノノワール:9ha、シャルドネ:3ha)。由緒あるテロワールを尊重しつつ、そこに近代的な最良の技術を調和させ、優れたワインをつくり上げるという使命感をもって、ドメーヌは現在、8つのアペラシオン地区に分布する20ヘクタールのブドウ畑を所有し、事業を展開しています。
《畑がテロワールの名声に値する品質を提供するならば、気候と土地を受け入れなければならない》
畑では収穫量を制限しブドウを成熟させる為に一年中沢山の仕事があります。光合成のおかげで太陽が糖分とフェノール化合物を生成し、それがワインのアロマと色調を引き出します。
整枝:樹の仕立てがグイヨでもコルドン・ロワイヤルでもたった8房しかそれぞれの樹には残しません。
摘芽:他の芽を取り除くことでメインの房の樹液を増やすことができます。
摘芯:樹の枝の先端の芽を切ると糖分を残す為のプロセスが引き起こされます。これにより、糖分が葉を成長させるのに使用されなくなり、樹は先端の部分(ブドウの房)を育て始めます。
グリーン・ハーヴェスト:糖分をブドウの房に集中させる為に、ブドウが色づきする前の時点で一株につき房は数個しか残しません。
除葉:葉は日の出の方角で果房の高さに取り除かれます。そうすると、ブドウが太陽に照りつけられすぎることはなく、房との距離が適正になり、腐敗による病気も防げます。
《醸造は修正を加えることなくブドウの収穫と適合しなければならない。》
収穫されたブドウはドラポー(金属冷却装置が設置されたタンク)で伝統的な方法で処理されます。発酵が始まる前に、果汁はタンクの底から出され、果帽の上に置かれます(ルモンタージュ)。発酵が始まったらすぐにブドウは一日二回上下に攪拌されます(ピジャージュ)。これらの過程は色味やアロマやタンニンの抽出を促します(果皮のアントシアニン)。
しかし毎年収穫されたブドウに順応しなければいけない為、ピジャージュはとても繊細な作業です。ブドウの成熟度と衛生的な品質によって、慎重に考えられなければなりません。 ブドウが何も考えずにピジャージュされるならば、ワインの味と構造は適切でない場合があります、これはタンニンに最も特に影響を及ぼします。
《一番重要なことはブドウが完璧に熟した時に収穫することです》
収穫の前にきちんとブドウの世話をして、成熟具合をそれぞれの区画ごとにチェックします。ブドウをできるだけ傷つけないようにして収穫します。これは結果としてとても重要なことです。収穫は木箱に入れて手摘みで行う為、ブドウが破砕してしまうこともありません。一番良いブドウを選び選果台の上で手で選果し、そのアペラシオンにふさわしいグランヴァンのワインを造ることができます。
《ワインの品質は最終的に決定するものは樽の品質でもある》
木樽とワインは2000年以上前から関連付けられていました。2000年ほど前は、木樽はただの容器としか考えられていませんでしたが、樽熟成はその後、多くの長所を明らかにしました。使用しているオーク・バレルは、"barriques bourguignonnes"という名前で知られている228リットルのブルゴーニュ産の樽です。樽に使われる木自体は、ブルゴーニュ近郊のFor?t des Bertranges産のものです。ドメーヌは木を買って、樽を造ります。木は乾燥させられ、2年間樽工場で熟成させます。トースティングされた木は、バニラ、チョコレート、スパイスなどの特徴的な香りをワインに及ぼします。
ワインのタンニンは木樽のタンニンに由来し、完璧な組み合わせになります。そして、樽の気孔はワインへ微量の酸素処理を行い、ワインに甘みを持たせます。これは、ワインが酸素と空気が触れ合うためです。樽のおかげで、ワインは進化しながら熟成することができます。