● 2021年のグロ・フレールを紹介させていただきます。
毎年、造りや出来が異なる感じで、面白いっちゃぁ・・そうなんですが、不安定でも有ったヴァンサン・グロです。が、どうやら2021年もので、
「今までの集大成・・と言うか、進む道が見えていて、ひとつのステージをクリアしたヴィンテージ」
と言えるかと思います。
2020年ものはそれなりに濃く、アルコールも上がりましたが・・それでも、ヴァンサン自身のスタイルを形作ろうと言うような意思を感じることが出来ました。2021年ものは非常にエレガントで、しかし、充実した味わいを・・
「So2 添加をより少なく、エキス系の美しい仕上がりで造り上げる」
ことに成功していると感じました。
特に、オート=コートの白と赤はとんでもなくクラス超えの美味しさを見せます。村名のヴォーヌ=ロマネに至っては凄い出来!です。
1級~グラン・クリュは1~2本しかないので飲めませんでしたが、リアルワインガイドは「過去最高」を言いつつ、リシュブールに上値98ポイントと・・物凄い出来だったルーミエさんの2021年シャルム=シャンベルタン並みの評点を与えています。
ただし、A.C.ブル赤に関しましてはエルヴァージュ不足と言いますか、仕上がりが遅くなっているとの判断で、取りあえず来春まで販売を延期することにさせていただきました。ご了承くださいませ。
その他の飲めていないアイテムも多く有りますが、リアルワインガイド第83号の記述などと照らし合わせ、noisy 的なコメントをさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
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2020年のグロ・フレール・エ・スールです。少ない入荷量では有りましたが出来うる限りのテイスティングをさせていただきましたので、他店様よりも遅いご案内になりました。で・・その総体としての感想ですが・・
「これからはヴァンサンのグロ・フレールが超面白くなること間違い無し!」 と言うもの・・です。noisy があれこれ言う前に、とりあえずエージェントさんの能書きとリアルワインガイド第79号のコラムからお読みいただくのが良いかと思いますので・・どうぞ。
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インポーターさんのコメント(オルヴォーさん)
2016年、2017年とSO2無添加のサン・スフルに挑戦して結果を出していましたが2018年より世界中の要望によりSO2添加へと回帰しております。とは言え、2020年は赤でトータル30~40㎎(フリー数値はほぼ20前後)と有名な生産者のそれよりも少ない数値となるためこれまで同様に温度管理必須ワインとして案内させていただきます。
ヴァンサン・グロ率いる新生グロ・フレールについての露出の少なさは各社含めて情報の乏しさも相まっているように思います。グロ・フレール&スールの名前を一躍知らしめたベルナール・グロ。息子のヴァンサン・グロがドメーヌに戻り参画したのは2009年。除草剤をやめ除草のための機械を取り入れ、少しずつ変革が始まります。トネリエと話し合い、樽のための木材から過失の温度、材質や乾燥の方法…現地雑誌でヴァンサン・グロはこのように語っています。
『私たち(若き当主ヴァンサンは一人称を“私”ではなく“私たち”とします)の16の区画はすべて同じもので同じ葡萄です。同じ樽の中で同じ手法で醸造しています。私たちはすべてのワインに対して同じように接し、同じだけ注意を払います。土地と地勢が違いを生むのです。ヴィニュロンはワインにアイデンティティを与えます。しかしながらテロワール・・こればかりは私たちの手を逸脱した魔法なのです。』
『私はビオの方法を適用しようとは思いません。自然の求めるままにすることと技術の進歩を利用することの中間で私たちは正しい均衡を見つける必要があります。』
(意訳・翻訳 村岡)
リアルワインガイド第79号より抜粋
訪問時、ヴァンサン・グロはどうしても畑から離れられず、急遽マーケテ ィング担当の方が応対してくれた。そして、1本目の試飲を終えてビッ クリすると同時に「やはり」と思った。19年よりナチュラル感が更に増している。そして液体はなんと薄め。父ベルナール・グロ時代のたっぷ りと濃厚で甘めのワインといった造りから驚くべき変貌だ。
ご存じの通り、ヴァンサンは16年にいきなりSO2ゼロとし、 ナチュラルワインの風味に仕上げた。しかし、従来の顧客からのクレーム殺到で18年は元に戻して一般的なワインとした。
ところが編集部で試飲した19年は明らかに ナチュラルワインの風味を感じるキュヴェがいくつかあり、ヴァンサンはバレにくいように自分が造りたいスタイルにしたと感じた。そしてこの20年。「もうバレてもいいや」と思ったのかどうか、ワインは全キュヴ ェがナチュラルな造りで、いくつかのキュヴェはまんまナチュラルワインの風味だ。そして、それがメチャ美
味しい。
彼の果敢な挑戦は今後も続くのは間違いない。なお、ドメーヌの公式なメッセージは
「SO2無添加は伝統的な顧客からの反応が良くなく、満足してもらえるワインを造ることが最優先のため、現在は止めています。シュマン・デ・モワンヌ・ ド・ヴェルジィ2020年は、ビン詰め時の若干の添加のみで造っています」
だ。
これ建て前というかウソ。 だってワインの味はウソをつかない。(リアルワインガイド79号より抜粋)
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どうでしょう?・・たったこれだけでも面白そうでしょう・・?造っている本人はSo2を使っていると言う。ビオはやらないとも言っている・・でも除草剤は使わない・・そのために新しい機械を導入したとのアナウンスも有ります。しかし飲んだ人は、
「・・So2..使って無いんじゃね?・・しなやかだし純粋な味わいだし・・NW(ナチュラルワイン?)の風味がするし・・滅茶旨いし!」
と言う・・。
造っている本人は、葡萄は同じだけれどテロワールが味わいを造るんだと言う・・でもRWG的にはテロワール云々はどちらかと言えば懐疑派だ・・。
noisy的にはこのように感じました。2020年もののグロ・フレール・エ・スール..滅茶面白いです!・・味わいの純粋さはトップクラス。タンニンがほんのりと感じられるものの、その質が物凄く良いんです。その上で、やはりこのふんわり感とノーズの速さはヴァン・ナチュールに通じているとも感じられる・・まずほとんどの人が気付かないレベルにある揮発酸はゼロであるとは言えない・・除草剤も使わない・・なら・・
「ヴァンサン..どうする?」
と言うことなんですね。
So2 を全く使用しない・・と言うことは、ビオ以外の手法では厳しいはずです。ルドルフ・シュタイナーはその著書「農業講座」だったでしょうか・・農民たちの健全なじゃがいもの生産量が伸びないがどうしたら良いか・・という質問に答えていました。その手法こそが・・
「ビオディナミ」
なんです。
つまり、天体の動きを知り、その摂理に沿った農業を営み、農薬では無く調剤を使用・・つまり循環型の自然農業をやる・・しか無いんですね。単に雑草を取り除いただけで他は普通の栽培で済ませていては、So2無しでは厳しいはずなんです。
だけれど、飲んだ人は・・「So2..使っていないんじゃん?」と言う・・訳ですよ。
さあ・・面白くなって来ました。1度ならずも2度まで公表してSo2無しでリッシュブールまで造っちゃったヴァンサンです。2020年もののヴァンサンのリッシュブールは、
「リアルワインガイド第79号でポテンシャル97ポイント!」
まで付いています。
残念ながら noisy はその少なさからリッシュブールは開けられませんでした。でもクロ=ヴージョまでは開けていますから、リアル79号の言うことはよ~~~く判ります。
「2018年もので普通に回帰したが、2019年ものからまた自然派に再回帰した!」と・・たぶん言えるでしょう。
そしてヴァンサン・グロはルロワを超えることを目指した・・のかもしれませんし、だとすると・・その手法は?・・そのルートをどうする?
飲んでいてとても楽しくなるワインだと思います。価格も頑張っています。是非お試しいただけますと幸いです!
■ 以下は2019年以前の情報です。
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日本国内の新型コロナウイルス感染者も人数的には減って来ていて、このコラムを書いている2021/10/07発表の数字は、国内1125人、東京143人と言うもの・・でした。このまま減少していければ、少しずつ以前の日常に近い形で生活できるようになるかというような希望も見えて来ています。もう少し!・・頑張りましょう。
で、グロ・フレールです。2018年ものの売れ行きが今ひとつだったので、2019年ものの仕入数は少し減らしていただきました。サンスフル(So2添加無し)をやめ、今までのようにSo2 を使用するスタイルに戻ったので、それもあるかと思います。そんな意味ではこの2019年もののグロ・フレールの出来は、ドメーヌを理解する意味では重要なものになったと思っています。
【ブルゴーニュ唯一・随一の不思議ちゃんドメーヌ!?グロ・フレール・エ・スール】 結果的に天候の恩恵を受けることが出来た2019年ものですので、潜在アルコール度数はそれなりに高くなる傾向になったはずです。アルコール度数を低く抑えようとする造り手と、仕上がった葡萄の糖分をそのままにアルコールへ変換するだけ・・と言う意識の造り手がいます。もちろん、そこには畑それぞれの個性が有りますから、そのまま糖度が上がる畑と、いつものようにあまり変わらない畑もあるはずです。
グロ・フレールは・・その辺を考えているのか、無意識なのかは判りませんが、「後者」です。ですので、「12.5度」「13.0度」なんてワインにはしません。13.5度からになりますし、アイテムに拠っては15度(オート=コート・ド・ニュイの白)なんてすごいのも有ります。
なので、
「ブルゴーニュのエレガンスを失いかねない」
感じがして、noisy 的には少し引いてしまいます・・。
ですが! いや・・これがまた良いんですよ・・。今までこんなことは一度も無かったんですけどね。アルコール分はほんの少し高目のものから、それなりに高いものまであります。それをテイスティングしてみますと、
「これがまた・・旨いんです・・残念ながら・・」
個人的にはやはり12~13度台あたりのしなやかなピノやシャルドネが好きなのは間違いないんですね。それに、14~15度台のブルゴーニュワインは余り好きじゃない・・です。似たタイプとしてはD・クロワもそうでしょうか。あの人も、葡萄の糖度に左右されずに完全発酵に向かうので、糖度が上がった年には、14~15度のブルゴーニュワインを造ります。それはそれで5年ほど置くとそれなりに美味しくなり、大きな構造の素晴らしい味わいにはなりますが、若い時の美味しさが不足してしまいます。糖度が上がり過ぎなければ若くても素晴らしい味わいになります。
グロ・フレールの2019年ものには凄く驚かされました。ベースのキュヴェ、ピノ・ノワールやA.C.ブルは13度ほどで非常にエレガント、しなやかな美味しさを持っています。上級キュヴェになってきますと14度ほど・・なんですが、とにかく驚かされたのが、
「ヴォーヌ=ロマネ1級」
です。・・これ、めちゃ素晴らしい味わいなんですよ・・。
言い方は悪いかもしれませんが、「超上質ピノ・ノワール・リキュール」ともいうべき、完全にエキス化されたアルコールの美味しさを見せつけてくれました。これ、飲んだら惚れちゃうと思うんですね・・いや、noisy はエレガント系の低アル系が好きなんですが、
「リキュールとするなら滅茶低アルコール!」
と言う度数のポジショニングを持った味わいには、ピノ・ノワールのエキスの美味しさが滅茶詰め込まれているんですね。凄い表現だと思いました!・・ついつい・・飲んでしまいます。
普通なら、アルコール臭くて・・もしくはエキスとアルコールが分離して感じられて興ざめしてしまいますが・・これがとにかく美しいんです。
白のオート=コートなんぞは15度も有ります。2018年ものも似たニュアンスでしたが、これも滅茶凄いバランスをしていたんですよ。アルコールと言う、微生物が造り出す素晴らしい液体にも、指揮者の個性で全く異なるものになってしまうことが、よ~く判った瞬間でした。
下級キュヴェはしなやかで美味しく、上級キュヴェはエキスがアルコールと完全に一体となった表現をしている・・そう感じた2019年ものでした。
グラン・クリュは数が無く手を出せませんでしたが、1級の素晴らしさをみますと、同様な・・
「エキスがアルコールと完全に一体となった素晴らしい表情・表現」
は間違い在りません。
本当に・・・グロ・フレールは千変万化、ブルゴーニュ一の不思議ちゃんだと思います。飲んだら・・惚れちゃうと思いますよ。是非トライしてみてください!
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この先は一体どうなって行くんだろう・・と、不安の中でお過ごしの方も多いかと思います。コロナも台風も地震も国際情勢も政府も・・不透明な今日この頃です。被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。
店の中に迷い込んだコオロギさんは・・まぁ、毎年必ずご来店されるんですが、店を閉めた午後9時以降になったとたん、 noisy が仕事をしていようが、うるさいからと対抗して音楽を大音量で流そうが「我関わらず」で・・羽を一生懸命にこすらせて、大声で延々と鳴いています。
が、それも3日目ともなりますと・・モールス信号みたいに途切れ途切れになって来まして・・気になってしまうので何とか救い出そうと冷蔵庫の下とか、棚の裏などを照明を当て探すんですが、そうしてしまうと「ピタッ」と鳴き止んでしまうのでどうにもなりません。伴侶を求めるその一途さと、誰もいないところにわざわざ入り込んでしまう抜けた性分に、何故かこちらもシンミリとしてしまうんですね・・あ・・もう、あの煩わしくて仕方なかった声さえ聞こえてこない・・(T.T
そんな一途なコオロギさんとは性格が似ているのか似ていないのか・・はたして非常に微妙な感じの、ある意味凄いドメーヌである、グロ・フレール・エ・スールの2018年ものをご紹介致します。
2016年からなんと・・サン・スフルにトライし、2017年ものは全量サン・スフルにしてしまったと言う・・ある意味、非常に危険なことを「サラリ」とやってしまったグロ・フレールです。
ですが・・エージェント情報によりますと、
「やめてくれ!・・So2、使ってくれ!」
と言うクレームにも似た要請が、世界中から届いたそうです。
まぁ・・そりゃぁ・・そうです。2016~2017年もののグロ・フレールのワインはかなりのパーセンテージで、世界中で「劣化したに違い無い」状態で販売されたに違い無い訳です。
ワインセラーとは名ばかりの高温セラーだったり、ショップ営業が終了すると電源を落としてしまったり、オーナーが如何に高い理想を持っていたとしても、それを理解できない部下ばかりが利益を上げることだけを目標にしていたり何も感じようとしなかったり・・するのが人間ですから・・。そりゃ・・皆、楽をしたいですから・・わざわざ冷え込むセラーで仕事をしたくないと思ってしまえば、何をするか判りません。
なので、グロ・フレールの2018年ものは、
「So2を入れた!」
と明言しています。
ですが、noisy もテイスティングして確かめたところ・・
「入れたSo2は相当に微量!」
で、以前使用していた量とは雲泥の差があるものと感じました。・・なので、
「かなりナチュラルな・・流れるような味わい!」
です。
また、2018年もののグロ・フレールの特徴としまして、
「ボディが凄い!」
です。滅茶大柄なんですね・・。実に大きな構造をしています。これは、アルコール分の高さに由来するものかと感じます。
なので、今飲んでも美味しいですが、
「今まで以上に長く持つ」
のは間違いなく、その完熟を迎えた時の素晴らしさは圧巻だろうと予想しています。つまり、ブルゴーニュの1976年みたいな年だと思います。
それだけに今、さらに美味しく飲むには、
「品温はやや低めが良い」
ことは間違い在りませんで、17度位になってしまうますとピントがボケてくるはずです。少し冷やすだけで相当美味しくなるんですね・・不思議ですよね。
中~下のキュヴェはリーズナブルですし、上級キュヴェ・・・例えばヴォーヌ=ロマネ1級レ・ショーム以上のキュヴェの、
「質感が物凄い!」
ことも特筆すべきでしょう。ジュースの質がもう・・半端無く素晴らしいです。相当に分別した葡萄を使用し、ほとんど圧を掛けない造りをしたと伺える味わいでした。
そんなグロ・フレールの2018年です。是非ご検討くださいませ。
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大変身したグロ・フレール・エ・スールをご紹介します。
「・・えっ?・・noisy さんがグロ・フレール?・・そんなの、有りすか・・?」
と言われてしまいそうですが・・そうなんです・・大変身した姿を見てその気になっちゃったんですね・・。
ま~・・逆浸透膜なども使用し、「濃厚」なピノ・ノワールをリリースしていたベルナール・グロが事実上引退、現在は息子さんのヴァンサンが継いでいます。
なので、
「noisy が突然、意趣を翻した訳では無い・・」
んですね。
いや~・・もうどれだけ長い間、グロ・フレール・エ・スールのワインを扱っていなかったか、見当もつきません。20年近いんじゃないでしょうか。
理由としては、日本中どこでも入手可能な、濃密なピノ・ノワールは・・別にnoisyの出番でも無いし、結局価格だけが魅力になってしまえば、テイスティングをしてお勧めしたところで、お客様には魅力的には映らないだろうし・・と言うことが大きかったと思います。
じゃぁ、何で noisy が2017年ものから再度扱うことになったか・・と言いますと・・、ここは非常に重要ですから・・はい。
「日本中にとんでもないコンディションのグロ・フレール・エ・スールのワインが並んでいる(に違いない)から」です。
今回はかなり無理して、多くのキュヴェをテイスティングさせていただきました。
そして、ヴァンサン・グロが造る珠玉のピノ・ノワールの、ナチュラルで美しく優しいトーンと、「ビオ」と言う言葉だけでは表現しきれない見事な出来と、何よりも、
「ブルゴーニュ・ワインの将来を感じさせる、新しいナチュラルワインの姿」
を、そこに見たから・・です。
しかしながら、その気持ちとは裏腹に、一気に不安な気持ちも湧き上がって来ました。
「・・この美しくナチュラルなピノ・ノワールの姿を、壊さずに販売できるワインショップは非常に数少ないはず!」
とついつい思ってしまったら、かなり悩むことになってしまいました。
何故って・・それは渦中に栗を拾うことになりかねないから・・です。
そりゃ・・そうです。非常にコンディションの悪い同じワインを飲まれた方が、グロ・フレール・エ・スールのワインはそういうものなんだと信じてしまいかねないから・・です。
なので、少なくとも「夏に寒いと感じないセラー」で販売のために置かれているグロ・フレールの2016年以降のワインには、決して手を出さないのが賢明です。勿論、「冬に超寒い」のも・・同様でしょう。
しかし、本当に良いコンディションのグロ・フレールのワインを、確かな保存と飲み方で飲むことが出来れば、きっとnoisy が感じた「ブルゴーニュワインの進むべき将来の姿」に近いものを、感じることが出来るかもしれません。
2017年のヴァンサン・グロによる一連のワインの姿が、一番似ていると思われるのが、
「ドメーヌ・ビゾ」
です。
「ドメーヌ・ビゾのヴォーヌ=ロマネのワインたちを、もう少しエレガントにしたような感じ」 と言えば、なんとなく想像できるかと思います。
何せ、あの偉大なる「ヴォーヌ=ロマネ」近郊の珠玉のワインばかりを、ナチュラルに・・So2を使用せずに仕上げているんです。そんなドメーヌは、他に存在するでしょうか?
So2を全く使用しないピノ・ノワールは、So2 を使用して仕上げた同様のキュヴェとは、特にリリース直後からしばらくの間、全く異なる姿を見せます。
So2 を使用したキュヴェはその姿をタイトに、「クッキリ」と判りやすいものにさせ、その大きさも、要素も、理解がしやすいんです。
反対にSo2 をしようしないキュヴェは、So2の使用で隠れてしまう「中間的な表情」をも、しっかり見せますので、全体を見通そうとすると、やや「ぼんやり」としたように感じられるでしょう。
しかし熟成が進み、中間的な表情を形作っていた「つなぎ」「グラデュエーション」的要素が磨かれてくるとどうでしょうか?
そこが「新しいスタイル、ブルゴーニュワインの進むべき将来の姿」に繋がって行くように感じています。
事実、noisy が飲んだ全てのキュヴェは、今飲んでも充分に美味しく飲めてしまいます。「出っ張り感」「へこみ感」は感じないです。球体感が凄い・・その分、So2を使用したキュヴェよりも、偉大感を感じない今の状態・・と言うことが言えると思います。
「これ・・熟したらどうなるんだろう?」
と言う問いに対する自身の答えはすでに有ります。そして、自身でそれを確かめたいとも感じます。
ナチュラルな素晴らしいワインに仕上がったし、また、リアルワインガイドの徳丸さんが書いていた、「豆」もすでに消えていました。豆を感じることは、今回の一連のテイスティングでは、全く無かったんです。
そして、リアルワインガイドでの評価点には、ある種の驚きがありました。・・だって・・
「普段は徳丸さんとは意見が見事に一致することが無い」
のに、この2017年ものの評点、評価は、「豆」以外は全く同様だったから・・です。現地試飲と現物試飲、試飲時期の違いも有りますから、それは当然では有りますが、ここまで一致するのは、本当に「奇跡」です。
「ビオにこだわりたくない」
と言うヴァンサン・グロ。
だけれども彼のワインはナチュラルだし、しっかりとブルゴーニュ・ピノ・ノワールの神髄を伝えてくれたと感じます。是非、2017年のグロ・フレール・エ・スール、飲んでみて欲しいと思います。noisy のところで買わなくても結構ですが、出来る限り良いコンディションのものをお探しください。
■以下は最新のエージェント資料(雑感?)です。

昨年同様にSO2ゼロとなります。トータルSO2は10m以下となります。セラーでの定温管理必須となります。
昨年の2016年は、改めて酸化防止剤の無いワインにおける管理状態の差を教えてくれました。お陰様で、非常に良い反響をいただけた反面、管理の良くないグロ・フレールと混同されたとの声もありました。大人の事情からか、あまり声高に喧伝されていないようですが、グロ・フレールは今までと同じ感覚で取り扱ってはいけないワインになっております。
しかし昨年飲んだ時の衝撃、SO2フリーならではの浸透性の高い流れ落ちるような質感は昨今のブルゴーニュの中でも突出しています。改めて管理状態を含め、デリケートなワインのため管理の行き届いたグロ・フレールの良さを伝えて参ります。
また、懸念事項の豆香は3月のバレルサンプル試飲の時点では感じませんでした。
ヴァンサン・グロ率いる新生グロ・フレールについての露出の少なさは各社含めて情報の乏しさも相まっているように思います。グロ・フレール&スールの名前を一躍知らしめたベルナール・グロ。息子のヴァンサン・グロがドメーヌに戻り参画したのは2009年。
除草剤をやめ除草のための機械を取り入れ、少しずつ変革が始まります。トネリエと話し合い、樽のための木材から過失の温度、材質や乾燥の方法…現地雑誌でヴァンサン・グロはこのように語っています。
『私たち(若き当主ヴァンサンは一人称を“私”ではなく“私たち”とします)の16の区画はすべて同じもので同じ葡萄です。同じ樽の中で同じ手法で醸造しています。私たちはすべてのワインに対して同じように接し、同じだけ注意を払います。土地と地勢が違いを生むのです。ヴィニュロンはワインにアイデンティティを与えます。しかしながらテロワールこればかりは私たちの手を逸脱した魔法なのです。私はビオの方法を適用しようとは思いません。
自然の求めるままにすることと技術の進歩を利用することの中間で私たちは正しい均衡を見つける必要があります。』
(意訳・翻訳 村岡)
以下はベルナールの時代のエージェント資料です。

《音楽が果実を魅了するとき、美しい音色がワインに昇華させるのか、あるいはワインが音色を奏でるのか・・・》
ドメーヌ・グロ・ フレール・エ・スールは、コート・ド・ニュイ地区の中心部、ヴォーヌ・ロマネに立地する、ルイ・グロの遺産の相続分割によって1963年に誕生したワイナリーです。
初めは、4人の子供のうち、コレットとギュスターヴの2人が相続した区画を、一族のワイナリーに統合していました。
1984年にギュスターヴが亡くなると、甥のベルナール・グロが、コレットを支えながら仕事を引き継ぎます。
ベルナールは、次々とブドウ畑の植え替えを行いました。
コンクール・エ・コルボアン村(ヴォーヌ・ロマネの北に位置する小集落)の、AOCブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイの良い場所にも、あらたなブドウ畑を設営し、ドメーヌの作付面積を12ヘクタール増やしたのです(ピノノワール:9ha、シャルドネ:3ha)。由緒あるテロワールを尊重しつつ、そこに近代的な最良の技術を調和させ、優れたワインをつくり上げるという使命感をもって、ドメーヌは現在、8つのアペラシオン地区に分布する20ヘクタールのブドウ畑を所有し、事業を展開しています。
《畑がテロワールの名声に値する品質を提供するならば、気候と土地を受け入れなければならない》
畑では収穫量を制限しブドウを成熟させる為に一年中沢山の仕事があります。光合成のおかげで太陽が糖分とフェノール化合物を生成し、それがワインのアロマと色調を引き出します。
整枝:樹の仕立てがグイヨでもコルドン・ロワイヤルでもたった8房しかそれぞれの樹には残しません。
摘芽:他の芽を取り除くことでメインの房の樹液を増やすことができます。
摘芯:樹の枝の先端の芽を切ると糖分を残す為のプロセスが引き起こされます。これにより、糖分が葉を成長させるのに使用されなくなり、樹は先端の部分(ブドウの房)を育て始めます。
グリーン・ハーヴェスト:糖分をブドウの房に集中させる為に、ブドウが色づきする前の時点で一株につき房は数個しか残しません。
除葉:葉は日の出の方角で果房の高さに取り除かれます。そうすると、ブドウが太陽に照りつけられすぎることはなく、房との距離が適正になり、腐敗による病気も防げます。
《醸造は修正を加えることなくブドウの収穫と適合しなければならない。》
収穫されたブドウはドラポー(金属冷却装置が設置されたタンク)で伝統的な方法で処理されます。発酵が始まる前に、果汁はタンクの底から出され、果帽の上に置かれます(ルモンタージュ)。発酵が始まったらすぐにブドウは一日二回上下に攪拌されます(ピジャージュ)。これらの過程は色味やアロマやタンニンの抽出を促します(果皮のアントシアニン)。
しかし毎年収穫されたブドウに順応しなければいけない為、ピジャージュはとても繊細な作業です。ブドウの成熟度と衛生的な品質によって、慎重に考えられなければなりません。 ブドウが何も考えずにピジャージュされるならば、ワインの味と構造は適切でない場合があります、これはタンニンに最も特に影響を及ぼします。
《一番重要なことはブドウが完璧に熟した時に収穫することです》
収穫の前にきちんとブドウの世話をして、成熟具合をそれぞれの区画ごとにチェックします。ブドウをできるだけ傷つけないようにして収穫します。これは結果としてとても重要なことです。収穫は木箱に入れて手摘みで行う為、ブドウが破砕してしまうこともありません。一番良いブドウを選び選果台の上で手で選果し、そのアペラシオンにふさわしいグランヴァンのワインを造ることができます。
《ワインの品質は最終的に決定するものは樽の品質でもある》
木樽とワインは2000年以上前から関連付けられていました。2000年ほど前は、木樽はただの容器としか考えられていませんでしたが、樽熟成はその後、多くの長所を明らかにしました。使用しているオーク・バレルは、"barriques bourguignonnes"という名前で知られている228リットルのブルゴーニュ産の樽です。樽に使われる木自体は、ブルゴーニュ近郊のFor?t des Bertranges産のものです。ドメーヌは木を買って、樽を造ります。木は乾燥させられ、2年間樽工場で熟成させます。トースティングされた木は、バニラ、チョコレート、スパイスなどの特徴的な香りをワインに及ぼします。
ワインのタンニンは木樽のタンニンに由来し、完璧な組み合わせになります。そして、樽の気孔はワインへ微量の酸素処理を行い、ワインに甘みを持たせます。これは、ワインが酸素と空気が触れ合うためです。樽のおかげで、ワインは進化しながら熟成することができます。